第8話 魔女と街の状況報告 - Vocal Reporting
街の選択と、報告を。
命、愛と空想の状況報告。
-ファテマ街-
街はきらびやかに見えて、所々で賭博や酒場が開かれている。
「あ、あの。」
勇気を持って人に話しかける。
すると、きれいな女の人が振り返る。
「あらぁ。うちでちょっとやってかない?」
どうやらこの人はディーラーか、客引き用の看板娘のような人らしい。
「いえ、そうではなくて・・・。お話をお伺いしたいのですが。」
「お客様じゃないのね、ざんねーん。まあいいわ。なにかしら?」
「あの、ここに来る前の記憶ってありますか?」
「あるっちゃあるんだけど・・・。あんな腐った世界のこと思い出したくないわ。」
「というと・・・?」
「ごめんなさい。仕事に戻るから、じゃーね。」
そう言って女は走り去っていきちょうど道を歩いていた男の人に声をかける。
・・・とりあえず、今の状況は僕だけじゃない、と。
-レッジ街-
「お話、聞かせて頂戴?」
そう繰り返しながらデイナは路地を歩いている。
人々は彼女をまるで宇宙人を見るような目で見ている。
しかし、一人の女性が彼女に近づく。
「話とは一体?」
デイナはぱっと顔を上げ女性を見る。
「この世界に来る前の、お話です。」
「曲者に見えるが・・・。まあ、私で良ければ話を聞こう。」
女の人は顔をひきつらせながら微笑む。
「ありがとうです。ついでに現在の人々の安否を・・・。」
・・・
「みんな、おかえりなさい。」
心の塔に魔女が戻った。
「魔女は揃ったようだな。報告を。」
そういってケイロスは魔女たちを見つめる。
「ロエル、異常なーし!」
「そういうことじゃないんだけど・・・。」
クローイは困った顔をする。
「はい、私はお話を聞きに行ったのですが・・・。」
「聞かせてもらおう、ニコラ?」
「全員が2000年の間眠っていた、と。その間の記憶は全く無いようです。また、愛の人という盗賊も確認いたしました。」
「なるほど、リディア?」
「は、はい!私が聞いた話では確かに地球の記憶があるように見受けられましたが・・・?」
「はい。確かにほぼ全員ここで記憶を引き継いだ転生をしたと見て良いですわ。」
デイナが割って入る。
「ただ、こちらの記憶、あちらの記憶の間で優勢なのは個人差があるようなのです。また、この世界に存在せずに地球にいた人々は全て消えてしまったんですって。」
「なるほど。確かにこの世界の総人口は70億人。つまりおよそ5億人の人々が消滅した、と。」
「・・・ところでみんなどの街へ行ったの?」
クローイは戸惑っているような顔をした。
「ロエルはヴィトールにいったよー」
「私はデリュー街へ」
「え、えっと、ファテマ街です。」
「レッジですわ。」
「やっぱり・・・。」
おでこに手を当ててクローイは言った。
「なぜそれぞれの街へ行かなかったのだ・・・?」
ケイロスは呆れたような顔で言う。
「私は止めたんですが、ロエルが聞かなくて・・・。」
「公平にくじ引きだよー。」
「う、うん。」
「不覚・・・。」
「まあ、ある程度情報が得られてよかったわ。各自、家で休んでいてちょうだい。」
一方で民は支度を終わらせ、統率者の城へ出向いた。
ただ単にレッジ街の人がしっかりしてただけです・・・。
次回は不幸にもあまりスポットライトを浴びれない民たちの視点です!