第6話 エリオスと粒の世界情景 - Sight View
原子の賢者、エリオスの視点。
エリオスの過去、必需であるということ。
また必要なだけの粒がそこにあった。
「改竄されてるねえ。蒔いただあなんて。」
ちょっくら外へ出てきたのは心の塔の息苦しさから逃れるため。
「魔女さんと民が行きますーね。」
ここは高い。塔のてっぺん。
見回すとため息が漏れる。
予想はしていたがここまで荒れているとは。
オレンジと紫を無理やり混ぜたみたいな空と不気味なぐらいにキレイに広がる街。
所々から生えている魔女の館、民の家、森。湖が幾つか。
目を閉じれば風の音に混じって悪魔のような鳴き声が聞こえる。
一度崩れた世界とは思えないほど何も変わっていない。
・・・まるで、二千年もの間、眠りについていたかのような。
何一つ侵食されずに最後に見ていた時と変わらない。
吸い込む空気の粒も、相変わらずにひどく不味い。
「ははっ」
情けなさで笑いが溢れる。
先程の心の塔でのこと。
皆の刺さるような冷たい視線。
誰ひとりとして僕を信じていない目。あの子以外は。
まあ所詮、自分は賢者の中では最底辺の発言力しか持たない。
そして、自分の言葉を間に受け止める人はいない。
「ああ、なんて素晴らしきかなあ。」
そしてかなしいかな。
・・・
もっと優しい世界だった。
必需は世界を統率し、また、世界も必需に頼っていた。
そう、まさしく神と信者の構図だ。
はじめの崩壊は世界の側で起こった。
信じるものを曲げた産術革命。
すべてを忘れた人間は恩を仇で返す。
不信の逆転劇だ。
そこから資源の取り合いやらなんやらの戦争。
・・・壊れ始める12の必需。
誰からかなんて覚えていない。
でも少しずつそして確実に狂気に蝕まれていった憧れ。
また、忘れるはずのない1950年。
僕が必需に選ばれた年。
『新しい・・・必需?』
(そうだよ。君にその指名を背負ってほしいんだ。)
『これまでの11個じゃなくて・・・?』
(3個目に新しいのが追加されたんだよ。君が見つけたことだ。)
その時は僕は魔術を放り出して科学の証明をしていた。
周りにはよくバカにされたけどそのときに僕は人体の構造が魔法技術ベースじゃなくて科学ベースであるという論文を発表していた。
ずっと前から僕は十分に恐れられていた。
必需と同じく、寿命が来ないが故に悪魔と罵られることも多々あった。
しかし、何も変わらなかった。
自分のせいである。立場に怯えたのだ。
突然選ばれた新顔が賢者であるということ。
初めからこうだったらという考えも虚しかった。
そもそもなぜ気づかなかったか。
誰も存在を信じなかったからである。
・・・粒はそこにあっただけなのだから。
凄く手こずりました・・・。
エリオスから見た世界を書こうとしたのですがそう長々と景色の説明はできない。
なので今回は伏線のばらまき回にしました!
エリオス好きになってくれる人がいるといいな・・・。
次話は魔女の視点、第1です!