第5話 クローイと時の必需人 - Past Identity
時間の賢者、クローイの視点。
2つ目の必需事項と紐解く13の必需。
そして全てが動く流れが必要であった。
みんなが外へ出ていくと静かになった。
誰も気づいていないと思うけれど、エリオスも外へ向かったように見えた。
ケイロスが右手を伸ばすのが見えた。
なんだかそれがとても悲しいことのように思えた。なんでだかわからないけども。
「では、クローイ。行ってくる。」
なんて言ったらいいんだろう。
いつもなんて言ってたのかな?
「はい、いってらっしゃい。」
もっと温かい言葉で伝えたい。
黒い扉を開いて、奥へ進む前にケイロスはつぶやく
「みんなが来たら呼んでくれ。」
その背中が弱々しく見えて、私はただ
「はい、お疲れ様」
としか言えなかった。
そして、ケイロスが片手に抱えている本の中に贖罪の本が混じっていたことを私は見逃さなかった。
自分を追い込みすぎないと良いんだけど。
だって、私たちはそれぞれ、自我を持っている。
ケイロスはリーダーであってすべての責任者じゃないんだよ。
・・・なんて言えたらな。
私も10冊ある「13の必需の歴史」の一冊を手に取った。
きっと、過去の私は怖くて開けなかったんだろうな。
贖罪の本であるとわかってもそれが語る内容を私は知らない。
少し目を閉じて深呼吸。
目を見開くと物音は何も聞こえなくなった。
「私も全然変わらないわね。ケイロスの心配ばっかしてるくせに。」
一人で作業するときは、これまでもこうやって時間を止めていた。
それは、一人になれたから。きっとケイロスと同じ理由。
表紙を手で拭いてから本を開く。
・・・
『13の必需は3つの構成からなっている。
賢者:最低限の必需
魔女:当たり前の必需
民:繰り返しの必需
発言力は賢者、魔女、民の順番に高く、一つの機関として機能している。
次のページからは各必需の魔術と歴史を記す。』
私がそもそもこの本を読むのは、それぞれどういう風に接していいかを考えるため。
ある程度分かっている賢者のページは飛ばして、魔女の章を開く。
『4. 命の魔女』
『5. 愛の魔女』
は、忘れもしないわ。
命の魔法と愛の魔法。
すこし、変わったかしら?
『6. 空想の魔女』
具現の魔法。想像の装具や物を具現化する力。
性格もあの子は大して変わりがないわね。
『7. 命運の魔女』
『7. 知恵の魔女』
7番が二人・・・?
『運と知の関連性は切っても切り離せず、どちらが先に生まれたかの定義は困難。
よって、同列の7番とする風潮がある。場合によっては知恵を8番とするときもある。』
そうだった。
「だから昔はよく喧嘩していたのよね。ロエルちゃんは働きたくないの一点張りと、ニコラちゃんは頑張り屋さんであまり馬が合わなかったのよ。」
そんなことを思い出して、少し笑みが溢れる。
次のページへめくると、民の章へ入る。
『9. 建造の民』
この子も創造の魔法で具現の魔法と作りが近い・・・。
でも、それよりはあるものから作る点で原子の魔法に近いかしら?
それの更に大きなブロックで作られたミニチュア。
『10. 違誤の民』
認識の魔法、か。そういえば前に見たことがあった。
自分がいないところに自分がいるように見せてたくさんロンちゃんがいるの。
メモールちゃんに弱かったわね。なんでも弱点がちょうどメモールちゃんの能力と被るって・・・。
『11. 記憶の民』
・・・あの悲劇・・・。いえ。
それよりも今回の件は記憶が大きく関わってきている。
きっと大きく貢献してくれるわね。
『12. 繁栄の民』
を開いて目を見開く。
・・・魔法の記述がない?
魔術が使えないわけではないのであろう。
他のページに比べて情報が著しく少ない。
優しいっていう感覚なんだけど・・・?
次、最後の1ページ。
少しためらって、ページをめくる。
『13. 滅亡の民』
滅多に顔を合わせなかった。
一度だけ、彼の後ろ姿を見たの。
あれは確か・・・。
今回は前回と同時間で進行するもう一つの物語。
一人ひとりの話をするときにネタバレをしないように伏線にするのが難しかったです!
(と、盛大にネタをバラす)
感想お待ちしております!
次話はエリオスの視点から。