第21話 隙間と未来の願う理由 - Individual Purposes
一人ひとりの理由。
動き出す必需の理由。
-侵蝕の間-
この場所は、この館で最も新しい部屋。
自分の弱さを戒める場所。
待っていたとばかりに現れたのは忘れもしない巨大な蟻。
「久しいな。」
覚悟と追い詰められた感情で蟻を睨みつける。
蟻の先手攻撃、突進から戦闘は開始する。
この始まり方は変わっていなかった。
「オブストラクション・ウォール!」
まず、壁を作り上げて突進を防ぐ。
もちろん、あの強靭な顎では10秒と持たなかった。
大事なのはここからだ。
「トランジショナル・キューブ!」
それは、歪んだ空間。
蟻を閉じ込めた透明な箱は歪んで見える。
縮み、捻れ、伸びる。
45秒。
それは1日にも感じられた。
全てを蝕むその顎は空間を阻む壁であったとしても食らう。
想定内であった。
自分が向こう側で学んだものは、もっと単純なこと。
残酷なこと。
「スパイラル・ソーン!」
螺旋を描いて、それは蟻の固い体を貫く。
学んだこと、それは、殺めるということ。誤るということ。
心を捨てるということ。
-強硬の間-
扉を開く前に、少し深呼吸をする。
私の魔術は守るものでもなく、攻めるものでもない。
それでも、できることがある。
扉を開く。
まず目に入ったのは、2メートルほどのアルマジロ。
こちらに気づいて、体をまっすぐ向ける。
そっと部屋に入り、魔術を発動させる。
「ロック・クロック。」
アルマジロは動きを止める。
手始めに短剣を10本ほど投げる。
それらは、手を離れた後、少し動いて止まる。
「リスタート。」
確実に速度を上げて飛ぶ短剣は甲羅に刺さることなく地面に落ちる。
敵は、体を丸めて攻撃態勢に入る。
今だ・・・!
「ロック・クロック。」
時間が止まっている間にアルマジロの横側へ移動する。
そして、槍を構えて投げる。
最後にアルマジロの後ろに立って時間を再び始める。
「リスタート。」
確かに横の柔らかい部分に槍は刺さったはずだった。
傷は残っていなかった。
とっさの判断で、アルマジロが進行方向を180度回転させる。
押されているわけではない。
ただ、勝機が見えない。
諦めかけたときに、少し思い出す。
地球で学んだもの。
「ロック・クロック!」
再び時間を止める。
床に散らばった槍と短剣を拾い上げてアルマジロの前に立つ。
「諦めないこと、気合で乗り切ること。」
忘れてないよ。
「私が勝ってやる!」
そして、ただ一心不乱に剣と槍を甲羅に向かって振り回した。
魔力が底をつき、時間が再び動き始めたとき。
アルマジロの甲羅はひび割れ、血を流して、倒れていた。
部屋を出ると、気が抜けたように座り込んでいた。
・・・
皆が部屋へ向かい数時間経った頃、全員が心の塔の大部屋に集まっていた。
「皆が試練を無事に終えれたこと、大変嬉しく思っている。」
「みんな厳しい戦いだったと思うわ。」
「しかし、だからこそ、今できることがある。」
少し間を置いて、ケイロスは覚悟を決めたように再び口を開く。
「これより、国王の城の矯正を開始する。」
こんばんもおくれましてごめんなさい。
許してくださ・・・。
さてさて、王国の矯正ですってぶっ飛んだこと考えますねケイロスちゃん。
って書いたのわしですが・・・。
次回から本格的に王国の真実を暴いちゃいますよ〜!
ってまあ王国のために戦ったあとにかよ・・・ってなりますけどね。
そんなもんですよ。




