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第一章2 どうにか青年は戦場に旅立つ

 ユーリは昼から街を出ていた。アンネリーゼから出発が明日の朝と聞かされ、消耗品の補充をするためである。

酒場にはすでにギゴラスの討伐依頼が貼り出されていた。多くの冒険者が報酬金や素材目当てにギルドに押しかけて行った。

そのため、武具店や道具屋が混む前にさっさと用事を済ませてしまおうと、ユーリは急いでいた。


 といっても前の依頼の時に使ったのは、今朝振っていた剣だけなので直すようなものなど無い。だが、ユーリは新しい武器を買い足そうか悩んでいた。

ユーリの場合、新しい武器を買ったとしてもアクセサリーに変えてしまえば大した荷物にならないからである。


武具店に入りるとまばらながら客が入っている。店の人もユーリには構っていられない様子だ。

ユーリはギゴラスに効きそうな武器はないか色々手に持って探していた。しかし、時間が経つにつれ客が増えてきた。ユーリはゆっくり見ている時間が無いと悟り、矢を何本か買い足し武具店を後ににした。


武具店を出た後に、消耗品を買い足しに道具屋に向かう途中、衛兵に道を開けるように注意を受けた。大人しく道の端へとよるユーリの前に、豪華な白い馬車道を通り過ぎて行った。

王家の紋章が見えたので、王家の誰かが乗ってどっかに行くのだろうとユーリは考えた。だが、あまり気にせずに道具屋に足を運んだ。

 道具屋で非常食や薬草を補充し、店が混む前に早めに退散した。道具屋を出た後、ユーリは冒険者ギルドに足を運んだ。


 冒険者ギルド――依頼人と冒険者の仲介をしてくれる機関だ。冒険者は依頼で得た報酬金の一部をギルドに徴収され、そのお金によりギルドは経営されている。

 酒場にも依頼が張り出されていたが、依頼の受注はここ、ギルドでしかできない。依頼のブッキングを防止するためだからだ。


 ギルドに入ったユーリはカウンターに向かって行った。カウンターにいる受付の女性にユーリは声を掛けた。


「騎士団のアンネリーゼっていう女から俺指名の依頼がきてると思うんだけど……」


「はい。確認してきますので少々お待ちください」


 ユーリの問いかけに受付の女性は事務的に返し、カウンターの奥に行った。しばらく、待っていると受付の女性は手に一枚の紙を持って戻って来た。その紙が騎士団からの依頼書のようで、ユーリは自分のギルドカードを掲示し、書類にサインした。それで依頼の受注は完了したのだが、ユーリは受付の女性に続けて声を掛けた。


「二階の書庫を利用したいんだけど」


「持ち出しは厳禁でお願いします」


 受付の女性はユーリに言葉にそれだけ返し、書庫の利用を許可した。

 カウンターを離れたユーリは二階に上がっていった。二階に上がり書庫を見つけると彼はそこに入った。

 冒険者ギルドの書庫には冒険者の役に立つ知識や魔物の生態について書かれた本が多少ではあるが置いてある。ユーリは魔物の生態にかかれた本を手に取り、ギゴラスのページに目を滑らせた。


-----------


 一つ目巨人"ギゴラス"は人型の魔物である。大人二人分ほどの身長に丸太のような腕、顔にある一つ目と二本の大きな下牙が特徴である。肌は黒ずんだ緑のような色をしており、腰に動物の皮を巻いていて、棍棒のような木を武器に持っている。


 ギゴラスは単体では行動せず、常に群れで狩りをする。その方法は何匹かが獲物を脅すなどして誘導し、獲物が逃げた先に大量のギゴラスが待ち構えている。一種の追い込み漁のような狩りである。

 また、群れの中にはリーダーのような存在がいる。言葉は話せないが何らかのコミュニケーションをとっていることも確認され、魔物の中では知能が高いと推測される。


-----------


簡単にギゴラスの事が書かれていたが、討伐するのに役立つことは書かれていなかった。ユーリは肩を落とし、本を元の場所に戻した。彼はそのままギルドから出て行った。


 そこからは酒場に戻り、部屋に上がる前に店主に声を掛けた。


「明日ギゴラスの討伐に行くことになったんだ」


「そーか。なら先に宿代払ってから行ってくれ。部屋の空きがなくて困ってるんだ」


「わかったよ。こんなオンボロ宿がどうして人気なのかね?」


「お前だって使ってんじゃねぇか」


 ユーリは冗談を言いながらお金を出した。それを店主がツッコミながら受け取る。いつものようにやっているやり取りの後、ユーリは軽く手を上げ挨拶し、二階に上がっていった。

その後は日が暮れまで武器の点検や道具の確認をして過ごしていた。

日が暮れてからは下の酒場に降り、昨日と同じ席で飲んでいた中年と飲みながら話した。話の内容は大体土産話でユーリばかりが話していた。

ひとしきり話した後に、ユーリは明日は早いからと告げ、二階に戻っていった。部屋に入ると昨日同様、ベッドに倒れ込みそのまま寝た。


-----------


少し時間が戻り、ユリシア王城。


 一人の少女が侍女に囲まれ、色んなドレスを着ていた。

 少女の見た目は背中まである金髪を少しウェーブがかかってる。瞳は碧眼をしていて、絵に描いたような美少女である。

彼女は公爵の息子の誕生パーティに招待され、そのためのドレスを選んでいる所だった。

すると、部屋の扉がノックされ、扉の奥から声が聞こえた。


「ベルニナ様。アンネリーゼ・グラーヴ。ただいま戻りました」


「アンネ。待っていたわ。入っていらっしゃい」


少女が入室を促すとアンネリーゼが失礼しますと言い部屋に入ってきた。


「お帰りなさいアンネ、どこに行っていたの?」


「はい。少し明日の為に冒険者に直接依頼をしてきました」


ベルニナと呼ばれた少女の質問にアンネリーゼは昼にユーリの元に尋ねた事を伝えた。するとベルニナは頬を膨らましていた。


「そのくらいなら別にアンネに行かせなくても、他の衛兵にでもやらせればよかったじゃない」


 そう文句を垂らしていた。それに対しアンネリーゼは吐息を漏らし、ベルニナを説得している。


「今はギゴラスが街道沿いに出て街は警戒中で、衛兵にも騎士団にも人手が足りないんですよ。明日の討伐隊には私も駆り出されるので、ご了承ください」


「そんなっ!! 私はこの後、侯爵家に行って誕生パーティに呼ばれるのに! そんなのに参加したらアンネはついてこれないじゃない!」


 アンネリーゼがハッとした顔になり自分の失言を悔やんでいる。ベルニナはアンネがいないまま公爵家の領地に出向くのを拒んでいた。


「ねぇアンネ、貴方がいないならわたしの護衛は誰がしてくれるの?」


 ここぞとばかりに涙目になり、女の武器を利用してアンネリーゼを堕としにかかった。


「ベルニナ様の護衛は近衛騎士の中から手練れを何人かつけるそうです。心配することはありません。それに、今は不測の事態なのです。我が儘はおやめください」


しかしアンネリーゼはそうまくし立てて、侍女に準備が終わったかを確認する。すでにドレスは選び終わっていたようで、アンネリーゼはベルニナに続けて口を開いた。


「もう直ぐ出発なので門までご一緒します」


 そう微笑んだ。そして、まだ納得のいっていないベルニナを連れて部屋から出て行った。


 不機嫌なままのベルニナを乗せた馬車は王都の大通りを進み、公爵家へと足を進んでいった。

 彼女の名前はベルニナ・ヴァル・ユリシア。この王城で暮らす第三王女であった。



-----------


ギゴラス討伐の朝。日が昇る前にユーリは街の正門前の前に着ていた。すると、そこにはすでに騎士団が到着し、馬車に荷物を詰めていた。馬車の前には槍やメイスなど持ち運ぶには重たい武器がまとめられている。

 そこにアンネリーゼの姿も見え、ユーリは声をかけた。


「やぁ、朝早くから忙しいね」


「君か。そう言う君こそ、これから忙しくなるのだがね。早速ですまないが、ここに武器を小さくしてくれないか」


 アンネリーゼはまとめられた槍やメイスを指さしユーリに頼みこんだ。


「別に構わないが、ここにあるやつだけか?みんなが持ってる剣とかは大丈夫なのか?」


「流石に直ぐに戦えるように手元に武器は残しておくさ。それに自分の武器を、おいそれと他人には預けないさ、ここにあるのは重く場所をとるから馬車に乗せられないんだ」


 ユーリの疑問にそう返し、ユーリを警戒しているような発言をしていた。


「まぁ、そりゃそうだな。んじゃやってくかな」


そんなことも気にせずユーリは武器をアクセサリーに変えていく作業に入った。


 だんだんと周りが明るくなり、冒険者も集まりだした。太陽が完全に顔を出した頃には騎士団と冒険者の討伐隊も出発の準備が完了していた。


そして今回の討伐の指揮を任されている将軍が出発の合図をし、ユリシア王国騎士団と冒険者のギゴラス討伐隊が行軍を開始した。


場所はユリシア草原街道、アルタス侯爵領土の直ぐ近くである。



––ユーリはギフトの使いすぎで馬車の中でダウンしていた。



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