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鬼ONI神GAMI  作者: 荒魏
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鬼の姫は宴をする

明くる日の朝。鬼姫の住まう屋に一枚の文が届いた。

どうやら内容を見てみると

鬼たちの居る鬼ヶ島で宴を開くと言う。

鬼はもとい、日本のあやかしも宴という行事は大好きだ。

まあ、それでなくても人を含め、誰もが

お祭りや馬鹿騒ぎは好きだろう。


鬼姫が文を見ていると、後ろから霊響が近寄ってきて

尋ねてくる。


「お、姫。それは誰からじゃ?彼氏かえ?」


鬼姫は呆れながら言う。


「私に彼氏なんていませんよ。鬼ヶ島からです」


「鬼ヶ島?なんでまた?」


鵺の頭には疑問が飛ぶ。

鬼姫はカレンダーを見て言う。


「たま、今日は何月何日?」


「1月1日。元旦じゃ。

 しかし、かれんだーとは。随分ハイカラな言い方よのう?」


「たまも随分ハイカラだって思いますよ」


「ふふーん。アテは時代に乗るスタイルなのじゃ!」


「乗り切れてないと思いますよ?」


「なんとっ!?」


鵺は驚くも、すぐに話題を切り替えてくる。


「いや、そんなことは今はいいのじゃ。

 姫よ、何故鬼ヶ島から文が来たのじゃ?」


「今日は、たまが先程も言いましたように元旦。

 鬼ヶ島で今年一年を良いものにしようと

 宴の席を用意したらしいです。

 そこに呼ばれました。」


鵺は青ざめた表情で身体を震わせていた。


「鬼ヶ島.....宴.....。ひ、姫よ

 そこに、アテは.....呼ばれておるのか?」


「んー....。あ、はい。

 是非、たまも。と、書いてあります」


「嫌じゃああ!!嫌なのじゃああ!!

 アテは行きとうないのじゃああああっ!!!」


鵺は泣き叫びながら

必死に行く事を拒否する。

それもその筈。

あれは霊響を連れた去年の宴の時である。


「おお、鬼姫よ。よく来てくれた」


「この度はこの宴の席にお呼び下さり誠に感謝します」


「がははっ!!そう硬い挨拶はいらぬわ!」


この鬼ヶ島にいる鬼の大体が純粋な鬼の血族。

なので普通に大きい。


「ところで、鬼姫よ。そこの小さき人間は誰だ?」


「あ、はい。紹介しますね。たま」


霊響は鬼姫に呼ばれ、前に出てくる。


「私の家族の霊響です。が、人間ではなく

 鵺という、妖かしですわ」


鬼達は霊響に興味津々だ。


「ほうほう、鵺とな.....」


「ふむ、鬼姫より小さき者よのう」


その言葉に鵺は反応し、反論する。


「誰がちびじゃ!!お主らがでかすぎるだけであろう!!

 アテはこれでも500年は生きておるわ!!」


「がっはっはっは!随分と威勢の良い妖かしだ」


こうして霊響は鬼に気に入られた。

が、その後

あまりにも愛でられ過ぎて

霊響の中ではそれが軽いトラウマとなった。

この後も2回ほど宴の招待が来たが

霊響はどちらも行かなかった。


「い、…行かぬぞぉ。アテは行かぬぞ.....」


「はあ....。まあいいでしょう。

 その代わり、大人しくお留守番できますか?」


その言葉を聞いた途端、鵺はシャキっとする。


「任せるのじゃ!!」


そんなこんなで、鬼姫は鬼ヶ島に出かけるのであった。


「姫よーーー、お土産待っておるぞおおおっ!!」


そんな元気な鵺の声を聞きながら

鬼姫は歩き出した。


かれこれ出掛けて約一時間。

目の前に鬼ヶ島が見えてくる。


鬼ヶ島の入り口に赤い鬼と青い鬼が立っている。


「あら、今回はあなた達が門番なのね」


「これはこれは、お姫。ようこそおいで下さいました。

 ささ、中へ。もう宴は始まっておりますぞ」


「ご苦労様。後で酌を交わしましょうね」


「はい、是非に!」


鬼姫は中へと入って行く。

程なくして賑やかな声が聞こえてくる。


「随分賑やかですね。」


鬼達は歓声を上げて鬼姫を歓迎する。

鬼姫はここ、鬼ヶ島の族長に歩み寄る。


「待ちくたびれたぞ、娘よ。

 今日はたらふく飲んでゆけ」


「はい、お父様。その予定ですわ。

 それと。今年もお招き下さり感謝します」


族上は大いに笑う。


「がっはっはっは!!

 うむうむ。我が娘ながら、律儀だな。

 しかし今日はそんな堅苦しいのは要らぬ!

 お前達!杯を持って来い!!」


こうして鬼姫を含めた宴が鬼ヶ島で始まった。


「お姫よ、今年はあの威勢のいい妖かしは来ないのか?」


ああ、やっぱりそう来るか。

と鬼姫は思い、同時に

さて、どうやって誤魔化そうか?

と考える。


「ええ、たまには少し用事がありまして」


「ふむう.....用事なれば仕方ない。

 惜しい、実に惜しい…」


その威勢のいい妖かしはと言うと.....。


「.....あぁ、暇じゃ....」


畳にひれ伏して暇を潰せてなかった。


鬼姫は鬼達と酌を交わしてゆく。


「お姫は凄いですなあ。そんな小さき身体でその杯に酌まれる酒を飲み干すとは」


鬼が大きければ、当然

杯も大きい。


「鬼ヶ島のお酒は美味しいですからね。

 いくらでも飲めますよ」


そう言いながら、鬼姫は

お酒を飲み干していった。


程よく鬼姫や鬼達が酔った頃。

宴は最高潮になる。


「がっはっはっは!!

 それ、もっとだ!!もっと回すぞ!!」


「おぼぅううううっ!!

 吐くううう、吐きますううう!??」


これは拷問車輪。

普通はここに罪人などを固定し

自白などをさせたり、水死させるものであるが、

ここではじゃんけんで負けた者を

固定し、強制下戸の刑にする

罰ゲームアイテムとなっている。

それはそれは綺麗な虹色のゲロで染まって行きます。


そして鬼姫が挑戦するのは目隠しチャンバラであった。

視界を奪い、三回周り、酔も相まって

平衡感覚(へいこうかんかく)がなくなる中での一本勝負。


「鬼姫 対 心眼の苑鬼!

 始め!!」


その合図と共に鬼姫が駆け出す。

それに遅れを取らない苑鬼。

勝負はほぼ互角。

だが、鬼の姫は一枚も二枚も上手なようだ。

相手の攻撃を綺麗に避け、絵に描いたようなカウンターが

相手の頭上に決まる。


「一本!そこまで!!」


「うおおおおおおおお!!!!」


そこには沢山の歓声で溢れかえっていた。


「.....ふふっ」


鬼姫は喜びを顔で最大限表現し笑うのであった。


楽しい時間というのはあっという間で

夕刻を過ぎ、もう帰る時間となる。


「今日はとても楽しかったです。

 また、お誘い下さい」


「お姫えええ、寂しいですよおおおお!!」


鬼達は号泣して鬼姫を送り出す。

その鬼達をなだめながら鬼姫は言う。


「そんな、後生の別れじゃないのですから。

 また、呼んで下さい。

 そしたらまた、皆様たちとまた楽しめばいいの」


「うおーーん!!うおーーん!!

 娘よぉおお!!元気で暮らすんだぞおおお!!」


族長も号泣し別れを惜しみに惜しんだ。


鬼姫は鬼達をあとに

鬼ヶ島を出る。


「あ、たまへのお土産忘れてました!」


今日はたっぷり可愛がってあげよう。

と、思う鬼姫でした。


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