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食料に困ってる村なのに、お菓子の基本材料を大量に発見してしまいました

お菓子の材料が手元にあると夢が膨らみますね。

費用をかけずに済ませられるっていうのは良いことだと思います。

 ケリィに村を案内されたぼくは、村の様子というか、現状を確認させられた。

 別に彼女の家だけが特殊ではなく、どこの家も似たり寄ったりだった。

 ただ、村長の家とやらだけは、それなりに立派な、といっても平屋で大きめの家で厩がついているぐらいだ。


 村の周囲には木で組まれた柵があって、村の出入りする場所は一カ所だけだった。

 そこには、村人が持ち回りで見張りをしている。

 村長の家を除いた、他の家の数は八軒だった。

 仮に一つの家族が十人いたとしても、八十人だし、その半分なら四十人だ。


 ケリィが奴隷云々とか話す辺りからして、何らかの理由で村に居られなくなった者が何人もいそうな村であるなら、もっと少ない可能性も高い。

 どこかで鍛冶をしている家も無さそうだし、何かしらの工業的な営みをしている様子は見受けられない。


 それどころか、人の姿もあまり見なかった。

 人の姿が少ない理由は、まだお日様が天高く昇っている時間であり、この時間は村の男衆が森の中に分け入って、薬草を採取しているからだという。

 女も家の中で薬草の陰干しをしていて、家を空けることが出来ないから、人が見当たらないということだ。


 陰干しなんて、別に準備さえ済ませてしまえば、後は他のことをしていても問題ないだろうが、あまり長時間目を離すと、余所の家に自分達が収穫した分を取られてしまうらしい。

 ケリィが、今回税を納められなかったのは、それもあったらしいのだ。


 ケリィは両親がいなくなった後、隣に暮らしていた幼なじみに、自分の家で干している薬草の見張りを頼んでいた。

 自分は薬草を男達に混ざって採取してくるから、と。

 それで見張りを頼む以上は、少しは自分の取った分も分けていた。


 ところが、今回税が引き上げられた事によって、隣の家も税を納めるのが苦しくなり、その幼なじみから要求される見張りの取り分が一気に上がり、結局税を納めるのは間に合わなかった。

 見張りを断れば、全部が無くなり、かといって見張りを任せれば、多く取られてしまう。


 後は、税を払えなかったケリィは、その幼なじみから自分の家で身受けしてやろうかと持ちかけられた。

 それを断ったから、どうしようもなくなったということだ。


 全く酷い幼なじみもいたものだと、ぼくは憤ったのだが、そういった事は割とどこにでもある事らしくて、ケリィの家も両親が存命していた時には、身受けされた男性が居た。

 それが隣の幼なじみにとっては、おじさんに当たる人で、隣の家主にとっての弟だった。


 ケリィの両親が亡くなった時に身受けの権利が無くなり、その男性は元の家に帰ることが出来た。

 何かよくわからないけど、複雑な関係なんだな、とぼくは彼女の話に結論づけた。


 とりあえず、色んな人達が互いに足の引っ張り合いをして、今の寂れた状況を生み出しているのなら、ここで何か得られる物はないかと調査をするぼくにとっては都合が良い。

 大抵の閉鎖的な村では余所者など、すぐにばれて警戒されて動きにくくなるのが関の山だからだ。


「そういえば、この村って周囲を高い木々に囲まれている割に、村の建物とか柵とか、たっぷりと木を使って建築してないよね。柵だって、あんなのじゃ、言ったらあれだけど動物が少し跳ねるだけで飛び越せそうな高さだし」


「ああ、それはですね。ここらへんに生えている木は、どうにも脆くて使い道がないんですよ。生木のうちは、ある程度丈夫なように生えているのですが、一度切り倒してから乾燥すると、途端に中がぼろぼろになって崩れるんです。外側の樹皮は割と丈夫なので、柵に使用しているのは樹皮の部分ですね。家の梁に使われている幹は、切った両側や樹皮から中の部分が見えている所を先に炙ることで崩れることを防いでいます。


 それでも、柱とかに使おうとすれば、すぐに折れちゃうんですよ。だから、梁の上にかぶせてある葉や草は極力重たくないようにしているんですけど、それでも数年に一度凄い雨とか降ると重みでボキッと簡単に折れるんですよ」


 ぼくはケリィが村の周囲に生えている木を指さすのを、じーっと見つめて試しに鑑定してみた。


 ――――――――――――――――――――――――――――

 メカルの木:

 成長の早い広葉樹であり、暖かい時期に花を咲かせ、実をつける。

 花の蜜は甘いが毒があり、舐めると食中毒を起こす。

 また、実も栄養価は高いのだが、生で食べると毒がある為、食用には向かない。

 尚、幹や枝の樹皮に包まれた白い部分は、乾燥させて粉にすると小麦粉の代用として使える。

 ――――――――――――――――――――――――――――


「普通に食料あるじゃないか。何で誰もあれに手をつけないんだ、おかしいだろ」


 小麦粉の木とか、ファンタジー過ぎると、彼女が指さした木を示して突っ込んだ。


「メカルの木の事ですか。あれの蜜は確かに甘いんですけど、私は小さい頃それを舐めてお腹を壊したのでこりました。実だって、しっかりと熱を加えれば食べられますけど、小指の先程度の大きさで皮も厚いし食べる所なんて殆どないんですよ。とても食料の代用になるものじゃないです」


「じゃあ、木の幹や枝を食べたことはないんだね」


「そりゃあそうですよ。村の誰もそんな事をした人は今まで居ませんし、行商人さんだってメカルの幹を売ってくれなんて言ってきた事もないですもの。というより、あれを食べるんですか?」


 彼女は、木の幹とか枝をどうやって食べるのだろうかと、疑問符を顔に張り付けてぼくを見ている。


「それじゃあ、ぼくは目立つと良くないからケリィさんの家で待ってるよ。ケリィさんは村の周辺に生えているメカルの木の落ちている枝を何本か拾ってきてもらえるかな。出来るだけ太くて中の白い部分が多い奴が良いね」


「何だかよくわかりませんけど、そんなもので良いのなら取りに行かなくても、私の家にも裏側に薪として積んでありますよ。まだ未加工の物が何本かあったので、テネストさんが言う白い部分も残ってます」


 どうやら、集めに行く必要もなく、どこの家でも誰もが利用する薪として使われている木のようだ。

 それにしても、小麦粉の代わりになるものを薪として使用していたら、粉塵爆発の恐れがあるんじゃないかと思ったが、加工と言っていたので、それは既に理解されているのだろう。


 早速ぼくはケリィさんに裏側に積んであるという薪を見せて貰うと、確かに白い部分が乾燥した状態で残っていた。

 本来は、これを加工、つまりは樹皮と白い部分に分けて、樹皮は薪にして、白い部分は畑の肥料に使用するのだそうだ。

 昔は、白い部分も薪として使っていたのだが、時々爆発して家が壊れそうになることがあったことから、白い部分は取り除いて使うようになったらしい。


 ただ、爆発する時とそうでない時があることで、戦で利用出来るものではないということで活用される事はなかったし、畑に撒けば、撒かない畑よりは作物が育つということで肥料の使い道しかないそうだ。

 無知は罪だとよく言うけど、まさか小麦粉を畑に撒いて、それで食料に苦しんでいたとはお粗末な話だ。


 ぼくは外で珍しい行動を取っていると周囲から不審な目で見られると判断して、薪の何本かをそのままの状態で、ケリィさんの家に運び入れて、実際に使えるのかどうかを試してみることにした。


いつもお読みいただいてありがとうございます。


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