隠し味のないアイスなど、ただのアイスだ
別作品の息抜きに書き始めました。
こちらはタイトル通り、お菓子のように手軽につまんで、サクサクと読めるものを目指します。
砂糖60グラム、卵2個、生クリーム200cc。
これは一体何なのか。
単純にアイスクリームを作成する際に必要な材料レシピだ。
砂糖と生クリームをボゥルに突っ込んで角が立つまで混ぜる。
ハンドミキサーを使えば回転速度によりけりではあるが、ほぼ一瞬で角が立つ。
室温が高かったりして、生クリームの温度が高くなると角が立ちにくくなるので、キンキンに冷やしたボゥルを使うか、一回り大きなボゥルに氷水を入れて、その中にボゥルを乗せてやるといい。
慣れた手つきでハンドミキサー片手にちゃっちゃと混ぜる。
ここで、角が立つまで混ぜ合わされた生クリームは、ホイップクリームとなっている。
それに卵を落として混ぜてやれば、アイスクリーム液は大体完成する。
卵は卵黄だけの方が色合いが黄色になって濃厚になりやすいのだが、卵白をどうするのか困る。
メレンゲにしても良いし、スフレを作ってもいいだろうが、他の物を作るのが面倒なら、そのまま全部入れる。
それでも別に極端なまでに味が深刻的に悪化もしないし、むしろ卵白によって滑らかさが得られるという見方もある。
後はアイスクリーム液が出来上がったら、ここからは個人によってアレンジが発生してくる。
ジュースの類を入れれば、それに応じたアイスクリームが出来る。
但し、分量を多めにしたり、そのまま入れるとアイスクリームにそぐわない物を入れたりすると、失敗することもあるので注意が必要だ。
個人的には、ラム酒を少々入れてから、バニラエッセンスを加えるか、贅沢にするならバニラビーンズを加えるのが好きだ。
さて、仕上げとしてそれら、ラム酒とバニラエッセンスを入れようとして、流しの下に置いてある瓶と製菓用品を置いてある棚から小瓶を取り出した。
いざ、アイスクリーム液に投入しようと蓋を開けてゆっくりと瓶を傾ける。
しかし、何も出てこない。
瓶の中をよくよく覗いてみると、ラム酒は空だった。
まあ、まだ焦るような時間じゃない。
ラム酒が無くても、バニラエッセンスを入れるだけでも、十分にバニラアイスとして成立する。
小瓶の蓋を開けて逆さまにした状態で、アイスクリーム液に向けて振る。
しかし、これまた焦げ茶色の液体がかかる気配を見せない。
小瓶を揺さぶって中に液体が入っているか確認すると、液体が残っているように見えない。
思わず天を仰いで、ギャース、などと叫んでしまった。
でも、ここで諦めてそのまま冷やして固めてしまえば、パンチの効いてない空しいアイスクリームが完成する。
そんな物を作るぐらいなら、最初から作らない方がマシだ。
というわけで、ハンドミキサーの混ぜる部分を引っこ抜いて水の張ったボゥルに投げ込むと、アイスクリーム液を冷蔵庫にしまった。
ラム酒もバニラエッセンスもコンビニを何軒かハシゴするか、スーパーマーケットにでも行けば手に入る。
中途半端な所で買い物に行かなければならなくなったのは、とても不本意だが仕方ない。
手早く身支度を整えて買い物に出かけた。
既に夜の12時に差し掛かっていたせいもあって、目的のラム酒とバニラエッセンスを入手出来たのは、7軒目のコンビニを回った頃だった。
スーパーマーケットや量販系酒屋が開いていればこんな面倒もなかった。
普段は、こんな時間に歩かないのにな、などとぼやきながら、まばらに街灯がある道を家路へ向かう。
深夜ということもあって、幹線道路では大型トラックが道も空いている為に凄い勢いで飛ばして走っている。
横断歩道の夜間のみ押して信号を青に切り替える作業をして、左右の安全を確認してから横断歩道を渡る。
ふと横からパカランパカランと聞き慣れない音が聞こえてくる。
どこぞの時代劇に出てくる将軍様の馬が出す効果音だなあ、などと思い出しつつ、音の方向に顔を向けた。
すると、真っ黒い何か大きな物が目の前に押し迫ってきていて、そのまま全身を強く跳ね飛ばされた。
手にぶら下げていたラム酒とバニラエッセンスの入ったビニール袋が宙に舞っていく姿を目に焼き付けて、このままじゃ、割れちゃうなあ、また買い直しか、という思いの後、意識は闇へと落ちた。
お読みいただき、ありがとうございます。
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