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ふたりはフリキュア!  作者: 池田あきふみ
黒澤編
8/11

邂逅 黒


 ――――あ?……誰だお前は?


 ……お前、いつからそこにいた?

 何でそんな場所に座っている?

 っつか何だその恰好は?顔真っ白じゃねえか気色わりぃな。



 ……チッ、あークソ。

 そういうことか。また一人増えたのか。

 ったくめんどくせえな。

 しかしおかしいな。お前、どうやってこの場所に入ってきた?


 まあ、お前が何者か知らないが、俺はこの席を譲る気はないぞ。

 変わってもらうなら他の奴に頼むことだな。

 悪いがこの時間は俺専用だ。覚えておけ。


 なに?俺の名前だと?

 人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもんだろ?

 ……ふん、まあいい。俺は黒澤。無敵超人『黒澤恭也』だ。以上。はい終了。

 んじゃ。


 あん?なんだよ。まだなにかあんのかよ?


 ……ああ、そういうことか。

 外のことについて知りたいんだな?

 そうだな。お前も知っておいたほうがいい。

 だが悪いな。俺は長々と人に説明することは得意じゃねえんだよ。

 俺からお前にしてやれるのは、せいぜいいくつかの忠告だけだ。

 それでもいいってんなら話してやる。


 いいか。西区と特区には近づくな。

 西区はカタギじゃねえ奴がうろついてるし、自称自警団の妙な連中に絡まれることがある。

 奴らに絡まれたらかなり面倒なことになる。覚えておけ。

 そんで、特区に関しては、ありゃもう無法地帯だ。

 特区ってのは、所謂スラム街ってやつなんだが、あそこでは平気で人と人が殺し合い、金や食い物を奪い合って生活している。

 どこから流れてるのかは知らねえが、薬や銃器の売買も日常茶飯事だ。

 国の政府は見て見ぬフリをしているが、今この国はそれだけ大きな闇を抱えている。

 富裕層のおっさんが女中を侍らせながら、高級ワインとステーキを食っている傍らでは、まともに衣服も着れないやせ細った子供たちが、カビたパン一つで命を奪い合っている。

 日本の治安が良いなんて言われていた時代は数十年前に終わった。

 お前に自分の身を守れるだけの力が無いなら、特区には絶対に近づくな。いいな、絶対だぞ?

 

 ……なに?ボディガードを連れて行く?

 ハッ。冗談はやめろ。ボディガードなんてのはクソのやるもんだぜ?

 奴らのことを信用するな。

 お前に一つ教えておいてやる。

 人間ってのは自分の命が何より重いんだよ。

 ボディガードってのはな、脅威に遭遇した時、必ず自分の命とプリンシパルの命を秤にかけることになる。その時、金で雇われているボディガードが、迷わず自分の命を差し出せると思うか?

 俺は思わない。

 例え忠義心の強い人間であっても、いざそういう現場に遭遇すれば、必ずどこかに迷いが生じる。そしてその一瞬の迷いが現場では致命的になる。


 ――実際に、俺の親父はボディガードだったが、テメエの女一人守れず消えちまいやがった。

 だからな、俺はボディガードなんてもんは信じちゃいない。

 俺は他人を信じない。信じられるのは世界でただ一人、自分だけだ。

 この世界は、言わば暗い深海の底だ。

 無暗に手を伸ばしても捕まるものは何もない――真っ黒な海の中。頼れるのは自分の力だけだ。


 俺には他人を守る力なんてもんは無い。

 人が人を守るってのは難しいことだ。

 護衛なんて言葉を使うには、人体ってのはあまりに脆すぎると思わないか?

 例え武術を極めた達人であっても、ガトリングを持った子供を前にすれば、ただの肉の的に過ぎない。

 だから自分の身は自分で守る。それが自然界のルールだろ?


 だからな、ボディガードなんてのは、雇うだけ金の無駄だ。やめとけ。

 あァ?「フリキュア」?

 チッ。テメそんなことまで知ってやがったのか。

 あのな、俺はあのクソ野郎に勝手に巻き込まれただけだ。俺はそんなことやりたかねえんだよ。

 あいつは喧嘩が弱いから、いつも暴力沙汰は勝手に俺に押し付けやがる。

 そもそも、そのだせえ名前が気に食わねえしな……。


 まあもういいだろ。お前と雑談するつもりはねえよ。

 忠告は以上だ。俺はもういく。


 ああ、そうだ。最後に一つだけ聞いておきたい。

 

 ――もしかしてお前、俺を殺しにきたのか?




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