表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/169

17.魔王領――9

「――それで、そのラミスってのはどんな感じなんだ? 貴族の親玉みたいなって事はやっぱり性格悪そうなのか?」

「さっき少し話した分だと、そうでも無さそうだったぜ。偉そうだったけどな」

「偉そう、かぁ。駄目なんじゃないの?」

「シェリルが言うなら大丈夫じゃない?」

「……碌に話もしていないのに、正確な判断など不可能だろう」

「オリクに賛成。これから話を聞いてからだね――っと。起きたみたいだ。ついて来るなら静かにね」


 食堂に集まって皆と話していると、ラミスの部屋に残してきた札から連絡が届いた。

 日本の電話と違って精々モールス信号くらいの応用しか出来ないし有効距離も短いけど、それでも便利なのは確かだ。

 すぐ部屋に駆け付けて、念の為に扉をロックしていた氷を解く。

 中ではラミスが、寝起きの子供にしてはしっかりした様子で待っていた。


「おはよう、ラミス。疲れは取れた?」

「うむ。おはようなのじゃ」


 観察する分には自然体。

 起きたらすぐ連絡するようにって書き置きに従ったのか、扉をロックしていたことに気付いた様子はない。


「じゃあ、改めて話を聞こうか。ラミスは王朝の王女様、なんだっけ?」

「なのじゃ。父上亡き今、戴冠こそしておらんが実質は女王じゃな。王旗(パンディエラ)も継いでおる」


 王旗……王族の血筋に宿り、正当な主に受け継がれる特殊な能力だったか。

 っていうか、今サグリフ王朝ってトップ不在!?

 そして明らかに重要人物っぽいのがここに……胃が痛くなりそうだ。


「そ、それなら証拠を見せてほしいんだけど。ラミスの王旗はどんな能力なの?」

「残念じゃが余は未熟ゆえ、使用は固く禁じられておる」


 なら、実は王族云々ってのが間違いな可能性も少しは……。


「とはいえそれだけで納得はするまい。特別に余へ魔法を使うことを許すのじゃ」

「え?」

「グズグズするでない、絶対に大丈夫じゃから早うせい」


 ふと、全力の魔法をぶつけてみたいなって悪戯心が首をもたげた。

 万が一を考えるまでもなく普通に自重する。

 どうなるかの説明も無いし、軽い方が良いに決まってるよな……。

 小さな氷の礫を生み出し、ラミスの額目掛けて撃ち出す。

 氷のサイズもあって、ストレートに通ったとしてもデコピン程度の衝撃で済むだろう。

 結果は案の定の無効化。

 命中する直前から氷は解けるように宙へ消えていった。


「これは宿る王旗の余波じゃ。余に魔法は効かぬ」

「いや、それ王旗の能力じゃないよね?」

「のじゃ?」


 カマをかけてもラミスの反応は至って普通。

 少なくとも本人に嘘を言っているつもりは無いと見て良いか。


「――のじゃ!? 貴様、我がサグリフ王朝の血筋を侮辱するか!?」

「ごめん、少し勘違いしてたみたいだ。僕が悪かった」

「ふん……殊勝な態度に免じて、此度だけは見逃してやろう」

「ありがとう。それで本題なんだけど、その王女様がどうしてこんなところに?」

「それを語ると少々長くなるのじゃ――」


 ラミスの話したところをまとめると、ほぼ「奇妙な人物」たちの誘導によるものらしい。

 最初はメイドの手引きで王宮を出た直後、その王宮が爆発。

 そのメイドとは少し同行してから別れ、次は兵士と同行して城下町へ。

 兵士に連れられてしばらく歩き、疲労が貯まってきたところである町民に招かれ家へ。

 兵士とはそこで別れ、次の日はその町民に連れられ更に移動。

 しばらくしてはまた別の町民に同じように世話になり、それまで同行していた町民とは別れて新たな町民と共に出発。

 その繰り返しの果てにこの森に迷い込み、いつしかはぐれ、そして結界を抜けたと。

 結界は王旗の余波ですり抜けたと考えるのが妥当な筋か。


「――誰も悪い人間ではなかったが、どこか人形みたいで正直不気味だったのじゃ」

「人形……」

「その点、まぁ、その、なんじゃ……お主らに会えたのは、良かった」

「シェリルが聞いたら喜ぶよ。それで……ラミスはこれからどうしたいとか、ある?」

「うむ」


 奇妙な人物、ね……。

 それを聞いて思い浮かべたのは、ティスと共にいた謎の男。

 特に明確な理由はないけれどアイツの事だと勘が主張していた。


 そしてもう一つ重要なこと。

 これからのラミスの行動の指針を尋ねると、彼女は躊躇いなく首を縦に振った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ