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122.魔王領――75

 ――それから少しの間、比較的何もない日が続いた。

 眷属の中でもまとめ役のレミナやゴドウィンがコーネリアに師事するようになったり、色々な方面に話をつけにいくコーネリアやラミスにたまにお供したりって事以外はほぼ昔と同じ穏やかな日々。


 でもそれは同時に、戦いに備える期間でもあったわけで。

 その気になればいつでも出撃できる僕ら魔王組からすれば特にアテもない休暇だったけれど、方々に潜伏している王朝派の面々は戦力の確保から行軍の計画まで全速力で準備していた。

 そして、その準備が終われば……次は戦争だ。


 まぁ、サグリフ軍の編成はまだ済んでないんだけど。

 そっちの準備が完全に整う前に、僕らにはやっておくべき事がある。


「……それで、作戦は?」

「現在セジングル方面を杖の勇者マチルダ、鎖の勇者レオンが攻撃中。糸の勇者ニーナがセントサグリアの防衛についており、鏡の勇者ヘンリーの動向は不明との事です。よって――」

「――セジングルを攻めてる勇者二人を叩けばいいって事ね」

「ええ」


 ティスの確認に頷くコーネリア。

 今回の戦闘に参加するのは僕とティスにランカ(ランカリデス)フィリ(ナジアンフィリ)リエナ(ネシェーリエン)、アベルとアーサー。

 一応セレン(セレンペルーシュ)ラルス(ラカルスマーグ)の二人もついて来るけど、この二人は万が一に備えての予備戦力だから実際に戦うのは七人だ。


 それにしてもアーサーがコーネリアの傍を離れるのは少し意外だったけど、そういえばディアフィスにいた頃からアーサーは勇者の任務がある時は一人で行動してたか。


「――ま、そんな感じでいいかな?」

「うむ」


 少し考えが横に逸れているうちに話は終わっていた。

 皆で席を立ち屋敷を出る。


「移動はいつもの氷龍で?」

「うん、そのつもり」

「九人分ともなると結構なサイズになるんだろうねぇ」


 え?

 セレンも含めて半分は地力で飛べるんじゃ……。

 まぁいいか。結界の中ならそれくらいは余裕だし。


「それなら少し大きめに作るかな」

「おー、大迫力……って、本当に随分と大きいね?」

「今も勇者は侵攻中らしいし、スピード重視って事で」

「なるほどね」


 生み出した氷龍は背中に九人全員が乗れるサイズで、速度は普段以上に出すために翼を特に大きくしている。

 放出する魔力の量も増えるし、氷の強度との兼ね合いもあるけどこれくらいのバランスなら誤差の範囲だ。


「あ、そうだ。道中はオレが毛布用意するんで、冷気にまで気を回さなくても大丈夫ですよー」

「ありがとう、助かる」


 生成すれば維持は格段に楽な氷龍と違って冷気の制御はずっと操作が必要になるから、ラルスの提案は地味にありがたい。

 僕が砂漠で暑さを感じるのと同じで、氷属性を持ってるリエナを例外として魔王や勇者でも極端な冷気はツラいらしいし。


「――じゃあ、行ってきます」

「ご武運をお祈りしております」

「無事に帰ってくるのじゃぞ!」


 こうしてコーネリアとラミスに見送られ、僕らはセジングルへ飛び立った。

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