ヴァンパイア?
ゴミを押しのけて、ヴァンパイアが立ち上がる。
「小僧!何のつもりだ。我を高貴なるヴァンパイアと知ってのことか」
「高貴だと、下衆な下僕風情が!お前の主人は誰だ?この辺りだと、アルセクトか」
少年の口調が変わる。
「な、何故それを……」
「アルセクトに伝えろ。あまり五月蝿いと、狩るぞ。とな」
「人間風情が、我が主人を……こ、金色の瞳」
ヴァンパイアが、いきなりおびえた表情を浮かべる。
「ま、まさか、げ、げん」
少年の右手が動いたかと思うと、ヴァンパイアの心臓部に銀色のナイフが突き刺さり、ヴァンパイアは、悲鳴をあげる間もなく灰となって崩れた。
「口は災いの元、覚えておきな。と言っても聞こえないか。さて、邪魔者もいなくなったし、おねえさんデートしよう」
「ちょっと待って、あなた何者なの?ヴァンパイアをあっさりと倒しちゃうし、それにあなたの瞳は黒いのに金色だとか、最後に言いかけた、「げん」って何?それから、それから、アルセクトって誰?」
私は、混乱した頭のまま、少年を一気にまくし立てる。
「えー、聞きたいの?それじゃ、そこで食事でもとりながら、というのはどう?」
少年が、にこにこと聞き返した。私は、黙って少年を睨む。
「わかった、わかった。まずは自己紹介。僕の名前はレイ。レイ=ブラット、年齢不詳。職業、ヴァンパイア。以上、おねえさんは?」
「え、葉月秋穂」
「秋穂さんか。いい名前だね。純血の日本人?」
今の時代、日本人も混血が進んで、純血の日本人というのは少ない。外国人の血が入っていても、名前は純和風というのは多いけど。
「ええ、今時めずらしいことにね。って、ちょっと、なによ。職業ヴァンパイアって」
「気が付いたか、そのままの意味だけど……」
「ヴァンパイアですって?いい?ヴァンパイアの特徴というのは、赤い瞳をしていて、コウモリや、オオカミに変身して、日の光や銀の武器を使わないと倒せないの。あなた該当する?」
私は、ヴァンパイアの一般的な特徴をあげる。ヴァンパイアは人間だった時の記憶、性格を引きずるから、服装等はさまざまだが、赤い瞳等は共通する特徴だ。
「まあ、それは置いておいて。続きは、ベッドの中でと言うことで……」
ベッドの中って、いつの間にそこまで話しが進んだの?
しばらく、無言で見つめ合う(あくまでも、私は睨んでいるつもりだ)。が、遠くの方からパトカーのサイレンの音が近づいてきた。おそらく、私と組んでいたハンターの助手が通報してくれたのだろう。となれば、警官だけでなく他のヴァンパイアハンターも駆けつけてくるはずだ。
「う〜ん、面倒は嫌い、なんだよね。残念だけど」
レイと名乗った少年は、そうつぶやくと、ひょいと3mはある壁のうえに飛び乗る。普通の人間には、助走無しで3mの高さの壁の上に飛び乗ることなど不可能なのだが、彼は楽々とやってのけた。驚くべき身体能力だ。
「ちょっ、ちょっと待ってよ」
「面倒事は嫌いなんだ。ヴァンパイアは、秋穂さんが倒したことにしておいてよ。じゃあ、またね」
そう言い残して、彼は壁の向こう側に消える。
「いったい、なんなのよ!」
私の叫びだけが、夜の街に木霊した。
計ったようなタイミングで登場した少年(笑)
自称、ヴァンパイアですが、真偽のほどは?
すぐにわかるのですけどね。
今回は物語の補完は無し。
この作品におけるヴァンパイアの定義は、作中で行わせていただきます。




