少年
路地を右に曲がった。100m程走ると3mほどの高さの壁が行く手を遮る。壁に背中をつけて振り返ると、ゆっくりとヴァンパイアが近づいてくるのが見えた。
「い…嫌…こないで……」
右手に持ったCZ−75を乱射する。数回の轟音の後、スライドが後退したまま止まる。だが、ヴァンパイアは平然と立っていた。
「全部…外れた……」
「もう終わりか?ならば、いただこうか」
「ひぃ」
恐怖のあまり、悲鳴もまともにあげることが出来ない。ヴァンパイアが私の肩を掴んだ。
「ん、この匂い。処女か。はっは、今宵はついている、昨今、処女は少なくてな。不味い血ばかりで、飽き飽きしていた所だ」
もう抵抗する気力も無かった。いやらしく歪んだヴァンパイアの顔が、私の首筋に近づく。私は目を閉じた。
ぐしゃ!がしゃん!がらがら……
にぶい、何かを殴ったような音と、スチール製のゴミ箱をひっくり返したような音が、突然響いた。
ゆっくりと目を開くと、目の前にヴァンパイアの顔はなかった。代わりにまだ少年と言って良い大きさの背中があった。そして、少年が見据える先のゴミの山からは、2本の脚が生えていた。
「女性を口説くのに、力ずくと言うのは、感心しないな」
何処まで本気なのか、少年がこの場に合わない軽口をたたく。
「ねえ、お姉さん。こいつ、僕が倒したらデートしようよ」
振り返って、そう言った少年は、テレビでよく見るアイドルグループが、束になってもかなわないほどの美形だった。年の頃14、5。思わず首を縦に振ったが、あわてて首を左右に振り言い直す。
「なに言っているの。相手はヴァンパイアよ。早く逃げて!」
「違うな。逃げるのは奴の方さ。僕の方が強い」
少年は、私に向かい不敵な笑みを浮かべ言い切った。
一体どこから、そのような自信が湧くのだろうか?だが少年は、その自信を実力で証明することになる。
謎の美少年登場です(笑)
少年の正体は次回べたですが(笑)
物語補足
CZ-75 FIRST-MODEL:秋穂の愛銃。
チェコのCZ(チェスカ ズブロジュヴカ=チェコ銃器工業)製造のハンドガン。
1975年−1980年製造で「ショートレイル」という呼称でも知られている。
当時の西ヨーロッパの銃器専門誌はこぞって「優秀」の折り紙を付け、一般の愛好家も高得点の評価を与えていた。
西側各国の警察、軍関係者もこの優秀なCZ-75に目を付け、制式拳銃のトライアルのリストに入った程だが共産圏の銃という事でトライアルを見送られるという運命でもあった。
その為か入手が困難となり、プレミアが付く人気の高さと愛好家が絶対に手放さない為、1984年の規制緩和まで形状を似せたコピー製品を数多く生んだ。だが、どのコピー品も粗悪な為にオリジナルを越える物は登場できなかった。




