逃走
ビルとビルの間の裏路地を、私は逃げていた。
ごみ箱を倒し、服が汚れるのもかまわず走る。「こんなはずじゃなかったのに」という思いが心を占める。
そう、こんなはずではなかったのだ。
私の初仕事は、ベテランハンターと組んでのワーウルフの駆除だった。アルバイトでハンター助手をしていた時に、何度か経験したこともあり、楽勝な仕事だった。ヴァンパイアが現れるまでは……
私は、愛用のCZ−75で、ワーウルフの頭部に銀の弾丸を打ち込んだ。とたんに、ワーウルフの動きが止まる。
銀製の武器、弾薬はハンターの標準装備だ。驚異的な回復力を持つモンスターも、銀によりつけられた傷は回復出来ない。詳しい理由はまだ解明されていないが、あらゆるモンスターに、銀が有効だということは実戦で証明済みだ。
銀の弾丸は高価で、無駄遣いはしたくないのだが、安全には代えられない。慎重に心臓を狙い、さらに2発打ち込んだ。
「よし、よくやった」
今回、組んだハンターが、笑いながら近づいてくる。
「サポート、ありがとうございました」
私は頭を下げた。新人の場合、2、3回はベテランのサポートを受けて仕事をする。ハンターの免許を発行するハンター協会の規約にもあり、サポートをしたハンターが保証人となった営業許可書を貰わなければ、自由に仕事を受けることも出来ない。
つまり仕事の内容で、先輩ハンターの信頼を勝ち取らなければならない。
「それじゃ、夕食でも食べて帰るか」
そう言って笑ったハンターの頭が、突然爆ぜた。まるで、出来の悪い映画を見ているようだ。
「我が狩場を荒らす愚か者どもが!」
黒い服の上に、黒いマントをした男が、2m程の高さに浮いていた。そして、瞳が紅く光る。
「ヴァンパイア……」
ヴァンパイアの瞳を見てしまった私は、蛇に睨まれた蛙のように身動きが出来ない。頭の中で、逃げろと警鐘を鳴らすが、体がいうことを聞かない。
薄ら笑いを浮かべたヴァンパイアが、少しずつ近づいてくる。ヴァンパイアの手が、あと数センチで私に届くという時に、携帯電話が鳴った。同時に金縛りが解ける。体の自由を得た私は、ヴァンパイアを突き飛ばし、走り出した。
考えがあったわけではなく、ただ本能に従って逃走したのだ。
主人公いきなりピンチです。
さて、逃げ切ることが出来るでしょうか。
以降、物語の補完です。
2種類の免許が出てきます。
ひとつめは、ヴァンパイアハンターの免許。
ふたつめは、営業許可書。
ヴァンパイアハンターの免許はハンターの証しであるが、これだけで自由に仕事を請けることは出来ません。
ハンター協会の斡旋か、ハンター会社に所属しないと仕事にありつけないのです。
営業許可書を取得後は、自由に仕事を請けることが可能になります。
取得条件はハンターもしくはハンター会社の2名以上の保証人の推薦が必要。
ただし、保障人はハンター協会が指名することになっています。




