レイとアルセクト
「くそったれ!」
作戦前に、予備弾倉を抱えた秋穂が、「予想外の事態は、いつでも起こりえるわよ。前回の教訓」等と言っていたが、現実になると厄介だ。
バックアップの俺たちと、秋穂が同時に奇襲を受けた。しかも、ベテランのはずのハンター二人が負傷したのだから始末に負えない。
「秋穂。応答してくれ」
しかし、通信端末からはノイズが聞こえるだけだ。
「チッ」
舌打ちをすると、秋穂のいるエリアに向かい走り出した。
間に合った。ビルの上から秋穂の姿が見えた。黒装束を着た男と対峙している。
ビルから飛び降りようとした時、足元にナイフが刺さった
「手出しは、無用に願えないか。あのハンターの実力を見たい」
声の方向に振り向く。そこには、ロマンスグレーの紳士が立っていた。そして、赤い瞳。その顔にも見覚えがあった。
「アルセクトか……」
「ヤツはやりすぎたのでな。始末しにきたのだが…… 先にハンターと接触したらしいな。あのハンターに任せようと思うのだが、どうかね?それとも、あのハンターが傷つくのは見ていられないかね?レイ=ブラッド君」
アルセクトからは、俺の瞳が金色に変わるのが見えただろう。
「わざわざ、そんなことを言う為に、俺の邪魔をしたのか?」
「ふむ、あのハンターは、美月に似ているな。彼女も黄金律の身体なのかね?」
「黙れ!アルセクト、俺はお前と話している暇は無い」
アルセクトは、手のひらを上に向けて肩をすくめた。
「君が、美月の時と同じ過ちを繰り返すなら、止めるつもりは無いがね。あの程度のヴァンパイアにやられるようなら、どのみち長くはないよ。彼女の為を思うなら、一人でやらせてみてはどうかね?」
俺は、銀のナイフを抜いて、切っ先を向ける。
「黙れ!美月の事は言うな!俺は同じ過ちは起こさない!守って見せる!」
アルセクトが、憐れむような目を向ける。
「変わらぬな。だが、美月のことは、200年前のことだ…… 悔やんだとて、どうにもならん。それに、彼女は美月ではない。そして、ハンターだ。自分の命すら守れないようでは、話にならん。黄金律の身体ならなおさらな」
俺とアルセクトは、そのまま睨み合う。
「安心しろ。私も、美月に似た…… いや、瓜二つの人間を見殺しにするのは忍びない。危ないと思ったら手を貸そう。だが、その時はハンターを辞めさせたほうがいいな」
「わかった。しばらく見守ろう、次は止めるな。今度はお前を倒してでも行く」
アルセクトが微笑を浮かべた。
今回も、読んでいただきありがとうございました。
今回は、内容の割りにキーワードが出てきました。
『黄金律の身体』『美月』
まあ、今は忘れていても別に問題ないのですけどね。このキーワードを入れるためだけに、レイ視点の話が割り込みました(笑
さて、次回は援護を失ってなおワーウルフを撃退した秋穂。孤立無援のままヴァンパイアとの戦闘に突入します。
秋穂に残された武器は、『知恵と勇気』(笑
では次回お会いしましょう。たぶんそんなに時間は掛からないと思います。




