事務所にて
「レイ、起きてる?」
私は、クーラ−ボックスを事務所の机の上に置いた。
この事務所は、両親を亡くした私の後継人であり、学生時代にアルバイトしていたハンター事務所の所長が、ハンター試験を合格した私に格安で貸してくれた物件だ。
しばらくすると、奥の仮眠室からゴソゴソと音がする。起きたようだ。
レイが、私の事務所に住み込むようになって1週間が過ぎた。表向きは助手ということになっている。もちろん、ヴァンパイアということは、秘密だ。
ふと、机の上を見ると、ハンター協会からの手紙が置いてある。ハンター協会では、何故かEメールではなく手紙を使う。新聞や書籍が電子化された(注文すれば、紙の本も、まだ手に入る)現代も変わらない。
手紙の内容は、次の実地が決まった為の召喚状だ。
ええっと、本日15:00時に、ハンター協会に出頭すること。
この仕事をこなし保証人がそろえば、正式な営業許可書が貰える。嬉しさのあまり、しばらくあっちの世界にいっていた私に、レイが冷たい視線を向けていた。
「な、な、なによ?」
「いや、秋穂ちゃんを見ていると、あきないなぁと思って……あ、おはよう」
「おはよう。って、もうお昼を回っているわよ」
「早起きのヴァンパイアっていうのも変だよな」
レイが笑った。
ずるい。私はその笑顔を向けられると、何もいえなくなってしまうんだ。美形というやつは得である。
「それじゃ、そこのヤツ冷蔵庫に入れておいて」と、クーラーボックスを指さした。
「また、輸血パックか……」
「ハンターの私が、人を襲ってもいい。なんて言えないでしょう。それを手に入れるのも大変なのよ」
「秋穂ちゃんが、血をくれたら1ヶ月に1度でいいのに…」
「怖いから嫌!」
「それじゃ」
「ダメ!」
レイが、次の言葉を紡ぐ前に拒否した。言いたいことはわかっているのだ。最後まで聞く必要はない。
「まだ、何も言っていないのに……」
「いいのよ。言いたいことはわかっているから。とにかく、それで我慢しなさい」
レイが、ぶつぶつ言いながら、パックを冷蔵庫に移す。
「そういえば、手紙がきていたぞ。紙のやつ」
「次の実地が決まったのよ。この仕事で認められれば、営業許可が貰えるの。早い話が、ハンター協会が斡旋する仕事以外でも、自由に請け負える。前回のワーウルフの仕事でも50万クレジットの収入になったし、ヴァンパイアの分で100万。合計で150万クレジットの報酬になっているわ。協会の斡旋だから安いけど、民間の相場だと5割増しになるわ」
「儲かるな。ハンターってやつは…」
ヴァンパイアのレイとしては、内心複雑だろう。(ちなみに1万クレジットは1万円ほどの価値になる)
「でも、銀の弾丸とか必要経費込みだし、直接ハンターに持ち込まれる仕事って訳ありのヤツが多いいのよね。被害者だと思っていた人が、実は黒幕だったり……ワーウルフに誘拐された子供を助け出したら、その子は両親に虐待されていて、ワーウルフが助けようとしていたり……毎年、人間不信になってやめる人も結構いるわ」
「ハンターって、そんなヤワで務まるのか?」
レイが、あきれたように言う。
「ハンターも人間だもの。それに、人間がいつも正しい訳じゃない……私も、騙されるのは嫌よ」
「まあ、愉快なヤツはいないな」
それもそうなんだけど。アルバイト時代に、何度か騙された時のことを思い出した。あー、やだやだ。それに、アルバイトといえば……
「昨日のグレムリン退治の報告書を持って行った後、ハンター協会とハンターショップに行くけど、レイはどうする?」
「あー、暇だから僕も行く」
レイは、着替えに仮眠室に戻る。
「時間無いから、急いでね」
声を掛けると、私は報告書をチェックするためにパソコンを起動させた。
相変わらず、話が進んでない(笑)
アルバイトと書いたグレムリン退治ですが、下請けと考えてください。




