プロローグ
創造主レイアは日の光を浴び受胎した。
生まれた子は火の神だった。
レイアは体が焼かれる痛みに耐えきれず、泣きながら火の神を地中に埋め、流した涙からは小さな水の神が複数生まれて大地に降下した。
水の神は海となり、大地を揺るがした。
すると、地中で眠っていた火の神が飛び出て火の雨を降らし、大地を焦土と化した。
レイアはその様を憤り、水の神に火の神を止めるよう頼んだ。しかし、水の神と火の神は決別してしまい、長い戦が始まった。
二神の激突は何千何万年と行われ、地上を傍観していた星々が呆れて逃げる者がでるほど続いたという。
わが子を思うレイアはため息で風の神を生み、苦痛から逃げるように空に昇った。そこで、月をみて子を孕み、闇の子を産んで世界に大いなる闇をもたらした。
昏々と続く闇に二神は視力を失い、相手の姿が見られなくなったことで終戦した。
二神は憎み合う相手とも気づかぬうちに交わり、絡み合いながら植物を芽吹かせ幾つもの生命を生んだ。
転がり喜ぶ神々は、戦いで生じた大地の裂け目に落ちていき、火と水、緑で構成された新しい世界を創造する――――――。
エディアルド=ボーマン 『ガディナ創造記』 五頁 (第一〇版)