第六話:日常と協力
さて、どうしたものか…
うっかり、30番内入りをする、等という宣言をしてしまった。
「はあ…」
僕は深く溜め息を吐く。
これで、告白とか考えてんだから傑作だな…
そして、もう一つ溜め息。
「蓮っ!いまからでも遅くはないぞ?俺は馬鹿の道にお前を受け入れよう」
坂下が誘惑してくる。
30、番内か…
大河内や秋庭さんなら簡単にランクイン出来るのだろう。
それでも、
僕には
高い壁。
「でも、今まで勉強してこなかった訳じゃないだろ?」
と、大河内。
「じゃないと、この学校にもいないしなー」
坂下も続ける。
そう。
実は僕のいる学校は公立のちょっとした進学校。
大河内程の実力を持った生徒が入るのも当然と言えた。
それじゃあ、僕と坂下は。
「いやーあんときはマジで勉強で死にそうになった」
「勉強で死ぬなら完全犯罪だな」
大河内と同じ学校に入るために。
本当に死にものぐるいで勉強した。
だって僕らは…――
「あー…確かにそんなこともあったな」
「だろっ?だから大丈夫だって」
「それにしても」
「何でいきなり30番内なんて言い出したんだ?」
うっ
坂下の最もな質問に、僕はどきりとする。
「えーと、それは…」
言えない、言えない。『秋庭さんに僕を認めてもらって、あわよくばその後告白するためです!』
なんて、口が裂けても言えない。というより、言ったら口を裂かれるだろうな。
「じっ、人類の成長と発展を切に願い、その為にこの上城蓮、自身を高める覚悟であります」
何言ってんだ自分!
「このウソつきめー!狼少年か、お前はっ」
すかさず坂下のツッコミが入る。
「嘘確率、100%だね」
「まあ、いいか」
大河内が目を細める。
「協力してやるから、頑張れよっ」
げしっ、と僕の背中を思いきり蹴飛ばした。
この時、僕はまだどうして大河内が協力してくれたのかわからなかった。
いや、僕はあいつに言われるまで、全然気付かなかったんだ。
でも、僕がそれを知った時は、もう全てが遅かった。
僕は、それをまだ知らない。