第五話:期末テストと目標
あれから、数日。
僕達は坂下や大河内も交えて、前よりずっと秋庭さんに近づいた。
時々、皆で話をするようになった。
そして、
本当にごくまれにだけど、
二人で。
『告白』。
それは最近、秋庭さんに対しての気持ちを理解し始めてから、少しずつ、確実に僕の頭をよぎるようになった。
まだ、僕にそんな勇気は無いのに――
*
「はぁー…っ!ついに来た…」
坂下が大袈裟に溜め息をつく。
坂下はいつも異常なくらいテンションが高いから、滅多に溜め息なんかつかない。
となると、こうなる理由は、ただ一つ。
「期ー末テーストーゥ」
坂下が自分で答えを言って、また溜め息。
「どうした、坂下っ!元気ない?」
大河内が坂下に声をかける。
「敵っ!大河内、お前は敵だあああ!!毎回テストの点が良いからってぇーっ!!」
坂下が大河内をきっ、と睨んだ後、おいおい泣き声をあげる。
やっぱりテンション高いかな?
「いやあ、数学ぐらいだよ。ハハハハ」
「バカーッ裏切り者ぉ!うらやましいぞーっ!!」
ちなみに大河内は大の数学オタクだもんで、テストで問題を解けるのが楽しみで仕方が無いらしい。
だけど、大河内は数学だけじゃない。
『必殺委員長』の異名をとるだけあって、毎回トップテン入り。しかも、三本の指に入る。
もちろん、数学はほぼ満点しかとっていない。
…僕には一生かかってもそんな日は来ないと思うぞ。
「…坂下、やるか」
「おうっ!」
「うわっ!お前ら何すんだっ!あいたたたたっ!!」
僕は坂下と共に大河内を攻撃した。
「くそーうらやましいぞー」
「カンペぷりーず!」
「わたたた、やめろってのっ!!」
「蓮、俺達は共に歩んでゆこうぜ…?馬鹿の道をっ!」
おお、と坂下に同意しかけて、ふと思った。
秋庭さんは、頭良いよな、と。
やっぱり、頭悪い男は嫌だろうな、と。
そして、
僕は坂下に返事をせずに、攻撃の手を止めて、スッと立ち上がった。
「蓮?」
「いや、坂下。僕はベスト30入りを目指す」
僕は、きっぱりと、
宣言した。
『え、え、え、ぇえええええ!?』
坂下と大河内がダブルで絶叫する。
「大河内っ!上城はどうしちゃったのっ!?」
「わからんっ、わからんよ坂下っ!フェルマーの定理を解く、数学者の気分だっ!!」「悪かったね」
これから、二週間。
いつもよりもっと、勉強してみよう。
そして、
ベスト30に入ったら。
秋庭さんに告白してみよう。