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第四話:きっかけとクイーン

なんで秋庭さんといると嬉しいんだろう。

どうして秋庭さんのことを考えると楽しいんだろう。


…ああ、そうか。


僕は唐突に納得する。


『恋』ってやつだ。


「って、ぇええッ!?」

「うわっビビった。いきなり大声出すなよな」

トランプ中にいきなり大声を出した僕に驚いた坂下にこずかれる。

いやいやいや。

違う違う。

そうじゃなくて…

…なんだ?

僕は秋庭さんについて何も知らなさすぎる。もっとも、今までろくに話した事すら無かったのだけど。何とか一回、話をしてみよう…

「おーい、早くトランプ出せ」

「ハイハイ」

「何だその気の無い返事は!トランプは真剣勝負なんだぞ!殺らなきゃ殺られるんだ!!」

「トランプで死んでたまるか!」

「まあまあ、じゃあ暇つぶしにトランプ二枚の合同を証明してみない?」

大河内の意見に、

『それは絶対にやらん』

珍しく僕と坂下の声がハモった。



次の休み時間。

秋庭さん達の話声が聞こえてきた。「何かCDとか買った?」

「ずっと前ですけど…」

と、秋庭さん。

「へえ、何買ったの?好きな歌手とかいる?」

これは遙。

「えーとクイーンのアルバムを…好きな歌手はクイーンですね。あと、カーペンターズとか」

むむっメモメモ。

しかし渋いな、秋庭さん。

僕は行動に出ることにした。

昨日持って帰ってしまった遙の教科書を手に持つ。

名付けて、『教科書返すフリして、話のきっかけ作戦』

まったく、我ながら姑息な手段。

「遙ー」

僕は遙を呼ぶ。

「教科書」

僕は遙に教科書を返した。

「ああっ!無いと思ったらやっぱりアンタだったのね!!」

「授業終わったらすぐ返しなさいよ、まったく!」

悪いな、遙…。

今はお前と話している暇はない…。


「あっ、上城君は歌手、誰が好きですか?」


キタ―――!!!

やった―――!!!

僕は努めて平静に答える。「あんま好きな歌手とかいないけど…強いていえばクイーン」

遙がはあ?という顔をしたのは無視。

「クイーン良いですよね!曲は何が好きですか?」

よしっ!秋庭さんがのってきた。

えーと、クイーンの曲は…

「えーと、I was born to love you とか」

「良い曲ですよね」

秋庭さんが微笑む。


100万ドルの笑顔!

と、幸せもつかの間、誰かにガシィッと首を掴まれた。

「上城くぅ〜ん、ちょっと良いかしらぁ〜?」

坂下だ。

「だからやめろってその裏ゴ…」

ぐふっ

エを言う前に坂下にヘッドロックをかけられ、教室の隅に引きずられる。

く…苦しい。

「さあて、上城蓮。女子達と何を話していたのかなぁ?」

「まったくだよ。フェルマーの定理はワイルズが証明出来たけれど、君が女子と話すことについては証明出来そうにないね。」

「ゲホッ。好きな歌手の話とか」

「ナニィ!俺たちも呼べよ!!」

坂下がもう一度ヘッドロックをかける。

「ぬけがけか?抜け駆けなのか??彼女いない歴16年の俺たちをさしおいてそんなことをする奴だったのかお前は――!」知るかそんな事――!

しかし、首を絞められているので、声が出ない。

「まあ、僕は彼女いない歴5ヵ月だけどね」

大河内がゆうゆうと答える。

大河内は実は結構モテる。

口を開いて数学の話をしなければ。

「男の敵―!!!」

坂下が騒ぐ。


結局、僕は坂下達を連れて秋庭さん達の所へ戻る羽目になってしまった。

でも、もう一度話せるからいいか…

「どーもー!坂下でーす!!」

「大河内でーす」

漫才コンビかお前らは!!

秋庭さん達、ちょっと引いてるぞ。

「コラ、お前もやれ」

「はいっ!?何で!」

「いいからやれ!俺たちだけやったらバカみたいだろ!」

充分お前はバカだよ!

ええい、もうヤケだ!

「…上城でーす」

坂下、大河内、遙、それにそこにいた女子達に爆笑された。

「うわっ、こいつマジでやっちまったよ!うわっ、うわ〜!!」

「うるせー!」

見れば秋庭さんも笑っている。

それを見ると、ま、いいか…と思った。


ホントに秋庭さんは不思議な人だ。

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