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第三話:幼馴染みと消ゴム

地理教室に行く前に、わざと教室に教科書を置いてきた。

秋庭さんに見せてもらおうと思って。

姑息な手段だが、僕にはいい作戦のように思えた。

「遅いっ!」

教室に入った瞬間、怒鳴られた。

「もうギリギリよ?大河内はともかく、蓮と坂下は先生に怒られたらヤバイでしょ!!」

ゲッ

遙の怒声が飛ぶ。

「特に蓮!」

遙はビシッと僕を指さす。

「あんた教科書どうしたのよ?」

「ん?おおっ忘れて来た!」

わざとだけど。

「もーしょうがないから貸してあげるわよ」

遙がフンッと鼻を鳴らして言う。

「別に良いよ、第一お前はどうすんだ」

「あたしは隣に見せてもらうわよ」

「だから僕も隣に…―」

「だから!あんたは先生におこられたらヤバイんだってば!」

「あんたの幼馴染みとして!仕方なく助けてやろう、って言ってんのよ!」

遙は僕の幼馴染み。

だからどう、ってことはないけれど、最近遙は『幼馴染み』ということを強調するようになってきた気がする。

なんでだろう?

「ちょっと蓮?聞いてんの?」

「聞いてるよ」

僕は答える。

「だったらさっさとこれ持って席に着きなさい」

遙が乱暴に教科書を投げる。

僕はそれを片手で見事キャッチ…

し損ねて華麗に頭に激突。

どすっ

坂下と大河内に爆笑された。

「覚えてろよお前ら…」

丁度チャイムが鳴ったので、僕らはおとなしく席に着いた。

不本意ながら手にいれた教科書と共に。

遙め、余計な事を。

せっかく秋庭さんに見せてもらおうと思ったのに。



秋庭さんが隣に。

それだけで何だか嬉しくて字を綺麗に書こうか、と思ったりした。

前なら同じく隣でもこんなことはなかったのに。

なんで…こんなに秋庭さんが気になるんだろう。

先生も珍しく静かな僕を不審に思って、

「保険室行くか?」

と声をかけてきた。

失礼な。


ころん


僕の足元に消しゴムがぶつかった。

拾い上げると、秋庭さんが手を伸ばしていた。

僕の方に顔を上げて、

「ありがとうございます」

白い頬を少し赤らめながら言った。

「はい」

と、僕は秋庭さんの手に消しゴムを渡した。

一瞬、指先が触れる。


おお。


なんか幸せだ。

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