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第二十四話:地獄のテスト返しと『話しやすい』こと

 秋庭さんが告白話をオーケーしてくれた理由はなんだっけ?

 僕は記憶を遡る。

 そうだ、『他の人より喋りやすいと思うから』だった。



「うわあああああ」

 各々の教室から、悲鳴が響き渡る。

 中には、「もう駄目だ」「殺される」等という声もあった。

 期末テストが過ぎ去った今、僕ら善良な学生を恐怖の底に叩き落すのは何か?

 そう、『テスト返し』である。

「蓮、どうだった?」

 遙に訊かれた。

「ノーコメント……」

 幾らなんでも、これを言うのはちょっと。

「四の五の言わずに見せなさい」

「うわっ!? なにすんだ!」

 時既に遅し。

 テスト用紙は僕の手から消え、遙の下へと渡っていた。

「……? 全然悪くないじゃん、これ」

「え?」

 僕はそのテスト用紙を確認する。

 ああ、化学か……。

「まあ、化学だけは」

 他の教科は本当に目も当てられなかったが、化学だけはまともな点数を取る事が出来た。

 それに関しては、秋庭さんに本当に感謝している。

「ホントに化学だけねー。うわ、英語なんか大変」

「だから、見るなっ」

 言うなり、僕はひったくるようにして、遙からテスト用紙を奪った。

 いや、奪うというか、元々僕のだけどさ。

「ねえ、今度皆で遊びに行かない?期末打ち上げパーティー!」

 それはいいかもしれない。けれど、遙は直ぐに浮かない顔になった。

「あ……でも、蓮は秋庭さんと付き合ってるんだっけ」

「なっ」

 あんまり大きな声で言われると恥ずかしい。

「……蓮から告白したんだっけ?」

「……まあ……」

「秋庭さんは何て言ってOKしたの?」

「?」

 何だ?やけにしつこいな。

 遙は大抵こういう話に深入りしないタイプの筈だけど。

「いいから」

 何だか変だ。

 僕は、とりあえず記憶をたぐり寄せる。

『他の人より話しやすいと思います』

「――」

 今まで、この言葉の意味を深く考えた事はなかった。

 ただ、OKしてもらったことに浮かれていたんだ。大河内の言うとおり。

 『話しやすい』って、どういう風に?

 遙とは、話しやすい。多分、女子の中じゃ一番話しやすいだろう。

 でも、それは幼馴染みだから。

「蓮?」

 秋庭さんは、内気な性格だ。

 だから、話しやすい人間を好きと勘違いしているのか?

 そう、僕が遙に対して、幼馴染みに対して思うのと同じように、『話しやすい』――?

「ゴメン変なこと訊いて。別に言わなくていいよ」

 遙の言葉に、僕はいつの間にかうつ向いていた顔を上げる。

 『話しやすい』という単語がぐるぐると頭を巡っていた。

 こればかりは、秋庭さんに訊かないとわからない。

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