第二十二話:右ストレートと雨乞い
え……本当に?
今起こった出来事を、頭の中で反復してみる。
えーと、秋庭さんに、答えを言って、告白話にオーケーと言われて……。
うん、夢だな。間違いなく。
確認の為に、右手をグーにして、思い切り自分の頬を殴ってみた。
「ぐはっ」
「か、上城君?」
何故だ。滅茶苦茶痛いんですけど。
「グッドモーニン、皆の衆〜」
玄関から入ってきたのは、坂下だった。
「坂下、僕を殴ってくれ」
「え、蓮ってMだっけ?」
「違うわ!」
坂下は、僕の後ろに、秋庭さんがいるのに気づいた。
「そうか……失恋の痛みに、現実を夢と思いたいのだな……わかった、俺が目を覚まさせてやろう!」
いや、失恋してないし。どっちかっていうと、逆なんですけど。
そうこうしてる間に、右ストレートが決まった。
嗚呼、やはり痛い。
ってことは、夢じゃないのか……。
*
「ちょっと蓮、その顔どうしたの!?まさか、ケンカとか?」
あれから、一度保健室に寄って、顔に湿布を貼ってもらったのだ。坂下、ちょっとやりすぎ。
「いや、そんなんじゃない」
「まあ、あんたがケンカするわけないか……坂下とふざけてて殴られた、ってとこでしょ」
以外に鋭いな、ほぼ当たりだ。
「何年の付き合いだと思ってんのよ。その位お見通しお見通し」
「さすが。……おい、お前ら何やってんだ」
坂下と大河内が不審な動きをしている。
机の上に置いた紙に、奇怪な紋様や言葉をびっしりと書き、呪文の様なものを唱えている。
「何って、雨乞い」
だから、何で雨乞いしてんだよ!
「休み明けたらテストだからさ……」
僕の背中に寒気が走る。
そうだった、テストがあることをすっかり忘れていた。
「坂下はわかるけど、何で大河内まで?」
「退屈だったからねーでも、心配ない。僕が割り出した計算では、99.0867%雨だよ」
かなり微妙な数字だな。
試しに遙に訊いてみる。
「これは予測できたか?」
遙は高速、いや音速で首を振った。
「前言撤回。バカトリオの行動は予測不可能」
ん?トリオ?もしかして、僕も入ってたりする?
大河内がにやりと笑いながら反論した。
「馬鹿じゃないもんね、学年トップだもん」
「うっわ、何それ!ムカツクー!」
これは、僕と坂下も遙に賛成である。
「え、ちょっと君達、ここは友好に話し合うべき……ッ」
ご愁傷様。
*
それにしても、これは本当に夢じゃなく、現実なんだな。
放課後になっても、まだ実感が持てないけれど。
もしやこれって、世間一般でいう、カで始まって、四文字で、ラ行の三番目で終わるやつか!?
いや、この言い方はちょっと古いかな。
「あの……」、この言い方はちょっと古いかな。
「あの……」「ハイッ」
秋庭さんだった。
思わず、授業中、寝ている時に当てられた生徒の様に返事をしてしまう。
「色々考えましたが、付き合って、何をすればいいんでしょう?」
「……」
確かに。その辺はまったく考えていなかった。
何をすればいいのやら……。
「……一緒に帰るとか?」
秋庭さんは、くすっ、と微笑んだ。
「何時もとあんまり変わりませんね」
「そうだね」
何だかおかしくて、僕まで笑ってしまった。