第二十一話:飛び蹴り突っ込みと答えの伝え方・本番編
朝。小鳥のさえずり、目覚まし時計の音。
僕は、もぐら叩きと同等の反射神経で目覚ましを止めた。
もぐら叩きのスピードって、結構速いんだな、これが。
よし、あと五分……。
「起きろ!六時だぞ!」
「おわ!」
ノックもなしに、ズカズカと部屋に入ってきた侵入者によって、布団を剥ぎ取られる。
「起きろって言ってんだろ。きこえねーのか」
「ぐはっ」
そのまま、容赦なく背中に蹴りを入れられ、僕の体はベッドから落ちた。
フローリングの床は冷たい……。
信じられないことに。まことに信じがたいことに――僕も信じたくないのだが――この騒がしい侵入者の名は、上城琳。
僕の妹だ。
――遺伝学的には。
「朝ごはんと弁当」
そうして琳は、僕にふわふわの卵焼きが入った弁当箱……ではなく、空の弁当箱を差し出した。
ほほう、僕に朝ごはんと弁当を作れと。
「普通こういうのは妹が兄貴に作るもんだろ」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねーよ」
「なんだと!?妹としてだな、そもそもお前はホントに女か」
元祖、とび蹴り突っ込み!
反抗期の妹を持つ兄は辛い。
こうして、僕の朝は、凶暴な妹に起こされ、朝ごはんと弁当を作ることから始まる。
「おはよう、母さん」
テーブルの方に声をかけ、弁当を詰める。
わざわざ早起きして、人に弁当を作らせるのだから、姑息なやつだ。
まあ、琳は壊滅的に料理がヘタだからな……。
心中でぼやきながら「ほら」と、僕は、琳にふわふわの卵焼きが入った弁当箱を渡した。
その後、ベーコンエッグの皿を二枚、テーブルの上に置く。
天気予報を見ながら、会話もそこそこに朝ごはんをつまんだ。
「いってきます」
「いってきまーす」
そうして、僕らは母さんに――玄関横の写真たてに声をかけ、学校へ向かう。
*
『わたしの何処が好きなんですか?』
答えは、出た。
後は、それを秋庭さんに言うだけだ。
「あっ」
ちょうどその時、玄関で秋庭さんに会った。
「……」
秋庭さんは話しづらそうにしている。
昨日の今日さからな。実を言うと僕も少し話しづらい。
でも、大丈夫だ。
僕はなるべく、落ち着いて言った。
「おはよう」
「おはようございます……」
良かった、返事を返してくれた。
「昨日の事だけど」
「!!っ」
秋庭さんは驚いたが、そのまま言うことにした。
どこから言ったらいいだろう。
「ちょっと色々あって、僕はもともと誰かを好きになることなんて無いはずだったんです。
でも、何でか秋庭さんが気になっちゃって。
……結局、何処が好きかって言われると、強いて言えば……」
一度息を吸って、一気に言うことにした。
「人の心を動かす所」
……なんかくさくないかこれ。
でも、確かに、昔の僕には心が無かったんだと思う。
何にも関心を示すことが出来なくて、本当に自分がここに居ていいのかもわからずに。
そのおかげで、妹にずいぶん苦労をかけてしまった。ひねくれるのも無理ないよな。
僕が始めて大量の血を見た、あの日から、友人達と出会った日まで。
秋庭さんは、黙っていた。
そして、ゆっくり口を開く。
「……ありがとうございます」
ほっと、僕は心中で胸を撫で下ろした。
「それで……私は上城君、他の人よりすごく話しやすいと思います。だから……この間の話、オーケーです……」
「?……ええ!?」
一瞬、この間の話というのが、何のことかわからなかったが、直ぐに気づいた。
これはもしかして、告白話に、オーケーサイン?