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第九話:告白と掃除当番SIDE・B〜四月の雪

ついにテストの結果が発表された。


廊下に貼られたそれを、緊張の面持ちで眺める。


テストの結果を見ることにこれほど緊張した事は無い。


上から順に名前を探す。


大河内はいつも通り、学年トップ。


秋庭さんは八番。


遙は十七番だった。


そして僕は―――




三十番:上城 蓮



「!」


一瞬遅れた後、其れが自分の名だと気づく。


目を見開いて、もう一度確認する。


何度も、何度も。


やがて、その名が消えない事を確かめると、



やった!!!



僕は誰にともなく、その場で小さくガッツポーズをした。




秋庭さんに、告、白…


その為に自分は頑張って勉強したのではなかったか。


それが、今。


目標が達成したにも関わらず、まだ迷っている自分が居るのだ。

「蓮!」

坂下と大河内がやって来て、僕の背中を思いきりひっぱたく。

「いてっ!!」

「ホントに三十番とりやがってー」「まったくだよ。君の平均点数と勉強量等から確率を計算したんだけど、全然三十番以内にいけそうになかったのにねー」

それは褒めてるのかけなしているのか?

「褒めてるに決まってんだろ」

大河内が言う。

「でも、なんでそんなに頑張ったんだよ?俺なんか百八十番だぜ」

…ちょっと待て!

一学年二百人だぞ!!

「それはすさまじいな…」

僕の呟きに、

「それより後ろに二十人もいたことの方が不思議だけどね」

「ひでー」

「きっと上城は目標の決め方が良かったんだよ。"何か賭けた"…とか」

どきり。まさかな…

「何賭けたんだよ?」

「何も賭けてないよ」

白々しい嘘。

「怪しいな〜」

「ホントに何もないっ」


三人で笑いながら、僕は意思を固めた


一回位、何かを試してみてもいいかもしれない


それに、結果がどうあれ、


僕にはこの二人がいるのだ


只その場につったって、君を見つめるだけより、


全身全霊で、当たって砕けろ


想いは口に出さなければ伝わることはない。



そして僕は、決意する。



秋庭さんに、告白しよう





「…僕と…ッ付き合って下さいっ」

「―――は?」

「え」

「すみません、掃除当番なので後で良いですか?」

「ハイ…」

「それでは」


緊張して、緊張して、少し早口で言ってしまった初めての告白。

それでも、僕の告白は彼女にとって掃除当番にも満たなかったらしい―――

秋庭さんはそのまま、小走りに走り去って行ってしまった。

元々失うものなんて、何もない。

とか思っていたけれど、これは結構ヘコむかもしれない。

それでも僕は、走り去る彼女の背中をじっと見つめていた。

その姿が完全に、僕の目の前からかき消えてしまうまで

ずっと…


僕はこんなに秋庭さんが好きだったのか…


「あーあ、カッコ悪いなあ…」


僕の前を雪が通り過ぎる。


四月の北海道


世間はもう春だというのに、


まだひっそりと、雪が降る。


白く、白く


僕の周りを雪が覆う


降り積もる雪は、どうせ何時か


溶けて消えてしまうのに


まるで、最初からそんなものは存在していないとでも、いうように


それでも雪は舞い降りる


懸命に、何かを繋ぎ止めるように


何かを伝えるかのように


空から舞い降り、地面に当たって――



砕けて消える。



僕の想いも雪の様に


降り積もって、


秋庭さんに当たって


砕けて消えてしまったのだろうか


いつか春がやって来て、


全て溶けて消えてしまうのだろうか


それはまだ、わからない。



けれど、僕にとって、彼女は春だから


そして、僕は雪じゃない



僕の想いが消えないように…


この雪に、僕は祈る。



この春最後の、雪だった。

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