第9話 橘くんの身体は、やっぱり甘い、美味しそうなスイーツの薫りがした。
すぐにもらえるものと思ったのに。
放課後に呼び出されるとは……。
いったい何なのだろう。
やっぱりめちゃくちゃ怒ってて、シメられるとかだったらどうしよう。
橘くん恐いし……。
でも、さっきは、ちょっとだけ可愛かった。
橘くんも、笑ったら可愛いんだ。
あんなに強面なのに、笑ったらあんなに可愛いなんて、反則だよ。
橘くんの笑顔、もうちょっと見たいかも。
い、いやいやいやいや、だから、何なのこの脳内妄想ツンデレ橘くんは。
消えて消えて、お願い。
これから橘くんに(二人きりで(?))会うのに。
わわわ……っ!
妄想を爆発させながら歩いていたら、また塗り壁にぶつかってしまった。
「よくぶつかるな……。それ。わざと?」
見上げると、橘くんの黒い目がわたしを見下ろしていた。
目、綺麗だな。
睫毛、意外に長い。
か、カッコ良い……かも。
もはや、恐い、じゃなくなってる。
恐いがカッコ良いに脳内変換されてしまっている。
「ご、ごめんなさい……!たちばなかんじくん……!」
「だからなんでフルネーム呼び……?」
もう、もはやその一言もなんかカッコいいんだけど。
橘くんの身体は、やっぱり甘い、美味しそうなスイーツの薫りがした。
なんで今まで気が付かなかったんだろう。
こんなに良い薫りを身に纏わせているのに。
「じゃ、行くか」
行くか……って、どこに?
やっぱりシメられるのかな、わたし……。
橘くんはわたしに背を向けて歩き始める。
背、高いな。
170センチ超えのわたしが見上げる男の子って、なかなか居ないんだけど。
それに、姿勢いいな。
す……って歩く姿、カッコいい。
そして、着いた場所は……。
え、家庭科室……?
まさかこれから作るとか?
わたしのために?わざわざ?




