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第7話 も、もしかして、橘くん、怒らせた……っ!?

 そして昼休み。


 わたしは鮫島くんと、三神くんと、陽キャグループの男子たちに混じって黙々とお弁当を食べている橘くんの元へ向かった。


「ち、ちょっとひさめ、何する気……?」


 そう言って心配そうに見つめる友人たちをよそに、わたしは橘くんに声をかけた。


「たちばなかんじくん」


 橘くんは、気怠けだるそうにこちらを振り向く。


「だからなんでフルネーム呼び……?」


 こ、恐い……。やっぱり、めちゃくちゃ恐いよ。


「お、なになに?氷姫こおりひめ西嶋さんじゃん~。相変わらず目力すごいね、まじで目力で凍れそう……!」


 またこの絡み……。

 わたしは反応に困って、完全に固まってしまう。


 こんな時、愛想笑いでもして、何か面白い返しでもできたら、わたしも、変われるのかもしれないけど。

 たぶんいまわたし、最高に『氷姫』の顔、してると思う。


「顔こっわ。だからさ、昨日言ったじゃん。西嶋さん、笑ったら可愛いのに。なんでそんな恐い顔するかな~」


「……タクミ。それやめろ」

 鮫島くんをさえぎったのは、橘くんの言葉だった。


 不思議そうに首をかしげる鮫島くん。


「その『氷姫』ってやつ。昨日、泣いてただろ西嶋さん」


 昨日、泣いてただろ西嶋さん――わたしの脳内に、橘くんの言葉が響く。


 わたしの話、ちゃんと聞いてくれてたんだ。


「えっ、まさか西嶋さん泣いてたの、俺のせいなん?……いやいや。でもこれ、俺からの優しい忠告だから。ほんとのことじゃん。実際顔、めちゃくちゃ恐いし」


「わ、分かってるよ……」

 橘くんの言葉に勇気をもらって、

 わたしは、消え入りそうな声で反論した。


「分かってる。わたしの顔、恐いのはほんとだよ。だけどこれ、生まれつきだから。笑うのも、苦手って言うか。どうやって笑ったらいいのかもわかんなくて……」


「どうやって笑ったらいいか分かんない?どーいうこと?そんなことある?普通に、笑えばいいだけっしょ」

 鮫島くんは明るい声で言う。


 そうだよね。鮫島くんみたいな、カッコ良くて明るくて、友達もたくさんいるようなタイプには、分かんないよね。


「タクミ……」


「あ、あのね……!」


 橘くんが何か言う前に、わたしは声を上げた。

 わたしのせいで、橘くんと鮫島くんの関係が悪くなってしまったら、申し訳ないから。


「お願いがあるの……!橘くんのお菓子、また、食べさせてもらえないかな!」


 きょとんとする陽キャ男子たち。


 そして、どっと笑いが起こる。


「『橘くんのお菓子』って……氷姫も甘いもの食べんの?意外~!」


 昨日の出来事を知らない男子たちは、なんのことやらと言う顔で笑っている。


「そうそう、昨日すごかったんだよ!昨日さ、西嶋さん笑ったんだよ。カンジのスイーツ食べて。氷姫笑わすって、カンジスイーツの威力ヤバくない?」


 騒ぎ始める男子たちの真ん中で、橘くんが突然立ち上がった。


 身体が大きいから、それだけで迫力だった。


 そして、物凄い負の威圧オーラが全身から吹き出ている。


 も、もしかして、橘くん、怒らせた……っ!?


 わたしは全身から冷や汗が吹き出るのを感じた。


 橘くんは無言でわたしの手を取り、廊下へ連れ出した。


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