第26話 好きすぎる。大好きすぎるよ……!
そうこうしているうちに、高校は、テスト期間に突入した。
テスト期間中は部活もお休み。
橘くんのスイーツも、しばらく食べられない……。
寂しいな。
橘くんは相変わらず、クラスではほとんど話し掛けてくれないし。
一緒にお昼とか、食べたいのにな。
放課後、家に帰ってから、わたしは、自分の部屋のベッドに寝転がって、スマホと睨めっこしていた。
せっかくLIME交換したのに、可愛いスイーツのスタンプを送り合って以来、結局、ほとんど連絡をとっていない。
――放課後、一緒に帰らない……?
その一言が、送れない。
一緒に帰る……?
無理無理むりむり……!
恥ずかしい。
付き合ってもいないのに。
電車の中は南町高校の生徒もたくさん居るわけだし。
そうだ。
土日。一緒に勉強できないかな……。
橘くんって、テスト勉強、どうしてるんだろう?
友達とかと一緒にするタイプかな……。
しそうにないな。
橘くんをテスト勉強に誘う。
それが、すごくいい思い付きに思えて、わたしは文面を必死で考えた。
長文過ぎたら気持ち悪いかな……。
なるべく自然な感じで送りたいな……。
適度に絵文字も入れて……。
打っては消し、打っては消ししているうちに、1時間ぐらい経っていた。
やば……っ。
テスト勉強しなきゃなのに……。
わたしは、考えた文面をもう一度確認して、
心臓をバクバクさせていた。
送っていいかな。
押しちゃえ、陽雨……。
いまだ、いま、押すんだ……!
ぴこん。
え……っ!?
わたし、まだ押してないはずなんだけど……。
わたしはびっくりし過ぎて、心臓が飛び出そうだった。
橘くんからのメッセージだ。
――今度の土日、一緒に勉強しない?
え……っ、え……っ、え……っ!!!?
シンクロしてる……!
わたしは、嬉し過ぎて、ベッドの上をゴロゴロのたうち回っていた。
とてもシンプルな文面だった。
橘くんらしい。
橘くん、どんな顔してこの文面打ったんだろう。
電車の中でLIME交換した時の、
強面だけど綺麗な顔を、耳まで赤くしてもじもじしてた橘くんの横顔が浮かんでくる。
そんな橘くん、想像しただけで、あの大きな身体を抱き締めたくなっちゃう。
無理だよ、もう。
好きすぎる。
大好きすぎるよ……!
好きが閾値を超えてるよ……!
――ちょうど私も、同じこと送ろうと思ってた。すごい偶然だね!土日、どっちでも大丈夫だよ!
わたしは、ドキドキしながら、慌てて返信をした。
シンクロしてたんだよってことを、一刻も早く伝えたい。
――じゃあ、土曜日にしようか。高校のヤツら来ない、いい場所知ってるから。
わたしは「了解」のスタンプを送った。
――じゃあ、8時27分に南野台駅に着く電車に、乗ってくれる?
電車の時間まで調べてくれてる。
嬉しい。
これは、橘くんと、正真正銘(?)初めての、デートだ……!
何を着て行こう……?
わたしは、テスト勉強そっちのけで、クローゼットの中を覗き込んだ。
「可愛い服とか、無いんだよね……」
ツリ目であっさり、冷たい顔。
パーマを掛けても一日で取れちゃう直毛、剛毛のストレートロング。
170センチ超えの身長。
そんな自分に似合う服って、どんな感じか分からなくて。
スカートは苦手だから、数えるほどしか持ってない。
土日はたいてい、Tシャツにデニムのパンツとかの、シンプルなコーデばかりだ。
色気、ないな……。
かと言って、今から買いに行く時間も、お金もないし……。
そもそも、橘くんの好みって、どんな感じなのかな……。
好きなタイプって、どんな子……?
付き合い長そうな桜田くんに聞いてみようかな……。
あーーー桜田くんのLIMEも聞いとけば良かったーーー。
桜田くんのクラス。
4組には、吉木くんもいるから、絶対行きたくないし……。
どうしようどうしようどうしようどうしよう……。
その日は夜中まで、クローゼットを漁り続けた西嶋陽雨でした。




