第24話 橘くんのお料理教室
「こーらー!そこの二人ーーーー!部活中にイチャイチャするの禁止!!!」
アヤノ先輩をはじめ、女子部員さんたちにこっぴどく叱られたのは言うまでもない……。
橘くんってば、シャイなのか、大胆なのか、分かんないところがある。
でも、橘くんに食べさせてもらえたの、嬉しかったな……。
それからしばらくは、パートドフリューイの試作の日々が続いた。
パートドフリューイって、つまりフルーツのグミのことだ。
フルーツ由来の「ペクチン」を使って固めるから、ゼラチンを使ったグミとは食感が全然違うけど。
……と、これは橘莞爾先生の解説。
パートドフリューイの作り方は以下の通りだ。
先日作ったキウイのピューレを煮詰めながら、ペクチン(こないだ橘くんと仕入れてきた謎の粉だ)とグラニュー糖を混ぜ合わせたものを加える。
ペクチンはダマになりやすいので、ペクチンとグラニュー糖を混ぜ合わせたものを泡立て器で混ぜながら、少しずつ加えるのがポイントだ。
さらにここに水あめを加えてから、
温度計の登場!
「温度、しっかり測ってね」
橘くんに見守られて、ドキドキしながら鍋に温度計を差す。
「温度計、鍋の底につけちゃダメだよ。ちゃんと測れないからね」
調理初心者のわたしに、桜田くんも優しく助言をくれる。
責任重大だ。
ピューレから手作りしてるんだもん。
失敗したらまた果物を剥いてすりおろすところからからやり直しになってしまう。
焦げないように木べらでかき混ぜながら煮詰めていき、
温度計の温度が108℃になったら、素早く火から下ろして、水で溶いたクエン酸(先日橘くんと仕入れてきた謎の粉その2だ)を投入。
「こっからは時間との勝負だよ!クエン酸混ぜると一気に固まっちゃうからね……!」
桜田くんの言葉がヒートアップする。
い、急がなきゃ!
固ってしまう前に、シリコンの型に流し込まなきゃいけない。
「熱……っ」
慌てたから、108℃の緑色のドロドロが指に触れてしまった。
「西嶋さん、だいじょぶ……っ?」
桜田くんが叫ぶ。
「桜田、代われ」
橘くんの手が、ふわりとわたしの手を取った。
「えっ、オレ……!?」
戸惑う桜田くんにパートドフリューイの続きを任せて、
橘くんはそのままわたしを調理台の端にある流しへ連れて行った。
「わたしは大丈夫だよ、橘くん……!それより、パートドフリューイの方が大事だよ……!」
わたしの火傷なんか後でいいから……!
「痕が残ったらイヤだろ。パートドフリューイは、失敗したって作り直せばいいだけだから」
橘くんは、わたしの指先を丁寧に流水で冷やしてくれた。
「火傷したら、とにかくすぐ冷やす。それだけで、後が全然違うから」
橘くんが言うと説得力がある。
きっとこんなことを、今までたくさん経験してきたんだろうな……。
指先に触れる流水が、冷たくて気持ちよかった。
でもそれよりも、橘くんの手が触れてる場所が、火傷しちゃいそうなんですけど……。
橘くんの手がわたしの腕に触れている。
そこからドキドキが身体中に広がっていくみたい。
「西嶋さん、だいじょうぶ……?」
別の調理台で他の味の試作をしていたアヤノさんや女子部員さんたちも心配して集まってきてくれた。
わたしは申し訳なくて赤面してしまう。
「ごめんなさい。わたし料理苦手で……みなさんの足、引っ張っちゃうかも」
「大丈夫だいじょぶ!この部活できた時、橘くん以外、みんな初心者だったから!」
みなさん、優しい……。
わたしみたいな顔面氷点下無愛想女にも優しい人たち……。
「そうそう、うちらも、カンジに怒られながら、だいぶ成長したよね~」
「カンジ、スイーツのことになったらホント厳しいから……」
ふふ……この部活って、橘くんのお料理教室って感じ。
こんな強面の先生って……ヤバ。
ピアスいっぱいだし。
「カンジ……和んでる場合じゃねーぞ……!」
放置された桜田くんがカンカンになっている。
「ご、ごめん桜田くん、ありがとう」
でもそこはさすがの桜田くん。
任されたことはきっちりこなして、
キウイのピューレは綺麗にシリコンの型に流し込まれていた。
輪切りレモンの形のシリコン型だ。
キウイの緑にいい感じにマッチしている。
「美味しそうだね……!」
「他の味も出来てるよ~!」
「イチゴと、ブドウとレモン」
みんなワイワイと盛り上がっている。
これが完全に固まったら、型から出して、グラニュー糖にまぶせば完成!
「ほんとに、もうほぼ固まってるね……。冷蔵庫に入れなくても固まるのがなんだか不思議」
謎の粉ペクチンとやらの威力はすごい。
出来上がった四色のパートドフリューイは、
赤いハート、紫のお花と、黄色と緑の二色の輪切りレモン。
並べるとほんとに宝石みたいで、すっごく可愛かった。




