第22話 付き合うってどうやるんだっけ。
翌朝学校に行くと、さっそく穂乃花に突っ込まれた。
「なんかさ、昨日ひさめと橘莞爾が二人で仲良さげに電車乗ってるの見たって人がいるんだけど……二人並ぶと絵面が恐すぎて近寄れなかったって聞いたんだけど……なんなの、やっぱり付き合ってるの?」
「うう……さっそくそんな話が……」
二人並ぶと絵面が恐すぎって、みんな同じこと言うじゃん……。
余計なお世話だよほっといてよ……。
「付き合ってないってば……。なんかいろいろあって、橘くんと同じ部活に入ることになって」
「え、なにそれ、橘莞爾って何部なの?放課後ストリートファイト部とかそう言うやつ?」
「ちがうよ、放課後ストリートファイト部ってどんな部活よ……『家庭科研究部』だよ」
穂乃花は「ん?」と言う顔をする。
「なに?家庭科、なに……?」
「家庭科研究部。お菓子とか作ったりするの」
「ちょっと待って。橘莞爾が?家庭科研究部……?」
まあ、そういう反応になるよね。
わたしだってはじめて聞いた時はそうなったもん。
「なにその部活、大丈夫なの?部活とは名ばかりの不良の溜まり場みたいな感じなんじゃないの?」
「ち、違うよ……!」
不良の溜まり場って、いつの時代の話だよ。
「橘莞爾が真面目に家庭科研究してる姿、まったく想像できないんだけど……お菓子とか、作れるの?」
「お菓子とか作れるの、じゃないよ。橘くんの作るお菓子、ほんっっっとに美味しいんだから!」
やば……思わず大きな声、出しちゃった……。
朝のホームルーム前のざわついた教室に響くわたしの声。
何人かが、「えっ」って顔でこっちを見る。
橘くん、まだ来てなくて良かったよ。
穴があったら入りたいよ。
わたしは恥ずかしすぎて机に突っ伏した。
「恥ず……」
「ひさめ……もしや、ひさめも橘くんのこと好きなの?……両想いってやつ?」
突っ伏すわたしに小声で追い討ちをかける穂乃花。
り、両想い……。
そっか、わたしたち、両想いなのか。
この状態がつまり、いわゆる両想いというやつなのか。
西嶋陽雨の人生史上初めての両想い。
「両想い」って、そんなこと、あり得るんだ。
しかも、あの、橘莞爾くんと?
クラスで一番恐いけど、実はイケメンで中身は男前な橘くんと?
大丈夫?
わたし、勘違いしてない?
でも、昨日の、電車の中の橘くんを思い出したら……。
「大丈夫?ひさめ……生きてる?」
穂乃花に肩をとんとんされても、わたしは顔を上げられなかった。
たぶんいま、顔赤いから。
「橘くんってさ、よく見たらすごいイケメンなんだよ」
「はあ……?」
穂乃花は呆れたように言う。
「それにね、なんだかんだ優しいし。二人きりになったら、別人みたいになっちゃうの」
「はいはい……てかなんなの、それ。何でそれで付き合ってないの?いいからさっさと付き合いなよ!」
穂乃花は完全に呆れていた。
だよね。
でも付き合うってどうやるんだっけ。
どっちかが告白して、じゃあお付き合いしましょうってなるのか……?
好きって言ったらいいのかな。
無理だーーーーーーー。
出来そうにない。
いや、吉木くんにはしたじゃん、自分。
吉木くんにできたのは……本当の「好き」じゃ、なかったからなんだろう。
本当の本当に好きだったら、怖くて、軽はずみにそんなこと、できないんだよ。
だって、ダメだったらそれで終わりになってしまうから。
わたしの勘違いかもしれないし。
大好きな橘くんと終わりになってしまうなんて、そんなの絶対に耐えられない。
それなら今のままの方がいい。
そう思ってしまう。
それにまだ、仲良くなったばっかりだしね。
これで付き合うは、さすがに展開速すぎだよ。
そう。
まだ、いまのままで全然いいよ。




