表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第2話 いや、泣いてたでしょ。いま

 わたしは慌てて橘莞爾たちばなかんじくんの腕の中から飛び退いた。


「ご、ごめんなさい、たちばなかんじくん……」


 橘くんは「なぜにフルネーム呼び?」とつぶやきながら、うつむいて何かを拾っていた。


 え……?


 目がバグっているのだろうか。


 橘くんの周りに、とてもファンシーなものが散らばっていた。


 オーロラ色のラッピングバッグに詰められて、パステルカラーのリボンで結ばれた……中身は、焼き菓子?


 さっき視界に入り込んだキラキラたちはこれだったの?


 もしかして、橘くんこのキラキラ可愛い小袋たちを手に持っていて、わたしを抱き留めるためにき散らしてしまったという、そういう状況?


「ご、ごめんなさい……!」


 わたしは再び謝罪しながら、必死になってキラキラ小袋たちを拾い集めた。


「どうも」


 相変わらず温度の低い声で呟きながら、わたしの差し出した小袋たちを受けとる橘くん。


「あ……これ」

 橘くんは、再びぼそりと呟いた。


「は、はひ……っ?」

 恐すぎて声が裏返ってしまう。


 橘くんは、拾い集めたキラキラ小袋の一つを差し出している。


「え?え、えと……」


「甘いもの、苦手?」


 問われて、わたしはぶんぶんと首を横に振る。


 それはつまり、わたしに一つくださると、そう言うことなのでしょうか。


 キラキラ小袋は、お友だちに配る用ですとか、そう言うことなのでしょうか。


 強面こわもて橘くんと、お友だちに配る用にラッピングされた焼き菓子。

 

 橘くんが、ファンシーキラキラ小袋をお友達に、配る?


 やっぱり脳内がバグっているのかもしれない。


「な、なんで……わたしに……?」


「いや、泣いてたでしょ。いま」


 え……っ。


 わたしは思わず、目を上げて橘くんの顔を見ていた。


 相変わらず威圧感たっぷりの目付きだけど、橘くんは、しっかりとわたしの目を見てくれていた。


 う……っ。


 だ、だめ……こんなとこで泣いたら。


 手の中に収まるオーロラ色の可愛らしいラッピングバッグ。リボンはピンク色だった。


 キラキラ小袋が、涙に滲む。


 う……っ。


 『氷姫』って呼ばれていること。


 1年生の時、そこそこ仲良くしてくれてると思ってた吉木くんにさえ、「愛想良くすればいいのに」って、思われていたってこと。


 吉木くんも、愛想が良くて可愛い女の子が好きなんだなって、気付かされたこと。


 可愛くなりたいのに、なれないこと。

 不器用な自分が心底嫌いなこと。


 いろんな気持ちがぐちゃぐちゃになって、涙が止まらなくなってしまった。


「わたし……ほんとは……『氷姫』って、呼ばれるの、イヤで……」


「黙ってるだけで怒ってるみたいとか言われるし……わたし……好きでこんな顔に生まれたんじゃないのに……」


「ほんとは、もっと、可愛くなりたいのに……」


 こんなこと言っても、橘くんを困らせてしまうだけなのに。


 橘くんは何も言わず、黙ってわたしを見守ってくれていた。


 もしかしたら、呆れられていたのかもしれないけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ