第2話 いや、泣いてたでしょ。いま
わたしは慌てて橘莞爾くんの腕の中から飛び退いた。
「ご、ごめんなさい、たちばなかんじくん……」
橘くんは「なぜにフルネーム呼び?」と呟きながら、俯いて何かを拾っていた。
え……?
目がバグっているのだろうか。
橘くんの周りに、とてもファンシーなものが散らばっていた。
オーロラ色のラッピングバッグに詰められて、パステルカラーのリボンで結ばれた……中身は、焼き菓子?
さっき視界に入り込んだキラキラたちはこれだったの?
もしかして、橘くんこのキラキラ可愛い小袋たちを手に持っていて、わたしを抱き留めるために撒き散らしてしまったという、そういう状況?
「ご、ごめんなさい……!」
わたしは再び謝罪しながら、必死になってキラキラ小袋たちを拾い集めた。
「どうも」
相変わらず温度の低い声で呟きながら、わたしの差し出した小袋たちを受けとる橘くん。
「あ……これ」
橘くんは、再びぼそりと呟いた。
「は、はひ……っ?」
恐すぎて声が裏返ってしまう。
橘くんは、拾い集めたキラキラ小袋の一つを差し出している。
「え?え、えと……」
「甘いもの、苦手?」
問われて、わたしはぶんぶんと首を横に振る。
それはつまり、わたしに一つくださると、そう言うことなのでしょうか。
キラキラ小袋は、お友だちに配る用ですとか、そう言うことなのでしょうか。
強面橘くんと、お友だちに配る用にラッピングされた焼き菓子。
橘くんが、ファンシーキラキラ小袋をお友達に、配る?
やっぱり脳内がバグっているのかもしれない。
「な、なんで……わたしに……?」
「いや、泣いてたでしょ。いま」
え……っ。
わたしは思わず、目を上げて橘くんの顔を見ていた。
相変わらず威圧感たっぷりの目付きだけど、橘くんは、しっかりとわたしの目を見てくれていた。
う……っ。
だ、だめ……こんなとこで泣いたら。
手の中に収まるオーロラ色の可愛らしいラッピングバッグ。リボンはピンク色だった。
キラキラ小袋が、涙に滲む。
う……っ。
『氷姫』って呼ばれていること。
1年生の時、そこそこ仲良くしてくれてると思ってた吉木くんにさえ、「愛想良くすればいいのに」って、思われていたってこと。
吉木くんも、愛想が良くて可愛い女の子が好きなんだなって、気付かされたこと。
可愛くなりたいのに、なれないこと。
不器用な自分が心底嫌いなこと。
いろんな気持ちがぐちゃぐちゃになって、涙が止まらなくなってしまった。
「わたし……ほんとは……『氷姫』って、呼ばれるの、イヤで……」
「黙ってるだけで怒ってるみたいとか言われるし……わたし……好きでこんな顔に生まれたんじゃないのに……」
「ほんとは、もっと、可愛くなりたいのに……」
こんなこと言っても、橘くんを困らせてしまうだけなのに。
橘くんは何も言わず、黙ってわたしを見守ってくれていた。
もしかしたら、呆れられていたのかもしれないけど。




