表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/24

第16話 俺のことなんだと思ってんの、普通の人間だから。

「家庭科研究部、入りませんか!?」


 ……えっ?


 てっきり、わたしの彼氏に近付かないでって言われるのかと思ってたのに。


 予想とは真逆のことを言われて、わたしは反応に困った。


「あんなカンジ、はじめて見たんだよね。はたから見たら、いつも通りの仏頂面ぶっちょうづらかもしれないけど、明らかに張り切ってて。カップケーキのデコも、気合い入りまくりだったし」


 張り切っててって……それは……わたしのために?


 わたしの胸に、ふわりと何か、暖かい気持ちが湧いてきた。


「カンジって、見た目あんな感じじゃん?知らずに入った人からしたら、『お菓子づくりとか似合わない』とか、『イメージ崩れる』とか、基本マイナスのことしか言われないから……そのせいで、親にも反対されて、一時、お菓子づくりやめちゃったこともあるぐらいで。だからね、嬉しかったんだと思う。あんな風に、西嶋さんに喜んでもらえて」


 わたしの心の中に、橘くんがふと見せてくれた笑顔が咲いた。


 わたしも、嬉しかったな……橘くんの笑顔が見られて。


「だからね、カンジのためにも、良かったら、部活、入ってくれないかな……!」


 それは、分かるんだけど、でもこの人、何でわざわざそこまで……?


 その時だった。


 お弁当を広げる私たちの背後に、巨大な塗り壁が現れたのは。


 た、橘くん……っ!?


「アヤノ……なに勝手に適当なこと話してる……」


 橘くんからいつもの負のオーラが放たれている。


 顔が、恐いよ……っ。


 怒ってるよ……橘くん……っ。


「アヤノが西嶋さんを連れてったって聞いたから探しに来てみれば……」


「感謝しなよね、勧誘だよ勧誘!西嶋さん、家庭科研究部にスカウトしてたとこなんだから……!」


 アヤノさんは、ニコニコしながらわたしに身体を近付けて、親しげに肩を寄せながら言う。


「カンジも、嬉しかったんでしょ。氷姫の、可愛い笑顔が見れて」


 橘くんはむすっとした顔をして、わたしたちの前に立った。


「俺のセリフをうばうなバカ姉貴……!」


 えっ……バカ姉貴……?


 わたしはびっくりして二人の顔を見比べる。


 そう言えば、睫毛の長い綺麗な目が似てるかも。

 アヤノさんって、橘くんのお姉さん!?


 び、美形姉弟(きょうだい)だ……!


「ごめんねー、そう言うことで、邪魔モノは退散しまーっす……!」


 アヤノさんがピューっと走って行ってしまったので、わたしはどぎまぎした。


 橘くんと、二人きりになっちゃった……っ。


 しかも、橘くん、怒ってるし……。


「あーーーーーークソダセーーーー……」


 橘くんは頭をぐしゃぐしゃきながら、わたしの隣に座った。


「アヤノの奴、マジで余計なことしてくれるよな……」


 怒ってるのかと思ったら、なんか、落ち込んでる……?


「自分で言わなきゃなんないこと、おねーちゃんに言ってもらってるクソダサい弟の図、じゃね?これ、完全に……」


 橘くんは落ち込んだ姿勢で頭を抱えたまま、顔だけわたしの方を向いて言った。

 そんな橘くんも可愛い。

 

「西嶋さん」


 橘くんはふと真面目な顔になって言った。


 な、なに……?

 どうしよう、急にそんな顔されたらドキドキしてしまう。


「良かったらまた、俺の作ったもの、食べてもらえませんか」

 

 そんな……。

 何でなんだろう。

 何で橘くんは、わたしなんかのために、こんなに一生懸命になってくれるんだろう。

 

「わたし、よく考えたらかなり気持ち悪いこと言ってたし……って言うか、気持ち悪いことしかいってないし、まさか、橘くんにそんな風に思ってもらえてるなんて思わなくて……」


「いやいや、普通に嬉しいよ。俺のことなんだと思ってんの、普通の人間だから。自分の作ったもの、あんなうまそうに食ってもらえて、しかも『泣くほど美味しい』とか言ってもらえて、喜ばない人間いる?」


 普通の人間……!


 そうだよね……。

 わたしってば、橘くんのこと、見た目だけで恐そうな人って、先入観せんにゅうかんだけで勝手に決めつけてた。


 わたしのこと勝手に『氷姫』って呼ぶ人たちと、同じことしちゃってるじゃん。


「ありがとう、わたしも、そう言ってもらえて嬉しい……!」


 また、橘くんのお菓子、作ってもらえるんだ。


 その時、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。


「うわ、ヤバっ!もうこんな時間?次の授業なんだっけ……!教室、戻らなきゃだね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ