13.
「魔力制御は、なんて言うか自分の器を意識するんだよ。魔力が入ってる器。わかるだろ?」
ジェインが言うことはなんとなく理解できる。
魔力を感じるようになったら、自分の体とは別に魔力の器があるような感覚がある。
きっと、これが人が持つ魔力の量なんだろう。
問題なのは、シゲルの魔力はそこから絶えず溢れ出しているということだ。
「シゲルは魔力視の能力があるんだな。さすがエイクを助けただけある」
「魔力って、普通は見えないの?」
「うーん。感じることはできるけど、見ることはできないかな?体温みたいなもんで、こいつの体熱いなとかはわかるけど、どのくらい熱いかなんてわからないだろ?」
ジェインの例えはとてもよく分かった。ついでに、魔力視の能力が稀有なこともわかった。
「シゲルの魔力が漏れているってことは、入ってくる魔力の量が多すぎるんだよ」
「入ってくる……」
そう言われてやっとシゲルは完全に理解ができた。
魔力とは循環しているのだ。呼吸と同じで。
沢山息を吸えば沢山吐き出さなければならないように、使う以上に魔力を体に取り入れている。
それが分かると簡単だった。
「できた――」
2日目には、シゲルの体からは靄のような魔力は出なくなっていた。
「じゃあ次は身体強化だな」
ジェインがシゲルを教えていると聞いて、まだ狩りに出れなくて暇を持て余していたエイクが、様子を見に来ていたのだ。
「ああそうだな。身体強化はエイクの方がうまいんだ。俺は弓使いだからあんまり身体強化に頼らないし」
「え、その流れって僕は前衛系の役割になるってことだよね?こういう時って普通君から弓を教わるんじゃないの?」
「ごめん。ちょっと何言ってるかわからないや」
ジェインの笑顔は、とても素直だった。
「筋肉に力を入れる時に魔力をぐっと入れるんだよ」
エイクの説明はとても理解ができなかった。
ジェインに魔力制御を教わるために、アーノンからエイク達にシゲルの事情を説明してもらったが、エイク達は驚くほどすんなりと受け入れてくれた。
そして、パージとアーノンが狩りに行く間、交代でシゲルの修行を付けてくれると言い出したのだ。
それを聞いた時、シゲルはなんとなく嫌な予感がしたが、予感というものはあたるものだ。
「とりあえず実践してみたらわかるだろ」
「は――?」
「俺は魔力を使わないでやるから、お前は身体強化をして躱せ」
「躱せって――なんでお前は剣を構えてるんだ」
言い終わる前に、シゲルのすぐ左側を剣が掠った。
「ちゃんと躱せよ。次は当てるぞ」
「そんなもん避けられるわけないだろ!殺す気か!」
シゲルが怒ると、エイクは少しだけしゅんとした顔を見せたが、思いついたように剣を置くと拳を構えた。
「素手なら大丈夫だろ」
エイクは脳筋だった。
結局、その日はエイクに殴られただけで終わった。
パージ達が帰ってくると、また風呂に行き、パージに頭を洗われたが、抵抗する気力も体力も残っていなかった。
「随分殴られたな」
シゲルの体の痣を見ながらパージは楽しそうだ。アーノンも笑っている。
「あいつ加減してるって言ってたけど、絶対嘘だよ」
シゲルが愚痴ると、アーノンはシゲルの頭に手を置いた。
「明日は休めばいい。丁度村の奴らからもスクロールを作って欲しいって頼まれたんだ――頼んでいいか?」
そう言えば、粉挽小屋であった男がそんな事を言っていた。
「いいですけど、僕スクロールの作り方なんて知りませんよ?」
「頼まれてるのは着火と灯りのスクロール、あと攻撃用だな。どれもうちにあるから帰ったら見てみて、作れるようなら頼めるか?」
「わかりました」
アーノンには衣食住を面倒見てもらっている。あの魔獣の素材が世話代だと言っていたが、記憶にない分はノーカンだ。
少しでも役に立つのなら、そしてエイクから逃げられるのなら喜んで引き受けたかった。




