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きらめきの乙女は闇に抱かれる  作者: ももんが☆


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2.出会い 怪しすぎる美貌の男

リリアは王国の大通りをさくさくと家路に向かっていた。


「ねぇ、君はいくつかな?―――僕の、お手伝いさんを探しているんだ。

それに、君、女でしょ?化けるの上手いね」


リリアは久々の買い物に、うきうきと心弾ませていた。

といっても、古いパンくずのつまった袋だけ。


そんなおり、やたらにこにこした、きれいな男に、声をかけられたのだ。



(いままで、バレたことなかったのに、なにこの人)


内心ぎょっとしたが、何も気づかなかった風を装う。

青年の横を通り過ぎようとしたが、通せんぼをしてくる。


わたしのフードに手をかけられそうになって、はねのけようとした手をつかまれた。

「やめて」という声は、のどの奥にこおりつく。


青年の眼光のするどさに、息をのんだ。


ひっ!

 

昏い水底をみるような、ブルーグレーの瞳、その暗闇の奥で、強烈な魂の輝きが宿っている。

吸い込まれそうだ。


まるで夜を統べる神話の神々のよう――――

 

 

リリアは腕をつかまれたまま、つかの間放心していたかもしれない。

あとから後悔した。これは―――大失態であった。




それから、なぜか、青年はリリアを熱心に紅茶館にさそった。


(そっちの人かしら・・・)


大通りで、こんなきらきらしい男と少年がもめているのはいただけない。


そして・・・

流されるままに、紅茶館で、向かい合ってハムサンドを食べていた。


(美しすぎる男は目の毒ね)


まわりの女性客はきゃぁきゃあ言って、青年をみてはうっとりしている。

その連れの男性からはものすごくにらまれていたが・・・。


わたしは、少年に扮していたので、女性陣たちからは、ちょっと別の意味で勘繰られていたかもしれない・・・。


(いや、そういうのとちがう・・・って言いたい。

 でも、女とばれるのも、それはそれで、危険かも・・・)


きれいな長い指は紛れもなく男の手で、銀の指輪にはダイヤがはまっている。

その長い指で、髪をかきあげると、まわりから、きゃあと声があがる。


(集中して、たべられない。せっかくの、ごちそうななのにぃ)


「おいしいですね。ここのサンドイッチ。ごちそうになっていいのですか」

わたしは、なるべく、低い声で、お金はださないよ!と念を押す。


久々の柔らかいパン、香り立つ紅茶・・・、うっとりしてしまう。


(ミシィにも、こっそりもってかえろうかしら)


食べかけのハムサンドをハンカチに包むべきか、ものすごく悩んだ。

でも、こちらを観察している青年を前に、さすがにそれはあきらめた・・・。


目の前の男は、わたしの口元をみて、目を細めてうっすら微笑んでいる。


ゾクゾクッ


(なんで、美の化身がわたしなんか前に座っているんだろう。こわすぎるっ)


ちょっと、うるうるして、ぷるぷる震えた。


「かわいいね。たくさん食べて。僕のおごりだから」にっこり。


またしても、となりの席から黄色い悲鳴がする。腰に来る実にいい声にかじりついたまま目を見開く。

この顔と美声、反則だ。


どうして、こんな美青年が下町にいるんのよ。

目の前の現実についていけない。


(紅茶を飲む姿も様になってるし。この人どこのぼんぼん?)


「ははっ、どうもありがとうございまふ」


わたしは、現実についていけなくて、唇をかんだ。


「じゃぁ、決まりだね。僕のおごり分、はたらいてもらおうかな」

さらりと、決定事項をのべる横暴ぶりに、空いた口がふさがらない。


全力で否定したいが、貧乏人の性。


わたしはこくりとうなづいた。


ああ、サンドイッチと紅茶でつられるなんて。

どこのこどもよ!


その青年との帰り道、彼は言ったのだ。


まさか、「体で返せとか言わないわよね」とびくついていたわたしに、

肩を抱きながら、「僕の働いている館に侍女として働きに来ないか?」と、ささやいた――――。



リリアは、そのとき、とても困窮していた。こんな、顔だけはいい、よくわからない男の言うことなど危険た。絶対契約などしてはならない、と思っていたのだけれど。


あの、ブルーグレーの瞳を見ると、なぜか、「はい」と答えていたのだ・・・。



◇◇◇

 


お仕着せにエプロンをつけるた侍女たちとすれ違う度、軽く会釈しながら、ワゴンを押していく。


新入りのリリアにもここの従業員たちはとてもやさしかった。


(うん、とてもいい職場だわ・・・)


今年で16歳になるというカーラお嬢様の所へ運ぶ。


ワゴンにはお嬢様のお好きなスイーツセット、サンドイッチ、スコーンなどが、少しずつ乗せられて、ガラスケースに収まっている。紅茶は部屋でいれるため、ポットとお水、繊細なティーカップを載せて、足音を立てないようにそっと歩いていく。


廊下は延々と続き、窓越しには木々の緑が茂っている。外は段々暑くなってきたせいか、王都の街並みはうっすらもやがかかっている。


お嬢さんのお部屋は日当たりのよいサンテラスを持つ3階にある。緑あふれるバルコニーには小鳥が訪れている。


(きれいな小鳥ね・・・。ここは、お城に近いから、森から訪れるんだわ)


リリアは目を細めて、3階の窓から、庭におかれた水盤で水浴びする色とりどりの小鳥を眺めた。


コンコンコン


「お嬢様、紅茶をおもちしましたわ」

わたしはなるべく明るく、そして、新入りらしい無邪気さでお嬢様に、訪問をつげる。


お仕えしているお嬢様は私と同じ年齢で、そこはかとなく親近感がわく。

おしゃべり相手にうってつけ、ということらしく、日中はずっとご一緒している。


「いらっしゃいな。ねえ、さきほど、お友達からお手紙をいただいたの!王宮のデビュタント仲間のシンシアからよ。彼女はあのあこがれのゴア先輩にエスコートしてもらうのですって!」


ふんわりとした髪に愛らしい人形のように整ったお顔立ちで、目はまるく、くるくると動く。まるで子リスのようで、うれしそうにとびはねているのが、それに似ている。


カーラお嬢様はデビュタントを控え、気もそぞろなのだ。誰にエスコートされるかは、女子たちのあいだではちょっとした競争で、できれば素晴らしい殿方と歩きたいし、いっしょに踊りたい。


わたしは、紅茶の準備をするため、お湯を沸かし始める。


「それは素敵ですわね。シンシアさまもお美しいのでしょう。まるで物語の中の挿絵みたいですわね」

わたしは、なるべく憧れている、という感情を表に乗せて、うっとりとつぶやく。


「あらぁ!あなたもきれいな人が好きなの?――でも、ダメよ。ジョシュア様は渡さないんだから」

お嬢様はわざと怒ったようにみせかけて、いたずらっぽく笑っている。


「そんな、わたしはみているだけで、おなかいっぱいですわ!お嬢様はジョシュア様にとてもお似合いですもの!きっと会場でも注目のまとですわよ」

わたしは、首をふるふるして、おもいっきり否定する。いやだろう・・・あんなよくわからない男―――。


そう、なんとお嬢様のおっしゃっている「すばらしいエスコート役」が、あの、うさんくさい青年であると聞いた時には卒倒するかとおもったが・・・。


夢見る乙女はこわい・・・。


(あれは、普通じゃない生き物だ)


そう、リリアの本能が告げている。


「ねえ、リリア、今日はどのドレスがいいかしら?―――彼が贈ってくれたクリーム色のドレス?うーんでも、こちらの薄紅色のもいいしぃ、―――ね、リリアはどちらがいいとおもう?」


 無邪気に問いかけるお嬢様は小柄で、人懐っこい笑顔をわたくしに向けてくれる。あんまりかわいいので、つい口元がほころんでしまう。


「そうですわね。お庭の白薔薇が満開ですから、白いキャンパスに薄紅色のドレスは映えますわよ!お庭にジョシュア様をお誘いすれば、カーラ様はバラの妖精にみえますわ!」


「まぁ、そうね!わたしがジョシュア様の妖精になってみせるわね!」


ドレスをもったまま、くるりとターンする。ドレスの裾が、ふんわりとひろがって、はじける笑顔はとても初々しい。


この国で有名な創世神話。


カーラお嬢様とジョシュア様のお庭での出会い。


白薔薇の咲き乱れるお庭に座られたお嬢様を見つめるジョシュア様・・・、彼がどんな反応をするのか、今から楽しみだ。


私たちは、目くばせし合って、軽やかに笑いあった。


―――そう、お嬢様とジョシュア様はとてもお似合いで、まるで神話の王子さまと乙女とのストーリーそのもの。


(うーんと、かわいく着飾ってもらわなくっちゃ!)


わたしはいそいそとドレスの支度を手伝い、お庭のセッティングを先輩の侍女のみなさまにお願いした。



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勇気を出して(^^)/~ ぽっちとよろしくお願いいたします!

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