16.キスは覚悟のあじ
「助けは来ないよ」
おぞましい宣告に、わたしはのどをひりつかせて、あえぐ。
「わたしの妃になれ」
(いや!こんな、こんなはずではなかったのに)
恐怖と絶望に、涙がこぼれおちていく。
その涙すら、愛おしいという風に、王太子はくちづけで攫い、そして涙のつたう頬に、そして、唇に・・・、熱い息を吐きながら、狂おしい口づけを降らせる。
(ああ!もう――――リリアであった自由な暮らしにはもう戻れないの? でも―――、どうしても、このままで、すべてを奪われるのは耐えられない)
ごめんなさい。ジョシュア様。―――だって、楽しかったの。うれしかったのだもの。あの生活は。まずしくても、一人で、自由に生きていけるのはとても、すばらしくて、本来の自分には許されざる自由で、―――でも、本当はまやかしの日々だとわかっていた。
「ごめんなさい」声はかすれて、言葉をきくものはいない。
(そう、わたしは、キンドリー様とおなじ。この身に流れている血はまぎれもなく、王族の血だから・・・)
「っはなしなさい!」
わたしは目を見開くと、皇太子に命令した。
「そうよ、わたくしは現国王と妖精といわれた母の娘よ。あなたは、きまぐれにでも、わたくしを妃とすることすらできないわ」
口づけしようとしていた、王太子は少し離れると、口元をゆがめてわらう。
「ふーん、そう。でも、この秘密をばらしたらどうなるかな・・・。あなたは、それをばらされなければ、今まで通りいきていけるんだよね」
王太子の瞳にねばりつくような執着が浮かんで、後頭部を抑えられたかと思うと、手荒なキスを与えられた。
何度も、角度を変えて、唇をはう、熱いものは舌だろうか、恐ろしくて、体がすくむ。嫌悪感が這い上がってきて、抵抗しようとするが、息がくるしきなって、頭がもうろうとしてくる。
わたしが力つきて、王太子の舌が口腔内にわりこんできそうになる。
(いままでどおり?このまま、流されてしまえば・・・いいの、リリア。わたしはこの男と一緒に生きていけるの?)
『いやよ!』こころの中から、感情がわきおこる。
最後の抵抗として、舌にかみついてやろうとしたら、やっと離れてくれた。
肩で息をする私を、「わたしが次の王だ。あなたはわたしの妾妃になるんだ。―――さもなければ、あの男を殺す」また、ぐい、と抱き込まれて、骨が折れそうなほど、抱きしめられる。
わたしはあまりのことに目の前が真っ白になり、絶対につかってはならないといい諭されていたのに、怒りが爆発して、隠していた力を、ついに開放しようとした。
けれど、皇太子に充て身をされ、わたしはあっけなく、気を失った。
(ああ、ジョシュア様・・・)
◇◇◇
突然消えた、皇太子の姿に会場は騒然となる。しばらくして、皇太子は先に下がっていた皇太子妃とともに、会場にあらわれると、「心行くまで楽しんでほしい」とだけ、告げて、妾妃候補たちを残して、会場を後にした。
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