10.プレゼントには気を付けて!
するするとプレゼントを開けるジョシュア様はとてもうれしそうで、渡してよかったな、とおもう。
箱をそっとあけると、目を丸くされた。
つまみだしたのは、ネズミのぬいぐるみだ。
「? 僕は猫じゃないよね?なぜ、このチョイス?」彼を驚かせることができて、わたしは、久しぶりに、軽やかに笑った。
「ふふふ、それはミシィが大好きなおもちゃですのよ!これで、ミシィとの仲はばっちり!わたしがいなくても、ふたりでなかよくできますわよね」
わたしは、ミシィがジョシュア様を警戒しているの知っていたが、そこまで仲良くなる必要なないか・・・と思っていた。けれど、ここ最近、ジョシュア様に冷たい態度でのぞむミシィをみて、今晩も別室での食事会となってしまったことを少しばかり残念に思っていたのだ。
(うん!これできっと仲良くなれるはず)
わたしは期待に胸をふくらませ、ジョシュア様をみると、彼はなんだかうっとりと、ねずみにほおずりしていた。
(! いいいいやああぁ、それは、人間を喜ばせるものではないのっ!)
「いいかおりがする。君のかおりだ」目が光っていて怖い。わたしはおもわずあとずさった。本能が、逃げろといっている。
いくら、切れ長の目で美しいお顔でも、かわいいぬいぐるみにほおずりする男はちょっと目の毒だ。
「おほほほ・・・、お料理が冷めないうちに、お召し上がりくださいな」
わたしは、さっきの奇行をみなかったことにして、ジョシュア様を席にいざなった。
(いまの光景が目に焼き付いて夢にでそうね・・・)
しゃきしゃきのサラダを取り分けて差し出す。庭で育てているオレガノドレッシングをかけてジョシュア様とわけていただく。
「ふふ、うーん、おいしい!やっぱりサラダはこうでないと」口の中で、みずみずしい甘みがはじける。わたしのこだわりは冷たい水でしゃきしゃきにすることである。
道端に生えていた雑草をゆがいて食べていた時代がなつかしい・・・。
「ああ、おおいしいな・・・。このドレッシングは君の考案かな?」
「? ――そうですよ!野草をおいしくいただくために、いろいろ試しましの。ほほほほ」
(空笑いが、つらい・・・)
貧乏人の知恵というやつだ。野草は風味豊かで、ちょっとやそっとのドレッシングでは負けてしまうから。かなりパンチの効いた風味に仕上げている。
「あ、このミルクシチューもいい風味だ。これはタイム?ローズマリーかな?」
気持ちいいほど、ぱくぱく食べ進めるジョシュア様をみていると、なんだかうれしくなってくる。
「そうですよ~。ミルクってちょっと苦手なひともいるけど、ハーブをいれると、すごっくおいしいくなるんですの!」
心の中で、「毎日ミルクがゆだったからな・・・」と付け足す。なんといっても、飽きるのだ。
「うんうん、これなら、食堂でだされてもいけるよ。君は料理の才能もあるんだね・・・」
ジョシュア様のほんのり上気した頬と、やさいい笑顔に、なぜかうれしさに心が震える。
「あ、は、はい?そんな、これは、主婦のみなさまなら普通のお仕事ぶりですよ。ささ、こちらの蒸し鶏もどうぞ!」わたしは、照れくさくなって、本日のメインを差し出した。
二人と一匹で一羽丸々を分けて食べてることに・・・といきたかったが、予算の関係一切れずつをお皿に盛る。ぱさぱさしがちな胸肉もヨーグルトに漬けてから蒸したので、しっとりと仕上がっている。
(うん、これなら、お客様にもよろこんでいただけるレベルね!)
「っ!おいしいな!こんなにうまい鶏料理ははじめてだよ。こってりしたソースで、鳥の味がしないとか、ゴムみたいな肉に何の味かわからなくなるような、豆ソースとか食べたことがあるが、・・・うーんこのソースはチーズかな?」
「あ、わかります!?それチーズをとかして、ミルクで滑らかにしてるんです!ぱさぱさしがちな鶏むね肉もおいしくなるんですよ!―――そして、このシチューのベースは鶏肉を蒸した時にでてくるスープを使ってるですっ」
わたしは、味のわかるジョシュア様につい、熱弁をふるってしまった。
ひさびさの食材に、実は貧しかった時代に手を出せなかった幻のレシピたちを復活することができて、感無量であった。
「―――なんというか、君、すごく不思議な娘だよね?侍女の仕事も完璧だったし、貴婦人役もできる。それに、この料理はプロ並みじゃないか。・・・お店出せるよ」
なぜか、ジョシュア様はしみじみとわたしのスープに目を落としながら、語った。
「うん?そうですか、このくらいあたりまえですよぉ。ほほほほ」
わたしは、貴婦人風のお上品な笑いでごまかした。
(あぶないあぶない、もう少しで、今度は、食堂の料理係に推薦されるところだったわ!)
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