第7話 ポーション
私は1人で、バルト山を越えた場所にあるダンジョンに向かっていた。
ギルドで引き受けた仕事、レッドドラゴンを討伐するためだ。
そして思う。
彼女の事が気になって仕方ない。
怖いもの知らずで、負けず嫌いで、まるで1年前の私のよう。
でも彼女は、私とパーティーは組めない。
もし私とパーティーを組めば、彼女を危険に巻き込んでしまう。
彼女は無謀だが頭はいい。
数秒間の短い戦いだったが、それでも充分力の差はわかっただろう。
レベルの違いを、そして、魔法が使えないと言うその意味をー
きっともう諦めるはずだ。
なんて事、どうせ考えているんでしょう?
「はあっ、はあっ―
やっと追いついたわ。
あなた、歩くの、速いのよ。」
「えっ!!」
私は、息を切らしながら、杖を付いて歩いている。
ようやくエレスに追いついた。
「マリー!!
あなた、どうしてここに!!」
「お金を払ってギルドの人間に聞いたのよ。
あなたの行く先を。」
「あなたのレベルと、進む速度や体力じゃ、私には追いつけないはず。」
私はスピードポーションを取り出すと、一気に飲み干す。
スピードポーションとは、足の速さなどのスピードのステータスが向上するポーションの事である。
「ふうっ、これで、100本目のスピードポーションよ。」
私はそう言ってボックスから大量の空き瓶を落下させる。
「滅茶苦茶だわー」
エレスは怪訝そうな顔をする。
「帰りなさい!!ここはあなたのような娘が来るところではないわ!!」
「嫌よ。あなたが駄目だと言ってもついて行くわ!!」
エレスはこれ以上話しても無駄だと悟ったのか、振り返って走っていく。
その後、私も走って追いかけた。
バルト山は険しい山道だ。
途中で何度も転んで、ケガをした。
体力を失って呼吸困難になったり、心臓麻痺で倒れそうになったりしたが、そのたび事に治癒系ポーションを使って回復した。
吊り橋では落ちそうになった。
崖からも落ちそうになった。
断崖絶壁ではエレスが魔法陣と見えない足場を出現させて、その上を跳躍を繰り返してあっという間に登った。
私はボックスから、引っ掛ける金属の先端付きのロープを投げて、頂上にそれを引っ掛けた。
そして、力が強くなるドリンクアイテム、パワーポーションをイッキ飲みする。
力が強くなった私は、ロープを両手で掴んでよじ登って行く。
それからしばらくして、ようやくダンジョンの見える場所に到着した。
はあっ はあっ はあっ
エレスもさすがに少し息切れしていた。
彼女も自前のポーションを飲む。
「わかったわ!!私の負けだわ!!
もう今日は帰りましょう。」
「帰る?何言ってるの。これからダンジョンを攻略するのよ。
あなたが帰っても、私は1人でもダンジョンを攻略するわよ。」
「な、あなた、何言ってるの!?
本当に死ぬわよ!!」
「安心して、私は1度死んでるの。
この程度の試練は、この数年間の地獄の猛特訓にくらべたら遊園地のジェットコースターにもならないわ。」
そう言って、私はエレスの前を通り過ぎていく。
エレスは意味がわからず困惑する。
エレスは私を止めようと手を伸ばすが、彼女も精神的にかなり疲れてるのか、
私の彼女を手に入れようとする執念深さに
根負けしたのか、私を止められなかった。
今度はダンジョンの入口に向かう私を彼女が追いかけて来る。
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