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第6話 衝突

 次の日、私は酒場に行った。

 彼女はもう来るなと言ったが、それでも足を止める事はできなかった。

 この小さな胸にある微かに燃え始めた情愛の灯火を、消すことは出来なかった。 酒場のある建物の付近で、ばったり昨日の戦士に出くわしてしまった。

  「あ、アベルさん。」

「お、おまえは」

「あ、あのアベルさん。昨日は本当にゴメンなさい。」

 私は素直に頭を下げて謝った。 実際に悪かったのは私だと言うこともあるが、エレスの顔を立てておきたい。

  折角エレスがとりなしてくれたのだから、その好意を無駄にはしたくない。

「私は、別に皆さんにケンカを売りたかったんじゃなくて、本当は、ただ、パーティーメンバーに入れてもらいたかっただけなんです。でも、ゴメンなさい。」

 そう言って、私はもう1度深々と頭を下げた。

「お、おう。俺も少し、酔っ払ってたからな。 エレスに冒険者報酬6か月分の金貨も貰ったし、これでチャラだぜ。」

  そ、そんなに。 そう言って、アベルは照れながら、バツが悪そうに頭を描いて出ていった。 どうして見ず知らずの私を助けるために、そんな大金を出してくれたのだろう。 そして、その後の昨日の態度。 酒場に入ると、いっせいに視線が私に向いた。

  「おお、おまえはマリー。よく来たな。 近くの席にいる魔法騎士の冒険者に、私は話しかけられた。 おまえ、この街じゃ凄い有名人だぜ。 エレスといい勝負だな。」

  アハハハ 私は苦笑いをした。

 その後、私は酒場の人間に片っ端からエレスの事を聞いて回った。

  今どこにいるのか?

 彼女は何者なのか? そしてわかった事は、彼女はエレス・フランデル、15歳。

 どこから来て、何者なのか?それは誰にも分からない。

  いや、それが本名であるかどうかも分からない。

  1年前に突然フラリとこの街にやって来て、冒険者をはじめたらしい。

 実力は若干15歳で街の冒険者の中でもトップクラス。

  幾つものパーティーが彼女に勧誘を掛けてきた。

 だが、彼女はその勧誘を全て断り続け、誰とも組まず、いつも1人で戦い、行動する。 孤独で孤高のソロプレイヤー、それが皆が彼女にもつ印象である。

 そして、次の日冒険者ギルドに出掛けると、彼女に会った。

  彼女はギルドの建物から出て行く所だった。

「あなたは?」

「探したわ、エレス」

「何?もう来るなって、何度も言ったでしょ、いったい何の用? 言っとくけど、お礼だったらいらないわ。」

 エレスが予想通りの、無愛想な対応をしていきた。

「私の名はマリーよ、エレス」

 これから友達になるんだ。

 私の名前を覚えて貰おう。

「あなたの名前なんて、どうだっていいわ。」

「いきなりだけど、私は、あなたとパーティーを組むわ」

「はあっ、あなた、何言ってるの? どうして私があなたとパーティーを組まなきゃいけないの? よりにもよって、あなたみたいな弱い 子と。」

「それはどうかしら?私は充分に強いと思うけど。」

  今日の私はこの前のようにはいかない。 彼女が拒絶しても、私をどれだけ否定しても、喰らいついて、私のパートナーになってもらう。

 エレスが怪訝そうな表情をする。

「あなた、誰ともパーティーを組まないそうね。 それはどうして?」

「あなたには、関係ない。」

「関係あるわ。 もし、私たちが組めば、きっと大半のパーティーよりも強くなれる。 どんな魔物でも退治できるはず。 そして、2人で組めば、生き残れる確率も2倍に、いや、4倍になる。 あなたも、私も。」

「私と組むには、力不足だって言ってるのよ。 それともこの私と対等に戦える能力があるっていうの?」

「 ええ、もちろんよ。 私は、この街の、いえ、この世界の、誰よりも強い冒険者になってみせるわ。」

  そう、切磋琢磨して、お互いを高め合う。その意味でも、彼女は最高のパートナー候補である。

「ふふっ、相変わらず、あなたには驚かさせるわね。 その自信過剰な精神と、夢ばかり見ている楽観主義が、私は嫌いなのよ。 そういえば、私言ったわよね。」

 もし、今度あなたを見かけたら、私はあなたを許さないってー 昨日彼女が最後に言った言葉を思い出した。

  それと当時に、戦慄が走る。

  全ての言葉を言い終わる前に、エレスはナイフを左手に持ち、私に高速で切りつけてきた。

 私は瞬時にアイテムボックスからナイフを取り出すと、右手に持ちエレスのナイフを防御する。

  キィイイーン 2人のナイフが火花を散らし、私のナイフが弾き飛ばされる。

  技術が同じなら、パワーレベルで差がつく。

 まずい、すぐに新しいナイフをー そう思った刹那、それと同時に、エレスはもう片方の手のひらを私の胸に叩きつける。

  エレスの手のひらから、風の魔法が放出され、私は後方へ吹き飛ばされる。

 私はギルドの向かいにある武器屋の壁に叩きつけられる。

 さらにエレスは、魔法陣を展開すると、炎の魔法を発射した。

 私はすぐさま態勢を立て直すと、アイテムボックスから盾を取り出す。

 ファイアーボールが私の目の前で爆発する。

 衝撃で、盾を持図つ手が痺れる。

 それに、炎の魔法の熱が伝わる。

 そう何発も防げないだろう。

 こないだのブルーフロッグの口から粘液とは違うのだ。

 エレスは?

 私は周りを見渡すと、彼女は人混みに紛れて、その姿はもうどこにもいなかった。

 

数ある作品の中から、この作品を選んで頂いてありがとうございます。

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