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最終話 冒険と友情

帝国に勝利した私たちは、リバンドン王国に帰還した。

私たちの軍隊は、街の中央通りを通って王城へと向かっていく。

街の中央通りには、リバンドン軍を称えるため、大勢の王国の国民たちが集まって来ていた。

そして、リバンドンの姫君であるエレスが通ると、溢れんばかりの大歓声が沸き起こる。

 今やエレスはこの国の英雄であり、希望の星である。

 私は、疲労困憊の中、国民に手を振るエレスを見つめる。

 ふいに、エレスはどこか遠くの人になってしまった気がした。




リバンドン王城に到着すると、城内で、エレスが言った。

「これから私にはやる事があるから、あなたたちは宮殿に行って休んでて頂戴」

そして、側近を集めそれぞれに指示を与えていた。

 私もしばらく何かできる事はないかと考えたが、たぶん今は邪魔になるだけなので、休ませてもらう事にした。

 

 侍女に宮殿の寝室に案内されると、緊張の糸が切れた私は冒険者の衣服のまま爆睡した。


次の日、目が覚めると、私は背伸びをした。

 「 目が覚めましたか?マリー様 」

すると、そこに侍女が立っていた。


私は冒険者の衣服を脱ぐと、再び冒険者の衣服に着替え直した。

 結局この服が1番落ち着く。

 そして、侍女に連れられ、食堂にたどり着いた。

 すると、そこではフィルが、フォークとナイフで、ガチャガチャと音をたてながらディナーを食べている。

お行儀が悪い。

王族や貴族クラスの食べるディナーも台無しだ。

 「フィル 」

「 ふぁっ!!おふぁようぐざいまふ、バリーざん 」

口の中に食べ物を入れたまま、フィルが喋った。

「おはよう 、メノウは? 」

「メノウさんはお食事を食べ終えて、いまはお外で魔法の訓練をしてると思います 」

「そう」

そう言って、私は食堂の椅子に腰をかけた。

 「あっ、これどうぞ。お食事ができるのに、まだ時間がかかりますから、とりあえずこれ食べて下さい 」

 そう言ってフィルは鶏肉のソテーやトマトとレタスのサラダなど、数皿私の方に差し出してくれた。

「ありがとう、いただくわ 」

私はそう言って、フォークとナイフを手に取り食事を始めた。

 「本当、凄いですね、マリーさんは、単独で帝国軍に乗り込んで行って、敵の司令官を倒してきたんですから 」

「 ありがとう、みんなが支援してくれたおかげよ。

あなたの回復魔法にも、助けられたわ 」

そう言って、私は先日の戦いを思い出す。

「マリーさん、私感激です!!これからは空手や柔道なども鍛えて、体術でも皆さんのお役に立ってみせます!! 」

「 そ、そう 」

フィルが目を輝かせて、私の両手を掴んで感激した。

 

私は食事を終えると、エレスの所へと向かった。

 

 エレスがいるであろう王宮の扉の前に来ると、衛兵にエレスの居場所を尋ねた。

エレスは、寝室でお休みしているようだった。

 エレスは側近たちに、マリーが来たら自由に通して欲しいと言っていたそうだが、睡眠を邪魔しちゃ悪いのでとりあえず出直す事にした。

 宮殿のそばの庭園を通ると、メノウが魔法の練習をしていた。

 小型の光魔法、ライトニング・アローの練習だ。

 杖をふりかざし、目の前の的に向って光球を発射させている。

 どうやら魔法の命中精度を、あげるのが目的らしく、ライトニング・アローは的にあたっても、的を傷つけずに四散した。

 意識して破壊力をゼロに近いものにして発射しているのだろう。

 メノウは機嫌良く楽しそうに練習している。

 私はメノウに話しかけようと思ったが、辞めた。 

 練習の邪魔をしたら悪いからだ。

 

 その後、私は庭園を少し散歩したあと、宮殿に戻る事にした。

 宮殿に戻ると、侍女が私に話しかけてきた。

「 マリー様、探しましたよ。重要なお話があります 」

「 どうしたの? 」

「王様がお呼びです 」


☆☆☆☆☆☆


王様とはエレスの父親の事である。

私たちが王国を開放した際、幽閉されていた王様も開放された。

 今は国務を行っているそうである。

 私は王城の最上階にある、王の間へと足を運んだ。

  私は衛兵に案内されて、王の間へと入って行く。

「 ただいま参りました。マリー・キャンベルです 」 

 私は王座の御前まで歩くと、跪いて頭を垂れる。

 「 おお、そなたが我が愛する娘、エレナの親友にして最高の守護騎士、 マリー・キャンベルどのか?

どうか頭をあげてくれ。

帝国軍を打ち破る事ができたのも、我がリバンドン王国を救済する事ができたのも、その大部分がそなたの功績だと聞く。

そなたにはもはや感謝してもしきれないほどだ」

「 勿体ない御言葉です。国王様 」

私は某ファンタジーゲームの事を思い出しながら、言葉を選んだ。

「 そなたには、我がリバンドン王国から、そして、今日まで最愛の娘を守ってもらった父親として、これまでの感謝の意を込めて褒美を渡したい。

何でも、我が王国に願ってくれ」

「それは、私の願いは―」

 私は顔をあげると、王座を見つめた。

 そして、エレスの事を思い出す。

 私の願いは、以前のように、いや、今まで通り、エレスと一緒に冒険者を続ける事。

ただ1つー、

エレスを次期王妃のなる責務から解き放ち、そして、彼女を自由にする事。

そう答えようと思った瞬間ー、

ふいに昨日のリバンドン軍の凱旋の事を思い出した。

国民から敬愛され、希望の星として喝采を浴びるエレス。

国民に手を振りそれに答える彼女。

その瞬間、私の答えは決まった。

「 国王様、私の願いは2つあります。

まず1つ目は、大変恐れ多いのですが、、国王様に近日中に王位を退いて頂くことです。

そして、その王位と全権を、この国の姫君である、エレナ様にお譲り下さい」

ザワザワザワ

王の間に立ち並ぶ、国王の側近の守護騎士たちが、互いに顔を合わせザワめき始めた。

この小娘が想像していたよりも、遥かに斜め上の願いを申し出た事に、側近たちも困惑しているようだ。

だが、私に意を唱える者はいない。

同時に賛成する気持ちもあるのだろう。

エレスの、いやエレナの国民や兵士たちからの信任は、そりほどまでに大きく、国王のそれを遥かに凌駕している。

「 わかった。そうしよう 」

ザワザワザワザワザワザワザワザワ

国王がそう答え、さらに王の間はザワめき始めた。

「それから。もう1つの願いはー 」

私は、心に秘める第2の願いを言葉にする。


☆☆☆☆☆☆


3ヶ月後


私はリバンドンの隣国にある都市、イーラ厶でソロの冒険者をしていた。

私の第2の願いとは、今まで通り、冒険者を続ける事。

ただし、エレスと一緒にではない。

1人でだ。

エレスはもう、リバンドン王国の英雄である。

そして、本来持っていた彼女の夢がかなったのだ。

リバンドン王国を開放し、自由と平和をもたらすという夢がー

あの凱旋の時に、自国民に手を振るエレスの顔を見て、私は気がついてしまった。

私との冒険の日々は、その夢から一時的に横道にそれてしまったに過ぎない。

本来私と彼女は、出会うこともなかったはずなのだ。

王国の守護騎士にならないかという国王の誘いがあったが、私は断った。

私には、何者にも縛られずに自由に冒険者をし続ける方が性にあっている。


 ☆☆☆☆☆



「マリー、今日こそは、勝たせてもらうぞ!!」

食堂の前で、私はオッサンと戦っていた。

その食堂は、夜は酒場をしていて、よく冒険者がたむろする食堂兼酒場である。

オッサンは筋肉ムキムキの戦士の冒険者だ。

どっかの街で私に秒殺された戦士(アベル )を思い出す。

でもそのオッサン(アベル )ではない。

「いいぞ!!やれ!! 」

「 今日こそは勝てよ!!オーベル 」

冒険者の連中が野次馬となって口々に囃し立てる。

私はオッサンのパンチや蹴りを軽快な動きでかわす。

そして、パンチをかわした私はオッサンの顔に向けて左手をかざす。

「アイテムボックス!! 」

そして、アイテムボックスからスライムが飛び出して行った。

ピィピィー

スライムがオッサンの顔面に纏わりつく。

「フゴォォオオオー」

オッサンが呼吸困難に陥る。

そして私は路面にしゃがむと、かがんだまま回し蹴りを放ってオッサンの足に引っ掛ける。

「 うおっ!!」

オッサンは横転し、食堂の壁にめり込んだ。



☆☆☆☆☆☆


ワアアアァァァアアア


食堂の通りの前で、大歓声が起こる。

「相変わらず見事だな」

「これで10連敗だな、オーベルのヤツ 」

「 なんでも、ケンカに勝ったらパーティーメンバーに入ってもいいって言われたんで、あいつ絶対仲間にしてやるって意気込んているらしいんだ 」

「この街で最強の戦士であるヤツが連戦連敗とは、あのお嬢ちゃんとんでもねえな 」

冒険者の常連が、口々に私の噂をする。


スライムがオッサン、いやオーベルの顔面を離れ、飛び跳ねてこちらに戻ってきて、私の肩に乗った。

「 オジさん、大丈夫?」

そう言って私は倒れてるオーベルのオッサンに左手を差し出す。

オッサンは私の手を掴んで、ユックリと立ち上がる。

「 ふぅうう〜、また負けちまったぜ。

マリー、おまえ強えな」

「どういたしまして、オーベルのオジサンも強かったわよ」

そう言って、私はニコリと笑う。

「 そうか、お前がそう言うのなら、俺もそうそう捨てた物ではないな 」

「 運動もしたし、ご飯でも食べましょう。今日は、私が奢るわ 」

そう言って、目の前にある食堂に入ろうとした時、1筋の風が吹きぬけた。

キィィーン

どこかから、剣閃が走り抜ける。

私は高速で振り返ると、とっさにナイフを取り出しその剣を受けとめる。

火花が散り、風に乗って飛んでいく。

「 相変わらずのようね、マリー ・キャンベル」

そこには、ローブを身に纏った女性が立っていた。

右手には、細身の剣、レイピアを持っている。


「 あなたはー」

「探したわよ。マリー、お命頂戴するわ!! 」

その女性はレイピアに氷の魔法[アイスソード]を付与する。

そして、ローブを脱ぎ捨てると、私の胸元に向って突いてきた。

ピキィイイイー

レイピアは、私の胸元の布を軽く切り裂き、肌に数ミリのところで止まっていた。

衣服のシャツが氷っている。

「どうしてここに ? 」

私は小さく呟く。

「それは私のセリフよ、マリー。

いきなり黙って姿を消して、いったいどういうつもりなの? 」

そこにいたのは、冒険者の衣服を着た、エレス・フランデルだった。

「 だって、あなたは、リバンドン王国のお姫様だから 」

私の瞳から、涙がこぼれ落ちる。

「 私1人のワガママで、あなたの事をー 」

私のワガママで、一国の希望の星を、独占する事はできない。

言葉に詰まって、その一言は出てこなかった。

エレスは私を抱きしめる。

「 バカね、それを決めるのはあなたじゃないわ。リバンドン王国でも、その国民でもない。

私の生き方は、私が決めるわ」

エレスは、私が考えているよりも、ずっと強い少女だった。

エレスは私が守らなければならない。

ずっとそう思ってた。

でも、それと同じくらい、私はエレスを必要としていたのだ。

守るとか、守らなければならないとか、そう言うのを関係なしに、私はエレスの事が大好きなのだ。

それこそ、リバンドンの国民や兵士、全員分くらい、私はエレスの事が大好きだ。

エレスは、その事を知っているのだろう。

でも、きっとそれだけでは無いと思う。

エレスは、私が彼女の事を大好きだと思うのと同じように、エレスもまた私の事が好きなのだろう。

リバンドン王国の王妃の座を捨てるくらいに、私の事が、きっと好きなのだろう。

その事がわかったら、もう、泣いてなどいられない。

私は、涙を手で拭う。

「お帰り、エレスちゃん、 早速だけど、冒険の旅に出かけよう 」

「そうね」

「 でもそのまえに、食堂で一服しよう、少し、お腹がすいた 」

そう言っ て、私はエレスの手を引いて、食堂の中へと入って行った。

数ある作品の中から、この作品を選んで頂いてありがとうございます。

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