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第6話 強襲

第42話 孤立無援

「サンダーウィップ!!」

 私はアイテムボックスから、電撃のムチの魔法具を取り出した。

 そして、そのムチを地面に叩きつける。

ウォーターボールの水しぶきで濡れた地面に、電撃のムチの電流が勢いよく効率的に流れ込んだ。

「ウググゥアアアー!!」

「ギィヤアアアー!! 」

接近する魔鉱石の鎧を着た騎士と、それ以外の数十人の敵兵たちが、足元から感電して一斉に悲鳴をあげる。

 そして、稲妻が走り抜けると同時に一斉に倒れていく。

 私は一瞬で敵の部隊を1つ2つ壊滅させた。

  「 後ろに下がって!!エレス!! 」

 私は振り返ると、エレスの手首を掴んで引っ張った。

 「 何をするの!!マリー!! 」 

「敵は、帝国軍はあなたの命を集中的に狙ってくるわ!!あなたが前に出ると、私たちはあなたを守りきれない。あなたはリバンドン軍の希望の星ー

あなたが死ぬと、リバンドン軍は壊滅するわ」

 「 ッツ 」

 私の強い意思と気迫に圧倒されたのか、エレスは言葉を飲み込む。

 私はエレスの手を引っ張って無理矢理エレスを後ろへ下がらせた。

 周りの上級士官たちも黙っていた。

 彼らもお姫様の安全が大切なのだ。

「エレスさん、腕をケガしています」

そう言ってフィルがエレスに回復魔法をかけた。

 エレスはやはりかなり無理をしている。

 私が助けてやらなければならない。


 奇襲攻撃で油断している帝国軍の側面をつく事ができた。

 こちらは兵力は少ないが魔鉱石の剣や鎧などの武器や防具が充実している。

 そして何より、最前線で戦うエレスの存在が大きい。

 だが、敵の兵力の何割かを倒す事には成功したが、少数のリバンドン軍に比べればまだまだ帝国師団の兵力は圧倒的だ。

それに加えて、帝国軍に操られてる膨大な数のモンスターの群れが立ちはだかっている。

 このモンスターの群れをどうにかしなければ。

 そのためには、このモンスターの群れを操る暗黒魔法具の使い手を倒さなければならない。

 鑑定魔法ライブラで、敵の指揮官を見つけた。

 片腕に魔法石のついた銀の腕輪をつけている。

暗黒魔法具の腕輪である。

 

その帝国軍の指揮官は強力なパワーとスピード、魔導力を持っている屈強な魔法剣士だった。

単純なステータスなら私よりも上だ。

 そして、その魔法剣士である指揮官がこのモンスターの群れを操っているらしい。

さらにその指揮官の周囲には、十数人の帝国騎士が護衛している。

そして、その前方には数十匹のモンスターが立ちはだかる。

モンスターを操り、暗黒魔法具を持つあの指揮官を倒すのは、非常に困難だ。

幾重にもある防衛網を突破して、強力なステータスを持つ指揮官に打ち勝たなければならない。

だが、やるしかない。

 それにはまず、最前線に壁となって立ちはだかる数十匹のモンスターが邪魔だ。

 何とかあのモンスターの群れの動きを一時的にでも止めたい。

私は、現在装備している魔法具を一斉解除すると、ほかの魔法具に装備を変更した。



 「 今からあそこにいる指揮官を倒しに行くわ!!エレス、メノウ、フィル、力を貸して!!」

 「 どういう事、マリー?」

エレスが聞いてくる。

 「 迷ってる暇はないわ!!」

新しい魔法具と精神の接続が完了し、臨戦態勢が整った。

私が新しく装備しなおした魔法具はー、

木の魔法の腕輪、風の魔法の衣服、

光の魔法の指輪の3つである。

できれば透明になれるマント、ステルスマントも装備したかったが、先の戦いで失ったので、使えない。

私は腕輪型の魔法具を発動させて、木の属性魔法[ウッド・バインド]を唱える。

 木や植物のツタが地面から無数に生えてきた。

そのツタは指揮官のいる方向に伸びていき、前方にいる十数匹ものモンスターの巨体を縛る。

 だが、まだ足りない。

 後方にはまだまだモンスターの群れが控えている。

「 フィル!! 」

「 はい!! 」

 そしてフィルが、あの植物のツタに回復魔法をかける。 

 聖なる魔法でエネルギーを得た植物のツタは、みるみるツタを分岐させて成長していく。

 そして、指揮官までの直線ルートに沿ってモンスターの動きを縛った。

 今がチャンスである。

 私は木の腕輪の魔法具を解除してアイテムボックスにしまう。

そして、新しい別の魔法具と精神の接続を開始する。

 「 分隊長さん!! 」

「 頼んだぜ!!王子様 」

王子様!?何言ってんのこいつ!!

分隊長は事前の打ち合わせ通り、盾を水平にしてかかげる。

 私は助走をつけて前方へジャンプすると、盾の上に飛び乗り再び前方へジャンプする。

 植物のツタが絡まって動けないモンスターの背中や頭の上を、次々と飛び移りながら敵陣を前進していく。

 帝国軍の弓部隊が無数の矢を発射するが、私は風の魔法エアロシールドで風の障壁を張り、その無数の矢を弾き飛ばした。

ヒュドーン

炎と氷の魔法、ファイアーボールとアイスアローがそれぞれ2発飛んできた。

私は身を翻してかわす。

4発の魔法弾が空中を通り過ぎていく。

帝国軍にいる魔導士部隊の放った魔法攻撃だ。

初弾は距離が離れているのでギリギリなんとかかわせたが、敵陣に接近するとかなりまずい。

そう思っていると、リバンドン軍の陣営からファイアーボール、アイスアローなど、8発の魔法弾が飛んできて、4人いる帝国軍の魔導士部隊にそれぞれ命中した。

メノウを始めとするリバンドン軍の魔法使いたちが私のために援護してくれたのだ。

帝国の魔導士部隊は、魔法障壁を貼って防御する。

その隙に、私は跳躍を続けてさらに前進した。


 指揮官の近くにまで接近すると、指揮官を守る騎士団が十数人たちはだかる。

 私は光の魔法、ライトニングスパークを炸裂させる。

 閃光が周囲を包み込み、敵の目をくらます。

 私は着地すると、地面を転がり数回転する。

そして、視力を失い私の位置を見失った騎士団をすり抜け、走り抜ける。

ショートソードを取り出し、指揮官の前方を守る騎士を8人、次々と切り倒していく。

「ぐっ、おのれー!!」

 指揮官はステータス異常耐性が高いので、閃光の魔法が効かないらしい。

指揮官は、炎の魔法剣フレイムソードを発動させた。

指揮官の剣が灼熱の炎に包まれた。

 指揮官を守っている騎士たちの目が見えるようになるまで2、3秒。

植物のツタがほどけるのももう数秒しかない。

 あまり時間をかけてられない。

しかも、指揮官のステータスは私より上だ。

剣で撃ち合い勝てないのなら、せめて相討ちにでも持ち越さなければー

私はそう決意した。

私はショートソードを捨てた。

 そして、冷気の細剣の魔法具、ブリザード・レイピアを取り出す。

レイピアがエレスの得意とする武器のため、彼女の姿と思いが心に思い浮かぶ。

ブリザード・レイピアは冷気の魔法を剣に付与する事ができる、細身の剣である。

攻撃力も防御力も小さいレイピアを選択したのは、その分スピードが速く敵にとっても防御がしにくいからである。

そして、敵の急所を攻撃しやすい。

 指揮官が炎の魔法剣を振り下ろして来る。

それと同時に、私は敵の左手首の魔法具の腕輪を狙ってレイピアで突く。

キイィイイイイイン!!

ズドドォォオオオオオン!!!!


指揮官の剣が私の胸を切り裂き、炎の魔法剣が炸裂する。

「クゥゥウウウ!! 」

私は一度後ろへ下がらざるえなかった。

一方私のレイピアは、指揮官の左腕に着けている暗黒魔法具の腕輪をかすめただけだった。

金属の腕輪の表面を一部凍らせただけで、

中央にはめ込まれている魔法石を壊す事はできなかった。

勝利を確信した指揮官がニヤリと笑った。


ダメージを負ったが、迷ってる暇はない。

私は踏み出して再びレイピアで突く。

指揮官が魔法剣を振り上げた。

キィイイイーン

私のレイピアが砕け折れて、宙を舞う。

武器を失った私に、指揮官はさらに2発目の魔法剣を横薙ぎで斬りつけてきた。

私はレイピアを捨てると、背中を仰け反らせて後ろへ倒れ込みながら指揮官の魔法剣をかわした。

それと同時に、後ろへ倒れながら蹴りを放つ。

蹴りが指揮官の魔法具の腕輪をかすめ、腕輪にはめ込まれている凍り付いた魔法石がひび割れた。

私は地面に仰向けに倒れる。


「 あの女魔法剣士はあそこにいるぞ!!」

指揮官を守る10人以上の守護騎士たちの視力が回復し、私の位置が見つかってしまう。

指揮官を始め、帝国兵たちは全員勝利を確信した事だろう。

 そして、とどめを刺すために、指揮官が地面に倒れる私に追い打ちを掛けようとする。

 しかしー

ピキィィイイイン

 炎の剣を振り下ろそうとした瞬間、指揮官が着けている魔法具の腕輪の魔法石が砕け散った。

そして、それと同時に洗脳が解けた巨大蛇のモンスターが舌を出して、指揮官にその長い舌を巻き付けた。

「ウワワワァァアアアア」 

 宙に引っ張り上げられ、飲み込まれる。

 ほかの帝国兵たちも、洗脳が解けたモンスターたちに襲われていた。


 洗脳が解けたモンスターたちは、私たちが戦っていた帝国の一個師団を襲いはじめた。

 エレスたちリバンドン軍はそのスキにその一個師団のモンスターたちの群れを回り込み、帝国軍の本体へ側面から攻撃を仕掛けた。


 リバンドン軍の士気はもはや誰にも止められないほど最高潮に達していた。

 側面の急所を責められた帝国軍の陣形は崩れる。

 帝国軍は戦線を維持できなくなり、撤退を余儀なくされた。

 

 

 

 

 


 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

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