第4話 天才美少女魔法剣士
なんて言うこと。
まさかこんな事になるなんて。
私はただ、私の持つアイテム・ボックスの性能と私の能力を証明して、 何処かのパーティーに入れてもらうつもりだっただけなのに。
それが誤解を招き、この戦士のオジサンの闘争本能に火をつけてしまおうとは。
恐らくこの戦士は、私にオチョくられ、ケンカを売られたと勘違いしたのだろう。
私は冷や汗を流しながらも、冷静に戦士の動きを見切る。
戦士の左右のパンチを後ろに下がってかわすと、ボックスに隠し持っていた半分のレモンを戦士の顔の前にかざして、勢いよく絞り込む。
そして、その男に酸味の効いたレモン果汁を吹きかける。
「うわあっ!!俺の目が」
慌てて両目を閉じて、戦士はパニックを起こして両腕をブンブン振り回す。
次に私はその戦士の両腕をかわすと、思いきり戦士の股間を蹴り上げる。
「うげぇっ」
戦士が股間を抑えながらうめいて腰を落とす。
さらに私は、素早く戦士の背後に回り込むと、彼の首筋に手刀を叩き込んだ。
「 ううっ」
連続で急所をつかれた戦士は気を失い、その場に倒れる。
「うわあっ!!」
「凄え!!」
店内にいる他の冒険者や一般人から、大歓声が上がる。
「この小娘めー」
しかし、静観していた戦士の仲間のメンバーたちは、怒り心頭である。
まずい、さすがに4人同時となれば私は負ける。
「怒りをお沈め下さい。先輩方。」
「お前は、エレス」
2階の階段から、魔導服を着た少女がゆっくり降りて来た。
桃色の瞳に髪、聡明で可憐な容姿と雰囲気を醸し出している。
年は私と同い年くらい、つまり16・17歳くらい。
この酒場にいる者たちの注目は、一気に私から彼女に移った。
ここでの主役は、もはや私ではなく彼女である。 そのくらい、彼女には強い存在感と苛烈とも言える魅力が溢れていた。
「ここにいるお客様のお食事やお酒の代金は、今日は私に奢らせてください。
それから、これは少ないですけど、アベルさんに渡しておいて下さい。」
そう言って、エレスは数枚の金貨を神官に手渡した。
アベルはおそらくさっきやっつけた戦士の事だ。
「さあ、貴女も謝って。」
エレスは私の右手を両手で握ると、私を諭した。
私はただ、自分の優秀さをアベルたちに認めて貰ってパーティーに入れてもらうつもりだったが、結果的にこっちからいきなりケンカを売ってしまう形となってしまった。
彼らからして見たら、馬鹿にされたと感じたのだろう。
私は素直に頭を下げた。
「偉いわよ。さあ、行きましょう。」
そう言って、エレスは私の手を握ったまま外へ引っ張って行った。
幾ら大金を渡したとはいえ、こんな幼い少女にあの男たちが黙るとは、この娘はいったい何者なのだ。
彼女の物腰や魔導力の輝き、雰囲気から、彼女が相当優秀な冒険者である事がうかがえる。
この両手で掴まれている右手からは、 優しい温もりと情熱の炎、そして、高圧電流のような魔導力が流れ込んで来る。
バシッ きゃっー 酒場の外の路地裏に連れ込まれると、いきなりエレスは私の事を引っ張たいた。
そして、激しい怒りの炎を燃やして、私の事を睨みつける。
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