第2話 王姫の戦い2
第38話 王姫の雄姿2
私は前に一歩すすむと、炎の魔法ファイアボールを発射した。
塔の4階くらいに命中して、爆発する。
「反逆者だ!! 」
兵士の1人が叫んだ。
数十人の兵士たちは、一斉にこちらへ走ってくる。
私の左手の魔法紋が光り輝き、私の身体能力を強化する。
私に向って走ってきた兵士の1人が、剣を振り上げる。
私はその剣をかわすと、兵士の左手首を掴み、合気道の奥義で関節を捻る。
兵士が空中で一回転して地面に落下する。
さらに前方から来た2人めの兵士に私は掌底打ちと呼ばれる掌での打撃を叩きつけ、みぞおちに膝蹴りを撃つ。
二人目の兵士が倒れた。
「バインド!! 」
私は木の属性魔法バインドを唱えた。
木の魔法具が魔力で光り輝く。
大量のツタが地面から伸びてきて、後ろから接近する数十人の兵士たちに絡みつき、身動きを取れなくする。
私は魔法具の1つに、ツタの魔法、バインドを選択した。
本来は味方である洗脳されているリバンドンの兵士たちを、殺す訳にはいかないからだ。
彼らにはダメージを与えずに、洗脳から解いて救い出さなければならない。
「 精霊の浄化石!!」
私は青く光り輝く魔法の結晶を取り出して、掲げた。
浄化石は光り輝く。
そして、ツタから逃れようともがく兵士たちに聖なる魔法が包み込む。
精霊の浄化石は、人の心を癒やすことができる。
そして、呪いや暗黒魔法から解き放つ。
暗黒魔法の洗脳から解放された兵士たちは、正気を取り戻す。
私はバインドを解除した。
「ここはどこだ!! 」
「我々は、いったいどうしたんだ !! 」
兵士たちは戸惑い混乱している。
「 正気に戻ったのね。良かったわ。エレス 」
私は後ろにいるエレスのほうに振り返る。
「エレス?エ、エレナ様!! 」
兵士の1人が、私の視線の先にいるエレスに気がついた。
「 あ、あなたは、エレナ様!! 」
「 エレナ様だ!! 」
残りの兵士たちも感嘆の声をあげる。
「エレナ様、よくぞご無事で 」
1つ階級の高い分隊長が前に出て膝まづいた。
残りの兵士たちもならって膝まづく。
「ごめんない。私だけ1人で逃げだして 」
エレスがかがんで、呟いた。
「 そんな、とんでもございません!! 」
「 感動に浸ってる場合じゃないわ!!あなたたち、今からよく聞いて!! 」
私はエレスの一歩前へ歩み出る。
そして、アイテムボックスのサブスキル、メニュー画面を発動させた。
目の前に、光り輝く枠と無数の文字が浮かびあがる。
そしてアイテム一覧表を開くと、次々と武器や防具などのアイテムを指先でチェックしていく。
次に、アイテムの移動先を選択する。
そして、装備の変更を行う。
突然兵士たち全員の体が光り輝き、新しい武器や防具が装備された状態で出現する。
今まで装備していた鋼鉄の剣や鎧が消滅して、青銀に光り輝く剣や鎧を装備している。
「 これは!? 」
分隊長が驚く。
「これは、魔鉱の剣と鎧よ。これからあなたたちには、リバンドンを奪還する計画の手助けをしてもらう。
これはその為の装備よ。」
さらに私は、魔鉱の盾を移動させて兵士たちに装備する。
魔鉱石は、通常の鋼鉄よりも硬くて頑丈だ。
しかも魔法攻撃に対する耐性も強い。
「 まず、これから東と西、南 の塔を巡って、ほかのリバンドンの兵士たちの洗脳を解きます。そして、中央の城に侵攻します。
それから、これを」
そう言って私は、精霊の浄化石を1個取り出し、エレスに移動させる。
浄化石がエレスの目の前に出現する。
「受けとって」
そう言うと宙に浮かぶ浄化石をエレスは受け取った。
「 これは精霊の浄化石です。この石は、強く念じると魂を浄化し、暗黒魔法の呪縛や洗脳から解き放つ事ができます。
この国の王姫、エレスー、エレナ・フランデルは、この浄化石を使ってリバンドンの兵の洗脳を解きます。
それから、浄化石が暗黒魔法の洗脳を解くには、数秒から十数秒の時間がかかります。 残りの兵士のみなさんは、魔鉱の盾や鎧で、相手の攻撃を防御して、浄化石の魔法効果が現れるまでの間、エレナを守り時間稼ぎをしてください。」
「 承知しました!! 」
分隊長が立ち上がる。
「 メノウ、フィル、あなたたちもエレスを援護して 」
私は2人の方を振り向き、言った。
「 あなたはどうするの?マリー 」
メノウが聞いてきた。
「 エレスたちリバンドンの兵団が東西南北の塔を攻略し、兵数を増やして城に侵攻してくれば、帝国軍は混乱して城内の防御が手薄になるはず。
私はそのスキをついて、1人で城内に侵入して、暗黒魔導士を暗殺するわ!!」
「そんな、マリーさん!! 」
「 マリー、それは危険だわ 」
フィルとメノウの2人は、そう言って沈黙した。
私についていくとは言えないのだ。
フィルは以前に比べかなり強くなったとはいえ、まだまだ未熟だ。
メノウは強いとはいえ接近戦が苦手だ。
そのため様々な状況には適応できない。
そのため2人はあしでまといになる。
それがわかっているから2人は連れて行ってくれとはいえない。
だが、エレスは違った。
「 マリー、私もついて行くわ 」
「 それは駄目よ。エレス 」
「 どうして? 」
「精霊の浄化石は、想いの力によって発動する。効果が違う。
リバンドンの兵士たちを救いたいという想いが強い、あなたでなければならないの 」
さっきのように数十人単位の少人数なら、私でもできる。
いや、さっきの私にも、兵士たちを救いたいという願いはあった。
エレスを救うために。
最近私たちと知りあったメノウや急に呼びたされてかり出されたフィルには、私たちほどの想いの力はないだろう。
「 でもー 」
「 それに、彼らには、リバンドンの兵士たちを導く者が必要だわ。それは、間違いなくあなたにしかできないの 」
「 ツッ 」
エレスは歯噛みする。
「 心配しないで、私は必ず、暗黒魔導士を倒してみせるわ。そして、必ず帰って来る 」
私はエレスの両手を握ると、手を離してすぐに駆け出していった。
少し沈黙のしたあと、エレスが激励する。
「 さあ、私たちも進軍するわよ!! 」
私は振り返り、リバンドンの兵団を導くエレスの雄姿を見た。
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