第4章 王姫の戦い 第1話 王姫の戦い
「それで、これからどうするの?マリー? 」
エレスが聞いてきた。
「先日、行方をくらませていた暗黒魔導士がリバンドンにいるという情報が入ったわ。 」
エレスの顔色が変わる。瞳の色が変わり、少し鋭い目になる。
エレスは、帝国に占領されて亡命したリバンドンの姫君である。
「暗黒魔導士がなぜリバンドンに移動したのか、 なぜリバンドンに留まり動きを見せないのか?それは解らないわ。でも、何かを企んでいることは間違いない。 」
エレスたちは黙って私の話を聞いている。
「これから私たちはリバンドンに侵攻するわ!!そして、リバンドンを攻略し、今度こそ私たちで必ず魔導士を撃つ!! 」
私は決意を込めて言った。
☆☆☆☆☆☆☆
暗黒魔導士がリバンドンに移動したという情報を掴んだ私は、王国に連絡をとり応援の部隊を要請した。
王国からは300人の軍隊がこの街に送り込まれた。
私たちは、その王国軍とともにリバンドンの首都近辺にある草原へと移動した。
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☆2025☆3 11@
私とエレス、そしてメノウとフィルの4人は、地下の隠し通路を使って、リバンドンの都市に向った。
リバンドンの都市に潜入するためだ。
地下の隠し通路を抜けると、私たちは都市に出た。
石造りの街並みが広がり、幾つもの高い塔が見える。
新緑の樹木が無数に生える、美しい街並みだ。
だが、3年前の帝国との戦争によりあちこちの建物が崩壊している。
エレスの瞳に懐かしさと悲しさの2つの感情の色が宿る。
「エレスー 」
「さあ、行くわよ。私たちで魔導士を撃つのでしょう。チェンバレン王国の勝利のために」
エレスはそう言って一人歩き出した。
「待ってください!!エレスさん 」
フィルが後を追いかける。
チェンバレン王国の勝利のためにー
この意味は、私にこの戦いの目的を確認させるために言った言葉である。
この言葉の意味は、自分のためにリバンドンを奪還しようなどとは考えるなー
という意味である。
リバンドンを攻略するのは、あくまでも暗黒魔導士を撃つのが目的である。
そういう意味である。
もし戦況が難しかったり、不利になったのならーあるいは暗黒魔導士がリバンドンからさらに逃亡したのなら、その際は、キッパリとリバンドンへの侵攻は諦めろという意味でもある。
リバンドンの攻略はリスクが大きい。
エレスはそう考えているのだろう。
彼女の勘は当たっている。
私は、言葉ではチェンバレン王国の勝利のために魔導士を倒すと言っておきながら、本心では、魔導士の事に関係なく、エレスのためにリバンドン王国を奪還したいと考えていた。
リバンドン王国を占領している帝国軍を追い払い、王国を取り戻したとしても、全てが元に戻るわけではないが、それでも彼女の中で多くの物が取り戻せる。
そして、一区切りして本当の意味で新しく歩き始める事ができるはずである。
エレスの、彼女の性格からして、リバンドン王国を取り戻さない限りは、故郷を見捨てたという負いめから真の幸福は得られないだろう。
たとえこのまま冒険者を続けるとしてもだー
だから私はリバンドンを奪還したい。
そして、エレスに輝く未来をプレゼントしたい。
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リバンドン王国は周囲を壁に囲まれている。
中央に巨大な城があり、東西南北に高くそびえ立つ塔が4本建てられていた。
その北にある塔の一本に私たちは近づく。
塔の周囲には、数十人の兵士が立っていた。
「彼の事は、見覚えがある。彼はリバンドンの兵士の1人 」
エレスが警備をしている兵士の1人の事を指して言った。
「あの兵士は、あの人は洗脳されているわ。おそらく、暗黒魔法によって。あなたたちリバンドンの王族に忠誠心があったとしても、今は意識を乗っ取られている。あの人は帝国の手先よ 。」
メノウが鑑定魔法ライブラで兵士を鑑定して言った。
「暗黒魔導士がこの国に来たのは、リバンドンの兵士たちを洗脳するためだったのね。リバンドンの兵士たちと、チェンバレンを戦わせるために」
エレスはそう言って、拳を握りしめる。
エレスの帝国に対する怒りが伝わる。
私はエレスの肩に手を当てた。
「 大丈夫よ。私に考えがあるわ。 」
この瞬間、暗黒魔導士の事があろうがなかろうが、必ずリバンドンを奪還すると私は心の中で決意した。
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