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第12話 追跡

「ファイヤーボール」

 メノウが炎の魔法を放ち、洞窟の壁を破壊して穴をあける。

 その岩壁はさっき暗黒魔導士が物質透過魔法で通り抜けた部分だ。

 すると、その壁の向こう側にも通路のように洞窟がひろがっていた。

 私たちはその先へと進んでいく。

「あくまでも追跡するだけよ。どこに行ったのか確認するだけ。その後は、エレスたちと合流してからー 」

 私がメノウにそう言いかけたとき、エレスたちと王国騎士団に出くわした。

「マリー!! 」

 エレスが私の名を呼ぶ。

「 探したわよ。あなたなら、ここにいる程度の魔物、余裕でしょうけど」

「 あははは 」

 私は苦笑いする。

 死にかけたのは黙っておこう。

「暗黒魔導士を見つけたわ。今、私たち2人で追跡しているところ 」

「そう、わかったわ」


  ☆☆☆☆☆☆


 しばらく歩くと、地上に出た。

 そしてさらに少し歩いた前方に、暗黒魔導士はいた。

 見つけた!!

 暗黒魔導士がこちらを振り向く。

 すぐさま暗黒魔導士は呪文を唱えようとする。

 召喚魔法でさきほどのデュラハンのような強力な魔物を呼ぶつもりだ。

 私はすぐさま、もの凄いスピードで一直線に駆け出した。

 私の履いてるスピードアップの靴の魔法具が魔法で光輝く。

 魔法陣が出現し、そこからフレイムドラゴンが召喚された。

 私はそのドラゴンを横切り、暗黒魔導士に剣撃を放つ。

 ザクッ 

 剣が暗黒魔導士の胸を切り裂く。

 召喚魔法で強力な魔物を出されると、さっきのデュラハンと同じくその魔物に強力な魔法耐性を持つアンチマジックシールドを貼られる可能性がある。

 だから私は召喚魔法の詠唱が終わる前に決着をつけるべく暗黒魔導士に向かって走り込み、距離をつめて接近戦に持ち込んだのだ。

 強力な召喚魔法は普通の魔法に比べ詠唱時間が少し長い。

 それに私は前もってスピードアップの靴の魔法具を履いておいたのだ。

 ドラゴンが翼をひろげ、はばたく。

 暗黒魔導士は宙を舞い、フレイムドラゴンに飛び乗った。

 そして、ドラゴンとともに飛び去っていった。

 エレスが氷の魔法を放つが、アンチマジックシールドに阻まれ砕け散る。

「逃げられたか!! 」

 エレスが叫ぶ。

「あの方向は、帝国領内。仲間を全員失い、さらにさっき受けたマリーの剣のダメージを回復するため、いったん帝国に戻って態勢を立て直す気だわ」

 メノウが解説する。

「暗黒魔導士がダメージを回復し、仲間を連れて近隣のダンジョンに戻ってくるのに少し時間がある。帝国軍を倒すなら今がチャンスだわ。 」

 エレスがそう言った。


  ☆☆☆☆☆☆☆☆


 王国領内に戻った私たちは、前線にいるカインたちの主力部隊と合流した。

 そして、暗黒魔導士が逃走し帝国領内に戻ったことを報告する。

 暗黒魔導士が差し向けた魔物たちの群れは、数を失いすべて倒されていた。

 王国軍はさっそく魔物たちの群れと戦っていた軍隊を編成しなおすと、帝国へ向けて進軍を開始した。




 一方、私たちはチェンバレンの北西の街、アレスタで待機していた。

 アレスタに到着して3日目の朝ー

 私たちは宿屋の一階の食堂で食事をしていた。

「ねえ、マリー。この街にきて3日もたつわ。王国軍はもうすでに帝国軍の主力部隊と交戦しているわよ。どうして私たちも、王国軍と同行しないの?」

 斜め前に座っているメノウが聞いてきた。

「私たち遊撃部隊は、これからもっと過酷な任務を遂行することになるわ。敵軍の指揮官を撃つ役目、そして、暗黒魔導士を撃つ役目。これらの任務を遂行するためには、私たちはより強力で完成度の高いパーティーにならなければならないわ。

 そのためには、あと1人、欠けているピースがある。

 敵の攻撃を引き付け、敵軍の最中に切り込む前衛の私。

 接近戦、遠距離戦。剣と魔法、双方を得意とするバランス型のエレス。

 そして、強力な破壊力の黒魔法を得意とするメノウ。

 でもあと1人、パーティーで必要不可欠な重要なスキルを持つものがいるわ。」

「それはー 」

「お待たせしましたー。マリーさん。 エレスさん。」

「フィル!!」

 エレスが立ち上がってその名を読んだ。

「 ごめんなさい。ナーディラスからこの街までかなり遠いのに、呼び出してしまって。どうしても、あなたが必要だったのよ。修道女である、あなたが。」

 私は立ち上がると、フィルの手を掴んだ。

「メノウ、紹介するわ。 」

 そう言って、私はメノウにフィルの事を説明した。

 私たちのパーティーには、強力な補助系魔法の使い手がいない。

 いや、専門的な回復魔法に特化した修道士や付与術士も王国軍にもいるにはいるのだが、私たちのパーティーの状況に適した修道士は、フィルが1番だった。

「フィル、本当はあなたを巻き込むべきではないのかもしれないけど、それでも私たちにはあなたが必要だったの。

 これから、命がけの戦いになるわ。 」

「何言ってるんですか?この戦争は、チェンバレンと帝国軍の未来だけでなく、私たち、ナーディラスの未来もかかっているんです。 その戦いに私の力が役立つなら、喜んで協力させてもらいます!!」

 フィルが胸を張って言った。

 やはりフィルは、本質的には冒険者に向いてる性格だった。

 強くて逞しい。


「心配しなくても大丈夫よ。メノウ 」

 私は沈黙しているメノウに言った。

「 別に心配してる訳じゃないわ。でも、少し幼ないから。だけどあなたが大丈夫というのなら、そうなのでしょう。」

 エレスの皿から海老フライをつまみ食いするフィルの方を見ながらメノウが言った。


 

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