第8話 モフモフ
第32話 モフモフ
その後、私たちは、魔物を倒しながらダンジョンを突き進んでいった。
途中何匹か魔物の意識を乗取ってアイテムボックスに放り込んでいった。
しばらくすると、草原の中に森があった。
「行ってみましょう」
私はそう言うと森の中に入っていく。
「 待ちなさい!!どんな危険な魔物がいるかもわからないのよ!! 」
「 でも操れる魔物がいるかもしれない」
私はメノウを無視して進んでいく。
「 ちょっと!!マリー!!勝手に何でも自分で決めないで!!」
そして、森の中には、再び草原がひろがっていた。
そしてそこにいたのは、羊と猫を足したような動物たちだった。
白くてフワフワとした動物たちだ。
ムシャムシャと草食べてる。
「 どうやら魔物ではなさそうね。引き返すわよ 」
「キャー!!」
「 えっ!?」
突然メノウが、瞳をキラキラと輝かせて黄色い声をあげた。
そして、森から飛び出したかと思うと走り出して動物の一匹に抱きついた。
「メ、メノウ? 」
そして、草を食べているその動物に頬をスリスリさせて大喜びしている。
「ちょ、ちょっと、メノウ、どうしたの?」
「 いやーん!!モフモフ可愛い ❤」
メニャー
「ねえ聞いた?メニャーだって?なんて変な鳴き声をだすの!? 」
変だとかいいながらメノウはメッチャ嬉しそうだ。
変なのは彼女だ。
猫羊、いやモフモフたちは人懐っこい習性を持つらしい。
次々とメノウのところに集まって来てメノウの頬や体をペロペロと舐め始めた。
メノウのところに群がってくる。
「キャーくすぐったい!! あっ、ちょっと、駄目。何してるの?マリー、助けなさい!!」
そうして、メノウはモフモフの中へと埋もれていった。
猫などの小動物が大好きな女の子は多数いるが、彼女は異常だった。
かくゆう私もモフモフは大好きだし、休日になれば猫カフェやファンシーグッズ店には足繁くかよっていたが、彼女は異常だった。
メノウはモフモフを見ると興奮する異常性モフモフ愛好家だった。
プライドの高い名家の優等生の隠された闇の?部分を垣間見た気がした。
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2025
「さっきは見苦しいところを見せてしまったわね。」
メノウが眠っているモフモフ、猫羊を抱きしめながら言った。
髪の毛が少し乱れている。
残りの猫羊たちも草原で眠っている。
私が眠りの魔法具で眠らせたのだ。
「アハハハッ 」
私は苦笑いする。
「 でも、モフモフが好きな気持ちはわかるわよ。私も、何匹かモフモフを持ってるし 」
「 えっ」
メノウがどういうこと?と言いたげな訝しげな表情をする。
「はい 」
そう言って、私はクマや猫やなどの縫いぐるみを幾つか取り出す。
「 これ、あなたにあげるわ。」
「凄い可愛い、いいの? 」
私はうなずく。
「 私も異世界転生する前、いや故郷の国にいた時は、屋内型テーマパークなどへよく行ったわ。 」
「 テーマパーク?」
「 モフモフがたくさんいる楽園の事よ 」
私は適当に事実を変えて言った。
「 そう。私も行ってみたいわ」
「 そうね。日本にはもう帰れないけど世界が平和になったら作って見るのもいわね」
「 作れるの ?」
私はうなずく。
そうだな。ここにいる猫羊たちの毛を使ってモフモフの着ぐるみでも作ろう。
でもそれを知ったらこのお嬢様はきっと怒るだろうな。
「その時はあなたにも協力してもらうわ 」
「もちろんよ 」
そう言って私たちは意気投合して手をつなぎ合う。
なんと、最初仲が悪かった私たちだがモフモフたちのお陰で友情が芽生えるとは。
モフモフたちには感謝せねば。
これだけ友情を感じたのは、エレス以来だ。フィルにも興味があるがそれは可愛い後輩というか愛玩動物としてだ。
メノウは高貴なご令嬢だが、胸の内に秘める灼熱の炎のような情熱が垣間見える。
それはもと皇族の天才冒険者、エレスの灼熱にも会い通じるものがある。
それだけに彼女がモフモフで錯乱したといかご乱心なさったのは衝撃的だった。
「それにしても、魔法具なしでは魔法の使えない女性冒険者なんて、珍しいわよね。
この魔力を攻撃力に変える剣、ウィザード・ソードは、本来あなたのような剣技に優れた者が使うべき剣なのに 」
「 しょうがないわ。私の職業は、村人A、最下級冒険者にすぎないのだから。このアイテムボックスも 」
このアイテムボックスも、秩序の女神から与えられた特例の贈り物に過ぎないーそう言おうとして口を閉ざした。
「それなら、魔法紋をその手に刻んでみたら?」
「魔法紋? 」
「 そう、魔法紋を刻印すると1つの魔法紋に1つだけ魔法が使えるわ。もっとも、体への負担が大きすぎるから最初は1つしか刻めないけど。」
「 1つだけ?」
「そう、でも例え1つでも、これで装備できる魔法具が1つ増えるわ 」
そうか、魔法具と併用すれば、使える魔法や能力の選択肢が増えるというわけだ。
「それは、そうだけど、どうすればいいの? 」
「 魔法紋の刻印は、私たち魔法使いの名家の秘術でもあるわ。良かったら、私が刻印してあげる。」
「 本当!!ぜひお願いするわ!!」
私は二つ返事で了承した。
「刻印する魔法は、あなたが常時装備している魔法具と同じ、身体能力強化の魔法、スピリトゥスでいいわね?」
私は頷く。
「それじゃあまず、腕を出して 」
メノウは真っ直ぐ伸ばした私の腕を掴むと、何かの呪文を唱えはじめた。
「Ignelle, Senjans, Kanerutamijite, Kurshaaaa 」
そして、指で空中に何かの文字や図形を描くと、私の手の甲に光の紋様が浮かびあがる。
メノウがさらに指で文字を描くと、私の手の甲の紋様が腕へと伝ってどんどん伸びていく。
私の左腕が光り輝く。
目が眩む。
そして、手の甲から光の紋様は消えていた。
「 失敗したの?」「いいえ、成功したわ。戦闘の際には自動的に発動するようにしておいたから」
「そう、メノウってけっこう気がきくのね 」
「ウィザードソードを貸してくれたお礼よ。あなたも、頑張るのよ 」
メノウがウインクする。
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