第3話 泥棒
街に到着すると、私はすぐに冒険者ギルドに行った。
冒険者ギルドに行くと、受付けのお姉さんに追い返された。
何でも年齢が低すぎるそうだ。
どうしても冒険者になりたければ、試験に合格してから来なさいとの事だった。
だがこんな事くらいで諦めてはいられない。
もうすぐ世界が滅亡の危機に瀕する。 受付けのお姉さんに食いつくと、どこかのパーティーにメンバーの一員として所属すれば、特例としてお仕事を一緒に割り振りして貰えるのだそうだ。
だがもっとも、虚弱体質で魔法も使えないクソナメクジの若干16歳の小娘を、メンバーの一員として雇う冒険者パーティーなどある訳ないのだけど。
普通はー と言う事で、私は私をメンバーの一員として雇ってくれるパーティーを探すために、酒場へ行った。
この年齢で酒場など、場違いもいいとこだがそうも言ってられない。
未成年でそもそも虚弱体質の私はお酒が飲めないので、レモネードを注文する。
グラスの上には、輪切りのレモンが2つ乗っかっていた。
酸っぱいー
「お兄さん。」
私はジュースをカウンターに置いて立ち上がる。
そして、テーブルでパーティーの仲間たちとともに夕食を楽しんでいる戦士に話しかけた。
戦士は屈強な肉体と重厚な鎧を身に纏った、頬に傷がある中年の男性である。
「お兄さん、私をパーティーメンバーとして雇ってくれない?」
私は両手を背中に回して、腰を低くして上目遣いでできる限り可愛らしく、猫をかぶって話しかけた。
「うんっ?」
テーブルの席についている戦士が振り向く。
同時に、そのテーブルを取り囲んで同席している騎士や槍使い、魔導士や神官などの残りのメンバーたちもこちらを振り向いた。 「お前、あんまり強そうに見えないけどな。 おい、コイツのステータスはどうよ?」
戦士が神官に質問する。
「ステータス、殆どが3以下です。 しかも、使える魔法はありません。」
「はあっ、お前、滅茶苦茶弱いじゃねえか。馬鹿じゃないのか?」
ある意味、それは半分当たっている。
若干16歳、ろくなステータスもなく高校に通う年齢で魔法も使えない者が冒険者になろうなど、本来なら正気の沙汰ではない。
「ねえ、そんな事言わないでさ。何でもするからお願い。例えば荷物持ちなんかどうかな? 」
「 馬鹿言うなよ。お前見たいな貧弱な小娘に、荷物持ちなんかできる訳ないだろう。剣やナイフの1本も持てるかどうか怪しいもんだ 」
戦士がその歴戦の観察眼ですでに私の正体を半分見抜いた。
しかし、剣やナイフを持てないと言うのは言い過ぎだ。
「あら、そんな事ないわよ。あなたの剣だって片手で持てるわよ」
そう言うと、私はアイテムボックスから1本の剣を取り出した。
私の指先の空間から出現した剣の柄を、私は2本の指で掴んでブラブラと揺らす。
「うんッ? その剣がどうしたっていうんだ 」
はて、どこかで見覚えのある剣だなー
最初は、骨肉をムシャムシャと粗食していた戦士だが、次第に顔色が変わる。
「 はっ、まさか」
戦士は腰に付けた鞘に収まっている剣の柄を掴もうとする。
が、そこに触れる事のできるはずの剣の柄がない。
見ると、本来そこにあるはずの剣が鞘の中から消失していた。
「 何っ、剣がないっ!!テメエーッ 、いつの間に!!」
私が2本の指先でつまんでいる剣をもう1度よく見て、戦士が立ち上がって叫んだ。
「あなたの剣だけじゃないわよ」
さらに私は、この戦士以外のメンバーを挑発する。
「はっー 俺の槍もない」
槍使いが、ようやくテーブルの側の柱に立て掛けた武器がない事に気づく。
「俺のハンマーもないぞ!!」
「私の杖が消えている。」
しばらくすると、酒場中のあちこちで冒険者たちが武器をなくしていることに気が付きはじめる。
私がアイテムボックスを開くと、手をかざした指先の空間から大量の武器が出現して落ちていった。
ボックスを使えば手を使わなくても次元空間に武器を放り込む事ができる。
私は彼らがテーブルを囲んで楽しくお酒と食事を楽しんでいるスキをついて、彼らに忍び寄り、アイテムボックスの中にこっそり武器を収納しておいたのだ。
「どう?これで、私を連れて行く気になったかしら。」
「てめぇー!!舐めやがって」
戦士が激昂して立ち上がると、私に殴りかからんと近づいて来た。
数ある作品の中から、この作品を選んで頂いてありがとうございます。
☆☆☆☆☆
面白いと思っていただけた方はぜひ、好評価ポイントとブックマークをご活用ください。




