第9話 連携
3人が気を失って倒れると、エレスが氷の魔法でロブスターを凍らせた。
よし、今晩のオカズにしよう。
私は凍っているロブスターをそのままアイテムボックスに収納しておいた。
後で解凍して焼いて食べるのだ。
問題は倒れている我が後輩たちだ。
もう一回まとめると、ライザは、パワーは強いけど、大ぶりで、スキが大きく防御するのが下手くそだ。
次にフィルだが、彼女のナイフは手数も多いし技術もピカイチだが、攻撃力が弱すぎる。
最後にリズだが、彼女は魔法の破壊力はかなり凄まじいが、コントロールが悪かった。
「3人とも、自分の能力の適性と武器の性質が合ってないわね。今持ってる武器はこっちで預からせてもらうわ」
そう言って、私は3人が手に持ってる武器をアイテムボックスに収納する。
「「「あっ!!」」」
いきなり自分の手から武器が消えたので3人とも驚いて声を出した。
「私の武器が!? 」
「マリーさん、ひどいですぅ」
「 また新人研修に逆戻りですかぁ? 」
ライザ、リズ、そしてフィルがそれぞれ呻いた。
「 安心しなさい。あなたたち3人の適正とチーム状況に合った魔法具の武器を、私からプレゼントするわ。」
そう言って、私はアイテムボックスから魔法具を取り出し、3人にそれぞれ渡す。
「 それから、あなたたちはチームとして連携ができてないわ。もう少し、呼吸を合わせないと。今日から3日間、私があなたたちを特訓するわ」
「このモンスターのウヨウヨしている危険な森の中で3日間も?」
今度はエレスが呻いた。
そして私は、3人を集めて特訓した。
私は3人にそれぞれ新しい魔法具の使い方を指導した。
そして、パーティー戦による3人の連携プレーのやり方も教えた。
前衛と後衛の切り替えのタイミング。
後衛による前衛のフォローの仕方。
3人は、服屋に特注で作らせたユニフォームを着ながら、ランニングする。
エレスが眠そうにアクビをしている。
私は異世界の大ネギで地面をビシビシ叩いてフィルたちを叱咤激励する。
昭和の時代の熱血鬼コーチと化していた。
そしてー
「さあ、あなたたちは強くなったわよ。
再戦するわよ。」
私達は円陣を組んで、気合を入れた。
巨大ロブスターとの第2ラウンド。
まず、ロブスターがハサミで襲ってくる。
それをライザは、大盾で受け止めた。
私はライザには武器ではなく防具の魔法具を与えた。
ロブスターの連続攻撃の衝撃にも、ライザはしっかりと耐えて、大盾を粘り強く支えていた。
重量のある大盾は、パワーの強いライザにピッタリなのだ。
さらに、彼女のスキの大きさと技術面の欠如、それに守備率の低さを補ってくれる。
そして、後衛で待機しているフィルやリズを守ってくれていた。
「フィル、行きまーす!!」
ライザに気をとられているロブスターに向かって、ハチマキを巻いたフィルが突っ込んで行った。
そして、さっき教えた空手の掌底打ちと呼ばれる、手のひらパンチをロブスターに叩き込む。
頭に掌底うちを喰らったロブスターは、脳震盪を起こして少し怯む。さらに、フィルは2発目の掌底打ちを叩き込む瞬間、風の魔法を発射する。
手のひらからエアロの暴風が飛び出し、ロブスターが吹き飛んでいって仰向けに倒れる。
私がフィルに渡した魔法具、風の腕輪の魔法効果だ。
前の新人研修で私が教えた、日本の魂、空手道の真髄と、魔法が使えるフィルならではの技だ。
さらに、掌底打ち、手の平で撃つことで、軽い材質のナイフのように甲殻で弾かれるのを防ぎ、プラス魔物に脳震盪を与えて一瞬動きを止めることもできる。
そして最後に放った風の魔法で、ロブスターを吹き飛ばし、フィルたちから引き離して魔物との間に距離を作る事に成功した。
そして、最後の締めくくりは、リズだ。
リズは弓を引絞ると、矢を放つ。
矢じりの先には、フレイムバーストの魔法が付与されている。
そして、それがロブスターの眼球に突き刺さり、大爆発を起こす。
リズに弓を渡したのは、魔法のコントロールを高めるためである。
魔法具、流星の弓矢である。
流星の弓矢は、方向さえ定めれば、正確に、空気抵抗を無視して一直線に撃つことができる。
これにより、リズのコントロールの悪さを補う事ができる。
魔法の破壊力は大幅に落ちるが、彼女は魔法の爆発力だけは1級品なので、命中さえすれば至近距離で爆発させて大半の魔物なら一撃で倒せるのだ。
「やったー。 イェーイ。」
フィルが二人にハイタッチする。
まず、モーションは大きいがパワーはあるライザが、あまりモーションを必要としない、重量のある盾をその得意なパワーで支える。
ロブスターの攻撃を防ぎ、後衛の二人を守る。
次に、フィルが空手の掌底でロブスターの頭部をたたいて、脳震盪を起こさせ動きを止め、風の魔法を使って吹き飛ばし、ロブスターを後方へと下がらせる。
そして距離が出きた最後に、流星の弓矢で精度が向上したリズの爆裂魔法で、仕留める。
私の立てた作戦は、一人一人の長所を最大限引き出し、チーム全体の連携プレーで相乗効果を生みだしてくれた。
「おめでとう。良くやったわ。褒めて使わすわ。」
私は勝利チームの野球監督のように、
手を差出してフィルたちと握手した。
エレスも何か言ってやってよ。
「あなたたち、3人でようやく1人前ね。」
エレスが憎まれ口をたたく。
3人とも、せつなそうな顔をした。
大喜びしていた3人の興奮は、一気に冷めてしまった。
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