第8話 守護天使たち
2日後の朝、私たちは準備をととのえ、宿屋を出発した。
そして、街の門の前に来ると。
「あっ、お姉様がた、待ってました。」
フィルが手を振っている。
さらに、2人のまだ幼い女性冒険者がいた。
1人は毅然とした態度をとり、もう一人は、杖を持ったままガクガク震えている。
「これは、どういうことよ。」
大声を出していないが、エレスがブチ切れてる。
エレスがワナワナと震えている。
「臨時で、パーティーメンバーを追加したの。」
「何余計なことしてくれてるの。
3人も余計な足手まといを増やして。
こんな事だったら、一人で行ったほうがマシよ。」
「大丈夫よ。
3人とも、かなり優秀な冒険者よ。」
エレスが怪訝そうな表情をする。
あきれて、もはや物も言えないというふうに。
「本当よ。本当。神に誓うわ。
もし一人でも死んだら、私が責任を取るわ。
それに、私たちがいなくなった後の、ナーディラスの街を魔物から守る守護戦士たちが必要だわ。
彼女たちに少しでも経験を積ませて、強くなって貰う。
これは、あの街を去る私達の最後の花向けよ。」
エレスが泣きそうな顔をして黙っている。
彼女も、本心では、あの街に未練があるのだろう。
ずっと1人で戦ってきた彼女だが、最後の1か月は、今までの人生で最も充実して、もっとも幸せな1か月だったに違いない。
対等な立場でいられる、冒険者仲間たち。
笑いあい、ときにはケンカして、夜遅くまではしゃいでいた。
あの1か月は、彼女にとってどんな金銀財宝よりも尊い、かけがえのない思い出だったに違いない。
今、フィルたち冒険者のヒヨコたちをここに置いていくのは、楽だろう。
だが、もっと長期的に考えると、ここで彼女たちに経験を積ませた方が、結局は彼女たちが生き残る確率は高くなる。
それが解っているから、エレスは反論出来ないのだ。
☆☆☆☆☆☆
森の中を、私達は歩いていた。
フィルは歌を歌いながら、意気揚々と歩いていた。
あれから経験をさらに積んで、彼女は能力的にも精神的にも急速に成長していた。
「 うるさいわ。フィル、もっと静かに歩けないの? 」
もう一人の娘、ライザはフィルを注意する。
リズは相変わらず震えていた。
フィルは修道女だが、あれからナイフ術、そして空手道と合気道を覚えた。
私の影響を少し受けてしまっていた。
ライザは、槍斧使いである。
棒状の先端に斧のついた武器である。
そしてリズは、杖を使う魔導士である。
「大丈夫だって、彼女たちは絶対役にたつから。」
「別に役にたって欲しいわけじゃないわ。邪魔だけしないで、後ろで隠れていてもらって。」
「それじゃ、フィルたちがここに来た意味がない。」
十数匹の下級レベルの魔物の退治を、彼女たちにまかせた。
そして、スーパーロブスターというザリガニっぽい魔物が現れた。
そこそこ高めのレベルだ。
「それじゃあ、私が。」
エレスが前に出ようとするのを、私は腕を掴んで静止する。
「少し、彼女たちに戦わせてみましょう。
彼女たちの肉体の強度だけは、しこたま高くしておいたから。」
そう言って私は魔法具の腕輪を見せる。
私は防御力を強化する付与術の魔法具を使って、彼女たちの防御力を高めておいた。
「やあーっ。 」
まずライザが槍斧で切りかかっていった。
ロブスターは彼女の槍斧をハサミで受け止める。ライザが次々と槍斧の乱舞で斬りつける。
「 やああぁぁぁー!!」
振り下ろされた3発の槍斧はロブスターのハサミで受け止められたが、一撃はロブスターの背中の甲殻に命中した。
ロブスターの甲殻がひび割れる。
ライザはさらに、大きく振り上げる。
だが、そこに大きなスキができて、ロブスターのもう一本のハサミを腹に喰らう。
そして飛ばされてしまう。
ライザの槍斧はモーションが大きく、防御がガラ空きだった。
「ライザちゃん」
次に、フィルがロブスターにナイフで高速で連打する。
ナイフは速度は速いが、威力が弱すぎて、ロブスターの甲殻に全て弾かれる。
フィルが諦めて飛びのいた。
「撃ってリズ!!」
「まっ、待ってください。
えいっ!!」
後ろで震えていたリズが、フレイムバーストを撃つ。
杖から燃え盛る炎の球が発射される。
フレイムは、ロブスターの遥か頭上を超えると、地面に落ちて大爆発をする。
2発3発と撃つが、全弾大きくはずれてロブスターの離れた左右で大爆発する。
どうやらリズは、凄いコントロール悪いらしい。
あと、怖くてフィルのそばには撃てないのだろう。
「きゃあぁぁああ!!」
そして、結局二人ともロブスターにボコボコにされる。
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