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第7話 王姫

 あれから、さらに日数が立った。

「今日はなかなかいい収穫だったわね。

 明日は息抜きのため、休日にしましょう。」

 受けたある依頼を遂行した後、エレスが言った。

 本心では明日も依頼を受けたいのだろうけど、私の身体や精神を気遣って言ったのだろう。

「そうね。そうしましょうか?」

 私は少し考えた後、そう答えた。

 少し休んだ方がいいのは、エレスも同じはずである。


 ☆☆☆☆☆☆


 次の日、私は美容室へ出掛けた。エレスは国立図書館へと出掛けるらしい。

 そして、その後二人で一緒に外食するために合流する。

 その美容室からの帰り道、ふと、知らない誰かから話かけられた。 

 魔導服を着た若い男性だった。

「少し、話があります。」

 私たちは路地裏に入っていった。

 そして、その男性に、ある衝撃の事実を知らされる。

「リバンドン王国の、お姫様!?」

「 はい、エレス様、いいえ、エレナ様はギランダム帝国によって占領された、リバンドン王国の姫君なのです。」


 ☆☆☆☆☆☆☆☆


 国立図書館の前で私は、待っていた。

 走ってきたので、息をきらせている。

「どうしたの、マリー?

 はやかったのね。」

「エレス、いいえ、エレナ、聞きたいことがあるの。」

「マリー、その名前を知っていると言う事は、全て聞いたのね。

 話したのは、ミゲルね。

 余計な事をしてくれたわね。

 後で怒っておかないと。」

「 ええ、エレナ」

「エレスでいいわ。冒険者としての私は、エレスなの。」

 一瞬、エレスが憂いのある表情をする。


「 エレス、あなたは現在、帝国から命を狙われているそうね。

 本当なのね、あなたが、リバンドンの元姫君だったというのは。

 今まで誰にも話さずに、仲間も作らずどこかのパーティーにも所属しなかったのは、自分のせいで巻き込まれて危険な目にあわせたくなかったからなのね。」

 エレスは無言で答えた。


 エレスは、ギランダム帝国の侵略によって蹂躙され、占領されたリバンドン王国の元姫君である。

 王国が戦争に破れ、帝国の領土になる直前、エレスは側近の部下とともに逃亡し、近隣のナーディラス王国領に身をくらませ、現在この街で一市民として紛れ込んでいる。

 先程のミゲルも、エレスの素性を知っている数名の元側近の一人である。

 彼は帝国の傀儡政権となった現リバンドンに所属しながら、エレスにギランダムの動向を定期的に報告しているそうである。

 おそらく、エレスの身を案じて、私に彼女を託したのだろう。


「本来はあなたの事も巻き込むべきではなかったのだけど。」

「何言ってるの。私はエレスの、パーティーメンバーなのよ。

 私の事を信頼しないでどうするの?

 それに、私を誰だと思っているの?

 こういう事は、ある程度予想はしていたのよ。」

「そうね。あなたは、そういう洞察力や推察力は天才的ですものね。」

「 エレス、たとえ、帝国軍を敵にまわしたとしても、私は負けないわ。私は、あなたを守ってみせる。

 私を、信じて頂戴。

 そして、あなたの願いを必ず叶えてみせるわ。」

 エレスは沈黙する。

 彼女はまだ迷っているのだろう。

 これ以上私を巻き込むことに。

 だが、同時に私の事を信頼してもいる。

 そして、私となら、どんな不可能にも思える事もやり遂げられると、そう期待しているのだろう。

 それは、私たちがパーティーを組んで、この1か月余りで私が実際に証明してきた事だ。

 私が出してきた結果と成果の賜物だ。

「それじゃあ、これから、どうするか話し合いましょう。

 そして、あなたが西のエリザムを目指している理由も話して頂戴。」


 エレスが西のエリザムを目指している理由は、以前のリバンドン王国の同盟国、チェンバレン王国があるからだそうだ。

 そして、自国を守る為帝国と戦う国家の1つである。

 エレスはそこに亡命して、征服されたリバンドンの開放のために、チェンバレンと合流して帝国軍と戦うつもりらしい。

 そして、チェンバレンには、エレスの婚約者がいるそうである。

 このナーディラス王国領のこの街からエリザムに行くには、テングレムの森を抜けなければならない。

 正確には、森の中にあるダンジョンを通過して、山脈の地下を通ってエリザムへと抜けるのだ。

 草原や海などを通って迂回するルートは、帝国領を通る事になるので難しい。

 だが、テングレムの森のダンジョンには、ほかのダンジョンよりも強力な魔物が数多くいる。


「2日後、エリザムへ行きましょう。」

「マリー」

「本当は一刻も早く出発したかったんでしょうけど、私に遠慮して行かなかったのでしょう。」

 あるいは、一人で出発するつもりだった。


「大丈夫、今の私たちなら油断さえしなければ、もう余裕でしょう。

 私ももう、冒険者としてかなりの経験を積んだわ。

 もう、軽率なマネはしないわ。」

 私はエレスを説得する。

「本当かしら?」

「疑わないで。エレス。」

「……………解ったわ、そうね。今の私たちなら、充分に戦えるわ。」 

 少し考えたあと、エレスは決めた。 


 

数ある作品の中から、この作品を選んで頂いてありがとうございます。

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