第2話 冒険者デビュー
異世界転生してから16年がたった。
転生してから私は、幼少の頃から世界を救う冒険者となるための訓練を毎日続けた。
「えいっ!!」
木刀で少年の撃ち込んた剣撃を弾き返すと、彼の右肩に袈裟斬りを叩き込む。
木刀で私は、男の子たちと剣での戦いを想定した実戦訓練をしていた。
倒したのはこれで50回連続だ。
前世の私は、剣道3段、空手初段、合気道5段の超天才美人武術家だった(嘘です )。
たとえ武器のスキルや魔法は使えなくても、剣技や体術の基本的な能力は伸ばす事ができるはずだ。
その剣技や体術の勝負勘を養うため、私は毎日かかさず鍛錬をした。
「どうしたの!?あなたたち、これでも男の子なの?!」
そう言って私は少年たちを挑発する。
もう少し頑張って貰わないと、この私の練習相手にすらなりはしない。
そして今や、村の男の子なら1人で当時に7・8人相手でも勝てるようになっていた。
筋力や体格では男の子である彼らには勝てないが、技術や練習量の差でそれらを補い、打ち勝てるようになっていた。
だが、あくまでそれは素人同士での戦いの話である。
もし今の状態で、熟練者の、それも体格でも筋力でも私を上回る男性の冒険者と戦えば、私は負けるだろう。
剣の腕でも1流で、魔法も使える女性冒険者と戦ったとしても、私は負けるだろう。
ましてや、邪悪なる魔物たちには勝てない。
だがそれは始めから解っている事だ。
困難が待ち続けている事など、百も2百も承知だ。
それでも、私は強くなる。
この世界にいる全ての冒険者よりも強くなって、魔物たちを打ち破り、そして世界を守ってみせる。
「マリー、凄え!!」
「もう誰も太刀打ちできねえぜ!! 」
少年たちが口々に称賛する。
「さあ、休憩終わり、午後の訓練始めるわよ」
「えっ、休憩してねーし」
よし、機は熟した。
いよいよ冒険者として、デビューする時だ。
☆☆☆
私は武器や防具、ポーションなどのアイテムを買い揃えると、冒険者登録をするために近くの街へと出発した。
草原の広がる道を歩いていると、スライムが3匹現れた。
スライムは飛び跳ねて接近して来る。
私は手にしたショートソードでスライムを3匹斬る。
少し離れた距離から、今度は巨大なカエルのモンスター、ブルーフロッグが3匹現れた。
フロッグも同じく飛び跳ねながら、口から謎の粘液を発射する。
私はショートソードを消滅させると、指先の空間から銅の盾を出現させてその液体を防御する。
剣と盾、2つ同時に装備すると虚弱体質の私には重いので、1つずつしか持てない。
私が今手に持っている銅の盾は、アイテムボックスから取り出した物だった。
アイテムボックスは、武器や防具、ポーションなどを次元空間に収納できるスキルである。
しかも、いつでも好きな時に取り出す事ができる。
そして、このアイテムボックスこそが、私が使えるただ1つのスキルである。
このスキルを磨くことは、私が世界最高の冒険者になるためのただ1つの方法である。
私は今取り出した盾をすぐにボックスに収納すると、今度はナイフを8本取り出した。
そして、両手の指に挟んで連続でフロッグに投げつける。
フロッグが液体を発射するよりも速く、ナイフはフロッグにザクザク突き刺さり、地面に落下して消滅する。
モンスターを全員ナイフで撃退すると、私はポーションを一本取り出し飲み干した。
う〜ん、運動の後のポーションは最高だ。
ちなみに私は、ナイフもこのポーションも、それぞれ200個近くアイテムボックスに収納している。




